漢方薬剤師はどんな仕事?年収は?資格の取り方など基本を解説
健康志向が高まってきた近年、自分で健康をケアし、必要な薬を管理するセルフメディケーションが広く知られるようになってきました。
それに伴い、漢方薬に注目が集まりつつあります。
漢方を専門に扱う漢方薬剤師について興味のある薬剤師の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、漢方薬剤師の仕事や資格の取り方、求められるスキルなどを解説します。
漢方薬剤師とは
私たちがごく一般的に服用している西洋医学の薬は、ほとんどが化学合成により人工的に作られたものです。
特定の症状に対して非常に高い効果を発揮しますが、複合して起こるさまざまな症状全般に対しては、対応しにくいところがあります。
どちらかといえば、1つの症状に照準を合わせてピンポイントで対処するのが西洋薬といえるでしょう。
一方、漢方薬は、植物や動物、鉱物など自然由来のものを数種類組み合わせて作られています。
そのため、同時に起こる複数の症状に対しても、1つの薬で幅広く対応できるという性質を持ちます。
また、病気に限らず身体の冷えや疲れといったちょっとした不調に対しても、漢方は威力を発揮します。
治療だけではなく、病気の予防や未病にも対応できる薬といえるでしょう。
しかし漢方の種類は膨大で、服用する人の体質や体力によっても処方を変える必要があるため、専門的な知識がなければ扱えません。
漢方薬剤師とは、このような漢方薬や生薬についての専門的な知識を持ち、患者一人ひとりの症状や体質に合わせて薬を調剤する能力や適性を持った薬剤師のことをいいます。
関連記事: 漢方薬・生薬認定薬剤師の資格取得体験記
一般薬剤師と漢方薬剤師の相違点
一般的な薬剤師の仕事は、医師が出した処方箋に基づく薬の調剤と、患者さんへの服薬指導です。
一方の漢方薬剤師は、患者さんから直接相談を受け、症状をヒアリングした後、患者さんの体質や症状に合う漢方薬を、薬剤師が処方から行います。
薬の処方から行うという点が、一般薬剤師との違いです。
処方する薬を決めるためには、患者さんとのコミュニケーションの取り方もとても重要になってきます。
漢方薬剤師は、治療について中心的な役割を担う立場だといえるでしょう。
責任は重いですが、積極的に患者さんの治療に関われる、やりがいのある仕事です。
漢方薬剤師の年収
気になる年収については、一般的な薬剤師の平均年収と同等の水準ですが、将来的に需要が増える可能性は高く、資格や実績によっては収入アップも期待できます。
漢方薬剤師の勤務場所
漢方薬剤師は、一般的な調剤薬局やドラッグストアで勤務することはもちろん、漢方を専門に扱う漢方薬局で活躍することができます。
また、漢方の研究や開発等を手がける企業で働くという方法もあるでしょう。
転職を考える際にも、漢方薬剤師の資格を持っていると、勤務場所についての選択肢が広がります。
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漢方薬剤師になるには
漢方薬剤師になるには、まず国家資格である薬剤師資格を持っていることが必須です。その上で、漢方薬剤師になるための具体的な方法についてみていきましょう。
漢方薬・生薬認定薬剤師
漢方薬剤師として働くために特別な資格は必要ありませんが、漢方の専門家であることを証明する制度があります。
それが漢方薬・生薬認定薬剤師制度で、医療用漢方や生薬に関する専門的な知識、スキルを持っていることを証明する制度です。
公益財団法人日本薬剤師研修センターと一般社団法人日本生薬学会が実施する認定制度で、決められた研修を受講し、薬用植物園実習に参加した後、試験を受けて合格すれば、漢方薬・生薬認定薬剤師という資格を取得できます。
研修はインターネットやビデオを利用した受講も可能で、全国どこからでも参加できるようになっています。
論文の発表や一定期間以上の勤務歴といったものは必要ないため、薬局やドラッグストアに勤務中の薬剤師が働きながら取得しやすい資格のひとつといえるでしょう。
合格者には「漢方薬・生薬認定薬剤師証」が発行されますが、この認定証は3年おきに研修に参加し、更新する必要があります。
関連記事: 漢方薬・生薬認定薬剤師とは?取得方法とメリット
漢方アドバイザー
漢方薬に関する資格には、漢方アドバイザーというものもあります。
漢方アドバイザーとは日本チェーンドラッグストア協会が認定する資格のことで、漢方薬の基礎知識や服用方法を正しく身につけることを目的にしたものです。
通信教育で受講し、その後、認定試験に合格すると、認定証が交付されます。
この認定証も3年ごとに研修等に参加し、更新する必要があります。
この資格は、薬剤師の資格を持たない人でも取得できるものです。
薬剤師資格を持つ人が漢方アドバイザーの資格を取得した場合は「漢方支援薬剤師」という特別な認定を受けることができます。
漢方薬剤師に必要なスキル
漢方薬の知識を持っているだけでは漢方薬剤師として活躍できません。
漢方薬剤師に求められるスキルについてみていきましょう。
患者さんへのカウンセリング能力
漢方薬剤師は、患者さんの体調や症状を直接ヒアリングしたうえで漢方薬を処方します。
漢方薬は体質や体調によってさまざまな組み合わせを考える必要があり、最適な薬を処方するためには患者さんの話を詳しく聞いて、いろいろな情報を引き出す必要があります。
カウンセリングで治療方針や処方薬の内容が決まるので、安心して話してもらえるよう、患者さんに寄り添った細やかな心遣いやカウンセリングが求められます。
また、漢方薬は長期間にわたって服用しなければならない場合も多くあります。
その間十分なフォローができるように、しっかりとした信頼関係を築くことも必要です。
医療用漢方に関する知識
患者さんの信頼を得るためには、薬の成分に関する正確な知識を持っていることが必須です。
処方する漢方薬の成分について尋ねられたら、それぞれの成分がどのような効果を持ち、どのような症状に効くのか、副作用はあるのか、といったことをわかりやすく説明する必要があります。
同じように、店頭で販売されているような医療用漢方についても、成分を見れば効能が説明できるようにしておきたいものです。
漢方の種類は膨大ですので、常に学ぶことが求められます。
中医学の知識
本来、漢方薬は中国で発達した医学をベースにして発展したものなので、深い理解のためには中医学の知識も必要です。
西洋医学とは違う、中医学ならではの概念を理解しておかなければ、未病や予防に対する漢方薬の効能も十分に生かせないでしょう。
西洋医学と中医学それぞれについて幅広い知識を持つことで、患者さんに最適な治療は何かを見極めやすくなりますし、何よりも薬剤師としてのスキルを高めることになります。
漢方薬剤師になるメリット
普通の薬剤師とは少し違い、独自の専門性が高い漢方薬剤師。
漢方薬剤師になるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
薬剤師としての専門性が高まる
漢方薬は種類が多いうえに、組み合わせ方が無数にあります。
一人ひとりの体質も考慮しつつ、症状に合わせた処方が必要とされるため、専門知識を持たない薬剤師では対応することが難しい薬です。
さらに、セルフメディケーションについての関心が高くなっているいま、漢方薬への注目度は増してきています。
このような状況の中で漢方薬剤師として働くことは、独自性、専門性の高い薬剤師として一般の薬剤師との差別化が期待できるでしょう。
転職先の選択肢が増える
今後、よりニーズが高まることが期待される漢方薬は、漢方専門薬局以外でも取り扱いが増えていく可能性があります。
ドラッグストアや調剤薬局でも漢方を扱う店舗が増えていけば、漢方薬剤師の需要も増え、転職先の選択肢が広がるでしょう。
漢方薬は高い専門知識が必要とされるため、漢方薬剤師の資格は転職にも有利に働きます。
そのほかにも、漢方メーカーに入って漢方薬の研究をしたり、後進の指導にあたったりという道もあるでしょう。
ある程度の経験と実績を積んだ後、漢方専門薬局を自分で開業することもできます。
漢方薬剤師を目指してみよう
漢方薬剤師の仕事内容や求められるスキル、資格の取り方についてみてきました。
漢方薬剤師は、患者さんのカウンセリングから薬の処方、調剤、服薬指導まで、治療に密接に関わる仕事です。
セルフメディケーションで漢方薬が注目されるなか、専門性の高い漢方薬剤師の需要はますます高まっていくと考えられます。
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