「危機を察知した看護師の直観」-看護師の訴えのもとCTを取った結果・・・
「M3メンバーズメディア」では医師会員から寄せられた記事の一部をご紹介します。今回からシリーズとして、「心に残る症例」をテーマにエピソードをご紹介したいと思います。薬剤師の先生方も、いつまでも印象に残る症例、患者さんとの想い出があるかと思います。中には仕事の在り方を考えさせられるかもしれないエピソードもあるかもしれません。日々のお仕事にプラスの変化となるような、「気づき」を感じてもらえたら幸いです。
M3メンバーズメディア」では医師会員から寄せられた記事の一部をご紹介します。今回からシリーズとして、「心に残る症例」をテーマにエピソードをご紹介したいと思います。薬剤師の先生方も、いつまでも印象に残る症例、患者さんとの想い出があるかと思います。中には仕事の在り方を考えさせられるかもしれないエピソードもあるかもしれません。日々のお仕事にプラスの変化となるような、「気づき」を感じてもらえたら幸いです。
P.N. カレッヂ
患者さんを通したコメディカルとの思い出です。
私は研修医生活を終え、大学病院の医局に入局し、卒後4年目に関連病院へ出向することになりました。出向先の病院は3次救急まで対応できる設備を備え、内科、外科はもちろんのこと、小児科、産婦人科、整形外科、耳鼻咽喉科などのさまざまな科に対応できる病院でした。内科医として勤務を始めた当初は、研修医生活を大学で送り、入局後も大学病院で過ごしてきた私にとっては、“卒後4年目の研修医”のような状態でした。
-看護師からの突然の連絡
そんなある日、1日の業務の終わりがみえてきた22時頃に、ICUに入室されていた内科患者さんの様子がおかしいと、看護師から連絡がありました。その患者さんの主治医はすでに帰宅しており、看護師は困り果て、私に電話してきたようです。その電話口から聞こえてくる声は、「こんな時間に・・・、当直医でもないのに・・・、主治医ではないのに・・・」と非常に申し訳なさそうに話され、私も1日の業務で疲れてはいたものの、患者さんのもとへ向かいました。
ICUに到着するやいなや、電話連絡してきた看護師が近づいてきて、「先生、こんな時間にすみません・・・。ちょっと患者さんの様子が気になって・・・。診てもらえませんか?」と。患者さんの主訴、現病歴、診療経過などをある程度、診療記録で確認し、入院時より意識レベルが悪く、今回はその意識レベル低下の原因精査目的に入院されていました。
-バイタルサイン、触診中の表情に変化なし
看護師からは「意識レベルは入院時から悪いんですが、何かいつもと違うんです。特に腹部を触った時に表情が少し変わるというか・・・」と何とも言えないような曖昧な表現。続いて、患者さんの診察にうつりましたが、バイタルサインに大きな乱れはなく、入院時の意識レベルがどの程度であったかも分からなかったため、現在の意識状態が悪化しているのか、変化がないのか、評価が困難でした。
また、腹部の診察上でも特に触診中にも明らかな表情の変化はないように見えました。オレンジ色のダウンライトに照らされた患者を見つめながら、私の頭の中を『経過観察』の4文字が色濃くなってきていました。しかし、看護師の「何かいつもと違うんです」という曖昧だが、危機感を感じる言葉に、念のため、腹部CTを施行することにしました。
すると、そこに写っていたのはfree airでした。すぐに応援の内科医師、外科医師に連絡し、患者さんはその後緊急手術となりました。
後日、あの日最初に連絡をくれた看護師が私に、「先生の帰り際の、『連絡してくれてありがとう。助かったわ。』の一言、すごく嬉しかったです」。と笑顔で話してくれました。正直言うと私はそのようなことを言ったかどうかも覚えていませんが、あの日、“何かがおかしい”とこれまでの看護師経験から感じたけれでも、夜間、主治医がいない状況で不安いっぱいで電話し、患者の危機的状況から救うことができると感じた時に、その一言が彼の心に響いたのだと思います。
私たち医師が働けるのは看護師を含めたコメディカル、パラメディカルの方々のおかげです。そのような方々へは常に敬意の心をもって接しなければいけないと感じた出来事でした。