抗認知症薬の併用療法の有効性や注意点とは?論文・データを用いて解説
寄せられた質問に専門医が回答する人気動画「千葉悠平のお悩み相談 by Docpedia」を、記事でも読めるようにしました。今回のテーマは「抗認知症薬の併用効果は?」です。実臨床に役立つ知識が満載の実践的な内容となっています。
回答する医師 千葉悠平
積愛会 横浜舞岡病院医師・医学博士
医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医 指導医
日本認知症学会専門医 指導医
経済産業大臣登録中小企業診断士
YUAD 代表
Q. 抗認知症薬の併用効果は?
今回の質問は以下の通りです。
前医から抗認知症薬が併用されているケースが紹介されることがあります(ドネペジルとメマンチンなど)。コリンエステラーゼ阻害薬系を2剤使う意義は乏しいと思いますが、ドネペジルとメマンチンのように別の機序の2剤を併用することで、より効果が高まるということはあるのでしょうか?
近年アルツハイマー型認知症に対しては、レカネマブが登場しております。一方で、すでに認知症になってしまった患者も多くいるため、そうした患者に対する薬物療法は、現在でも非常に重要なテーマです。
①AChE阻害薬とメマンチンの併用は可能である
以下は、現在使われている抗認知症薬の比較表です。
引用元:認知症疾患診療ガイドライン2017 第6章 Alzheimer型認知症
ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3剤とメマンチンは作用機序が異なるため、併用することができます。
ただし、実際に併用する際には、適応に注意が必要です。軽度の患者ではメマンチンの適応がないため併用できません。
中等度であればいずれの薬剤もメマンチンとの併用が可能です。一方、重度ではドネペジルとメマンチンのみが併用可能となっています。
②治験データ
アセチルコリンエステラーぜ阻害薬とメマンチンの併用に関する治験データをみていきましょう。(二重盲検多施設比較試験、3ヶ月以上ドネペジルを内服した中等度〜高度のアルツハイマー型認知症患者)
引用元:Howard R. McShane R. Lindesav J. et al. Donepezil and memantine for moderate-to-severe Alzheimer’s disease. N Enal J Med. 2012:366(10)893-903.
左のグラフは認知機能の維持を評価したものです。併用群のラインが最も上に位置しており、認知機能維持の面では良好な傾向がみられます。ただし、他の群と重なっている部分もあるため、有意な差があるとまでは言い切れない結果でした。
右のグラフはADLの維持についてです。こちらのグラフは下にいくほど改善を示しますが、併用群はもっとも下に位置しており、良好な効果がみられます。しかし、こちらも統計学的に有意と言い切れるほどの差ではありませんでした。
③メタ解析
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬単独療法と、メマンチン併用療法を比較した複数のRCTに関するメタ解析も報告されています。
引用元:Glinz D, Gloy VL, Monsch AU, et al. Acetylcholinesterase inhibitors combined with memantine for moderate to severe Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Swiss Med Wkly. 2019;149:w20093.
認知機能については、併用療法の方が有利であるという結果がでています。
引用元:Glinz D, Gloy VL, Monsch AU, et al. Acetylcholinesterase inhibitors combined with memantine for moderate to severe Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Swiss Med Wkly. 2019;149:w20093.
臨床全般印象度(CGI)についても、併用療法の方が良好であったという結果が出ています。
引用元:Glinz D, Gloy VL, Monsch AU, et al. Acetylcholinesterase inhibitors combined with memantine for moderate to severe Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Swiss Med Wkly. 2019;149:w20093.
ただしADLやBPSDに関しては、明確な有意差は認められませんでした。
④ネットワークメタ解析
54件の英語および中国語の研究論文を対象に、以下の4群を比較したネットワークメタ解析も実施されています。
- ドネペジル単独
- メマンチン単独
- メマンチン+ドネペジル併用
- プラセボ
この解析では、「ランキングプロバビリティ」という手法を用いて、それぞれの治療法について優れているものから順位付けされています。
引用元:Guo J, Wang Z, Liu R, Huang Y, Zhang N, Zhang R. Memantine, Donepezil, or Combination Therapy-What is the best therapy for Alzheimer’s Disease? A Network Meta-Analysis. Brain Behav. 2020;10(11):e01831.
認知機能をADAS-Cogで評価した結果では、併用療法(ドネペジル+メマンチン)が1位となる確率が最も高いことが示されました。
引用元:Guo J, Wang Z, Liu R, Huang Y, Zhang N, Zhang R. Memantine, Donepezil, or Combination Therapy-What is the best therapy for Alzheimer’s Disease? A Network Meta-Analysis. Brain Behav. 2020;10(11):e01831.
全般印象度、ADL、BPSDについても、併用療法がもっとも優れた治療法となる可能性が高いという結果でした。
ただし、忍容性については併用療法が劣る傾向が示されています。そのため、併用療法は有効性が期待できる一方で、治療継続性の面ではやや不利となる可能性がある点には注意が必要です。
⑤長期観察による死亡率
こちらはリアルワールドデータとして、抗認知症薬を長期に使用している患者の死亡率に関する研究です。
フランスの229箇所のナーシングホームに入所する25,358人の認知症患者を対象に、2014年から2019年までの電子記録を用いて検討されています。
対象者は以下の4群に分類されました。