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薬剤師マイスタイル

更新日: 2020年5月30日 薬剤師コラム編集部

漢方薬剤師が500人超のオンラインサロンオーナーになれた理由

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働き方の多様化が進む現代。当シリーズでは、薬剤師のスキルを生かしながら、「自分のやりたいこと、すきなこと」を通じて医療に貢献している薬剤師をご紹介。「マイスタイル」をつらぬく薬剤師の魅力をお伝えしていきます。

きっかけは集客のためのSNS発信

漢方薬剤師として薬局を経営するかたわら、会員数580人(2020年5月時点)の人気オンラインサロンのオーナーを務める杉山卓也先生。
Twitterやセミナーを通じて、一般の人にもわかりやすく中医学の情報を日々発信しています。
2020年3月には、クラウドファンディングで募った支援金によって中医学の私塾「たまり中医学養生学院」を開院するなど、ますます活躍の場を広げています。そんな杉山先生が中医学のオンラインサロンをはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

お話を伺った方(プロフィール)

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杉山 卓也 さん

薬剤師。神奈川県・座間市にある漢方薬局「スギヤマ薬局」店主。オンラインサロン「タクヤ先生の中医学オンラインサロン」を運営する傍ら、漢方について学ぶ「たまり中医学養生学院」の運営も担う。Twitter、Facebook、YouTubeなどあらゆるメディアで漢方の楽しさについて発信を続けている。

漢方薬剤師が500人超のオンラインサロンオーナーになれた理由 タクヤ先生の中医学オンラインサロンの画像

Twitterのフォロワー数は3万6000人(2020年5月時点)とうかがいました。どのようなきっかけで中医学や漢方に関する情報を発信するようになったのでしょうか?

両親の営む神奈川県座間市の漢方薬局を私が継いでしばらく経ったころ、近隣のクリニックの医師が亡くなる不幸がありました。その影響で処方箋枚数が大きく減ってしまい、集客・集患が喫緊の課題になったのです。

当初はどうやってお客さんを呼んだらいいか分からず、試行錯誤を繰り返しました。そのなかで、当時は世の中へSNSの影響が広がりつつあったため「この波に乗ろう!」とまずはFacebookやTwitterなどで中医学の情報発信を始めたのがきっかけです。

なるほど。自身の漢方薬局にお客さんを呼びたかったことが、はじまりだったのですね。

はい。SNSの発信がきっかけで、地域での知名度も上がり、薬局の患者数も増えました。
また、集客のために始めた情報発信でしたが、継続的に発信していくなかでいろいろなニーズが見えてきました。中医学や漢方は西洋医学と比べるとニッチな分野ですから、一般の方はもちろん、薬剤師でも体系的に勉強したことがない方もいらっしゃいます。
「中医学を自分でも学んでみたい」「生徒になってみたい」という声が数多く寄せられるなかで、私にも何かできることはないかと考えるようになりました。

中医学オンラインサロンは立ち上げから予想を超える参加者

「中医学を学びたい」というニーズの大きさを知り、オンラインサロン開設につながっていったのでしょうか?

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SNSでの反響もありますが、SNS開始前から実施していたセミナーで、手ごたえを感じていたことも理由の一つです。神奈川県・座間市の市営スペースをお借りして、漢方や美容をテーマにしたセミナーを定期開催し、現在も行っています。始めた当初は数名の参加者でしたが現在は毎月60名くらいの参加をいただけるようになっています。その後は場所を新宿に移し、月4回開催にしていましたが、多い時期には年間100本以上ものセミナーを開催していました。そのうち、SNSで情報を受け取ってくれる人たちの「中医学・漢方についてもっと深く学びたい」というニーズに応えるには、同じ目的をもったコミュニティをつくる必要があるのではないかと考えるようになりました。

しかし、実現の仕方がわからず困っていたところ、知人から「オンラインサロン」の存在を教えてもらいました。「オンラインサロン」なんて聞いたこともなかったので、早速いくつか著名人のサロンに入会してみたんです。

自分で体験したところ「これは使える」と確信しました。先駆者のやり方を参考にしながら自分なりの中医学のオンラインサロンの構想を練っていきました。最初は最低ラインの30人くらいという軽い気持ちで始めましたが、SNSで告知をしたところ、230人もの人が集まりました。

いきなり230人とはすごいですね。

2018年11月のスタートから、おかげさまで少しずつメンバーは増えており、2020年5月で580人ほどの規模になっています。

サロンでは、どのようなサービスを提供しているのですか。

中医学の基礎について学べるサロン限定の動画や記事を提供したり、中医学の専門家とオンラインイベントを開催したりといったことがメインです。
オンラインが中心ですが、オフラインでのイベントも開催しています。

オンラインサロンの運営で大変な点ってなんでしょうか。

常に新しい企画を提案していくことですね。学習型のコンテンツをずっと発信していても飽きられてしまいますし、いろいろなコンテンツを常に考えて発信する必要があります。当初は、発信する内容を私がトップダウンで決めていたのですが、今はオンラインサロンのメンバーからテーマを募集しています。メンバー内で話して関心が高かったものを企画として取り入れています。

メンバー同士で話しながら企画案を出し合うんですね。どのような企画があるのでしょうか?

ちょっとユニークな企画だと、「虚証ZOOMオフ」というものもあります。「虚証」とは、漢方用語で体力がなく弱々しい人のこと。そんな体が虚弱で弱い人だけが集まって盛り上がるZOOMオフ企画です。活動内容は、華奢なみんなで集まって「私は身体のここが弱い!」など虚証自慢のようなことをしつつ、どうやって前向きに改善していくか?という主旨で活動しています。その他にも20以上の部会や常に5〜6個の個性的な企画が常に動いています。楽しいですよ。

クラウドファンディングで341万円!私塾型の漢方学院「たまり」とは?

次はクラウドファンディングで支援を募った「たまり中医学養生学院(以下:たまり)」を始められたきっかけについて教えてください。

「オフラインでもオンラインでもセミナーをやりたい」と思ったのがきっかけです。遠方に住んでいる方でも参加できるのがオンラインサロンの良い点ですが、「やっぱり現地で聞きたい」という方も少なくない。そこで「じゃあ、いっそのこと学院をつくろう!」という流れになりました。

急展開ですね。

でも、オフラインで講義する場合、物件や会場を借りるのにけっこう費用がかかるんですよね。「資金はどうしよう」と困っていたら、オンラインサロンの存在を教えてくれた知人が、教えてくれたのが「クラウドファンディング」でした。

目標金額100万円に設定したところ、最終的には支援金は341万円集まりました。支援者数は297名にのぼり、皆さまには本当に感謝しています。

「たまり」はどういった施設なのでしょうか?

「たまり」の一番の特徴は何より、実践しながら学ぶという点にあります。中医学、漢方、そして養生を啓蒙できる場所としてより深く学び、漢方薬の効果で、皆さまのお悩みを笑顔に変える私塾型の漢方学院です。
「たまり」には「人が集まる場」、「知識の集まる場」、そして「日だまりのような癒しの場」という3つの意味を込めています。協力してくださる先生方は、これまでにそれぞれ中医学の専門家として個人で精力的に活動されてきた、実力のある方々ばかりです。全員が漢方相談と講義を行うことができるので、そのメンバーが力を合わせることで、一人ひとりにあわせたお薬の提案や、中医学の奥深さ、面白さをいろんな視点から幅広くお伝えし、学んでいただけます。ちなみに、たまりは漢方薬店でもあり、SNSで人気の先生が講師だけではなく、漢方相談を行ってくれるスペースでもあります。

楽しさこそが原動力。コミュニティの持つちから

さらに最近ではYouTubeチャンネルも開設されています

そうなんです。息子に「パパ、なんでYouTubeやらないの?」って言われ、「オンラインサロンを運営してノウハウはあるのに、YouTubeをやらない理由はないな」と妙に納得し早速開設しました。まだ動画数は少ないですが、これからどんどんアップしていこうと思っています。

本当にフットワークが軽いですね。動画は「薬剤師」としての職域を意識した内容なのですか。

いえ、そういった枠では考えてないですね。
薬剤師さんや専門職の人は、専門職という枠組みに囚われる傾向があるように思います。「薬剤師だから、これをやっていればいい」とか「薬剤師だからこれをやらなきゃいけない」というような。私も薬剤師として得た知識を生かしていますが、資格に囚われて可能性を狭めたくないなと思っています。

なるほど。「たまり」でもオンラインサロンでも素敵な仲間に囲まれている杉山先生ですが、仲間はどうやって集まってくるのですか?

「ダメさ」を表に出すと、”できる”仲間が集まってきます(笑)。もし私が完璧な人間だったら誰も集まってこないのではないでしょうか。オンラインサロンや「たまり」のスタッフのなかには、もともと患者さんだった方もいます。
Twitterやセミナー、YouTubeなど入口はそれぞれ違うけれど、ある程度私のことを知ったうえで訪れてくれるので、つながりは簡単には切れないんです。単純に薬局とお客さんという立ち位置だと、そのような関係は生まれなかったと思います。積極的に情報発信をしていたからこその出会いですね。

杉山先生の行動力と情熱の源って何なのでしょうか。

シンプルに、楽しさです。オンラインサロンを始めた当初は孤独の中に楽しさがありました。今は、「tamari中医学養生学院」があることで、そこには、みんなでやる楽しさがあります。その時、その時によって楽しさの質は違っても、自分にとって楽しいことをやり続けることが私にとって何よりの原動力になっています。

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薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
m3.com薬剤師会員への意識調査まとめや、日本・世界で活躍する薬剤師へのインタビュー、地域医療に取り組む医療機関紹介など、薬剤師の仕事やキャリアに役立つ情報をお届けしています。

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