薬剤師の生涯年収は低い?キャリアを後悔しない年収アップ方法も
薬剤師になるためには、薬学部に6年間通い、難関の国家試験をクリアしなければなりません。正直なところ、薬学部の学費は高く、それが6年間となると、かなりのコストがかかっています。
しかし、薬剤師の生涯年収は実はそんなに高くないという噂を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
果たしてそれは本当なのでしょうか。
ここでは、薬剤師の収入について、生涯年収という面からスポットを当てていきます。
薬剤師の生涯年収は約2億3千万円
薬剤師の生涯年収について調べた厚生労働省の資料によると、薬剤師の生涯年収は2億3280万円(※)となっています。
2億円と聞くと多いような気がしますが、この金額は他の職業と比べてどうなのでしょうか。
(※)令和5年3月29日 第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会/参考資料4/薬剤師の偏在への対応策より引用、薬剤師全体の平均値は、病院薬剤師と薬局薬剤師の数値を足して2で割った数値を、薬剤師全体の生涯年収平均として算出
詳しくみていきましょう。
一般企業と比べて生涯年収は高い?
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、一般労働者の生涯年収は、次のようになっています。
一般労働者の生涯年収 | 平均 |
中学卒 | 1億7000万円 |
高校卒 | 1億8000万円 |
高専・短大卒 | 2億円 |
大学・大学院卒 | 2億4500万円 |
ユースフル労働統計 2019 労働統計加工指標集より引用
この表と比べると、薬剤師の生涯年収は、高卒や短大卒と比べれば高くなっていますが、大学・大学院卒と比べるとほぼ同水準となっています。
大学に6年間通って、国家試験を突破して手にした国家資格なのに、思ったよりも稼げていない、と感じる方もいるかもしれません。
これは、大学や大学院を卒業したサラリーマンのなかには、大手企業で出世して高年収を手にする人が一定の割合いることが関係していると考えられます。
大企業に多くの部署があり、課長、部長、取締役、副社長、社長......と社内にポストが多くあります。また国内だけでなく海外にも多くの拠点を持っている企業もあります。
営業職などで結果を出せば、インセンティブで大きく稼ぐことも可能です。
薬剤師は、基本的な賃金は高く、特に初任給は高いのですが、大企業のようにポストは多くありません。職場も小規模なため、人件費の総額も限られています。
また、個人の努力で売上を上げてインセンティブを得る、といったしくみもありません。
薬剤師は安定してある程度の年収を得ることはできますが、極端な高年収を得ることは難しいといえるかもしれません。
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【業種別】薬剤師の生涯年収
最初に紹介した厚生労働省の調査は、病院と薬局が対象となっています。その調査によると、病院と薬局勤務の薬剤師の生涯年収は次のようになっています。
薬剤師の生涯年収 | 平均 |
病院薬剤師(常勤) | 2億3280万円 |
薬局薬剤師(常勤) | 2億2768万円 |
薬剤師 | 2億3024万円 |
令和5年3月29日 第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会/参考資料4/薬剤師の偏在への対応策より引用、薬剤師全体の平均値は、病院薬剤師と薬局薬剤師の数値を足して2で割った数値を、薬剤師全体の生涯年収平均として算出
ここでは、薬剤師の業種別の生涯年収について、病院と薬局以外の職場も含めてみていきます。
調剤薬局
上の表にあるように、調剤薬局に勤める薬剤師の生涯年収は、2億2768万円です。
薬剤師の勤務場所として最もポピュラーであり、生涯年収も平均的な金額だといえます。
ドラッグストア
ドラッグストアは、薬剤師の働く場所のなかでも比較的高年収の職種です。
ドラッグストアは上記の厚生労働省の調査対象にはなっていないのですが、生涯年収は調剤薬局と同程度かそれ以上だと考えられます。
ドラッグストアの特徴は、全国的な大手チェーンがあり、昇進ルートも比較的多くあるため、働き方によってはより高い年収を得ることができることです。
生涯年収も人によって大きな差があるでしょう。
病院
病院に勤める薬剤師の生涯年収は、上の表にあるように2億3280万円です。
病院勤務は給料が安いというイメージがありますが、調剤薬局の生涯年収よりも多くなっています。このデータを意外に思われる方もいるかもしれません。
病院勤務の薬剤師の給料の特徴は、初任給が低く抑えられていることです。
最先端の医療現場に関わることができて人気の職場ですが、給料が安かったり、勤務がハードだったりして、他業種へ転職する人も多くなっています。
ただ、病院の給与体系は、年齢を重ねると高くなり、50代になると調剤薬局と変わらない水準になります。また、薬局長まで昇進することができれば高年収となります。
製薬会社
製薬会社も厚生労働省の調査対象となっていませんが、大手製薬会社の研究職やMRは高年収で知られています。また、そのような会社は福利厚生も充実しています。退職金も多いので、トータルの生涯年収も高くなります。
そのため薬剤師の勤務場所として人気で、職に就くハードルは最も高くなっています。
薬剤師の生涯年収は思ったより低い?
先ほど紹介した薬剤師の生涯年収と一般労働者の比較を見て、薬剤師の生涯年収は思ったよりも低いと思った方もいるのではないでしょうか。
一般的にみて、薬剤師の生涯年収は決して低くはないのですが、ずば抜けて高くはないのも事実です。
ここでは、薬剤師の生涯年収が抑えられてしまう理由について解説します。
昇給率が抑えられている
薬剤師は初任給が高い傾向にあります。
大学を卒業してすぐの薬剤師でも、一般企業に勤める同級生よりも高い給料をもらうことができます。
ただ、薬剤師の場合はその後の昇給率が抑えられています。
調剤薬局や病院の主な収入は、全国一律の診療報酬をベースにしたものとなるため、大きな売上アップが難しく、それは薬剤師の給与にも反映されます。
働き続けても大きな昇給がないので、定年までのトータルで見ると、一般企業との差がなくなってしまうのです。
昇進ポストが限られている
先ほど説明したように、薬局や病院は小規模なところが多く、管理職が薬局長1人ということもあります。
どんなに努力して薬剤師としてのスキルを上げても、ポストがなければ昇進することはできません。
上司がずっと勤め続けている限り、自分は一般薬剤師でいなければならないという人も多いでしょう。
昇進できなければ管理職手当が付くこともなく、給料は頭打ちになってしまいます。
地域や業種によって差がある
薬剤師の年収は、地域によって大きな違いがあることをご存知でしょうか。
普通の職業の場合、地方よりも都会のほうが年収が高いことが一般的です。
しかし、薬剤師は都会よりも地方のほうが年収が高くなっています。
地方では薬局や病院のニーズに対して薬剤師の数が少ないため、薬剤師を確保するためには高い給与を提示しなければなりません。
しかし、都会には薬学部に通うために上京して、そのまま就職したという薬剤師も多く、薬剤師の数は飽和状態にあります。求人を出すときも、それほど給与を高くする必要がないのです。
そのため、高待遇のイメージのある都会で働く薬剤師の生涯年収が実は思ったよりも少なかった、ということも起こるのです。
また、先ほどみたように、生涯年収を左右する給与水準や昇進のしやすさも、薬局やドラッグストアといった業種によって差があり、どの業種で働いているかによって生涯年収も違ってきます。
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薬剤師が生涯年収をアップする方法
自分の生涯年収は思ったよりも少ないかもしれない。
そう考えた薬剤師が生涯年収をアップするにはどうすればいいのでしょうか。
キャリアアップして昇進する
現在働いている職場で年収をアップするには、薬剤師としてのスキルを磨いて昇進することがまず考えるべきルートとなります。
薬剤師のキャリアパスとしては、管理薬剤師から薬局長や店長になるというのが一般的です。ドラッグストアの場合は、エリアマネージャーへの昇進も考えられるでしょう。
日々の調剤業務を中心としたルーティンワークに満足するのではなく、より広い視野を持ってマネジメントスキルを身につけていくようにしましょう。
ただ、その場合は、いまの職場で昇進ルートに乗ることができるのか、昇進してどのくらい収入アップが望めるかをきちんと把握しておくことが大切です。そうでないと収入アップにつながらない努力をすることになってしまいます。
資格手当のつく資格をとる
資格手当のある職場で働いている場合は、それに関連した認定資格や専門資格をとることも、確実な年収アップにつながります。
病院勤務の薬剤師は、がん専門薬剤師や救急認定薬剤師の資格をとることによって、給与がアップするだけでなく、まわりからの信頼も厚くなり、日々の業務にもプラスになるでしょう。
転職する
現在の職場で年収アップの望みが薄いときは、思い切って転職することも有効です。
薬キャリエージェントの調査によると、実に薬剤師の3人に2人が転職を経験しています。
専門職である薬剤師にとっては、転職が不利になるということはありません。
薬剤師が転職する際には、薬剤師専門の転職エージェントに登録することがおすすめです。
年収アップのために転職したいと思っても、お金はデリケートな話題のため、自分ではなかなか転職先と交渉しづらいと感じる方もいるのではないでしょうか。
転職エージェントなら、希望の年収を伝えておけば、コンサルタントに転職先と年収についての交渉も任せることができます。
また、一般の転職サイトには掲載されない高待遇の求人も紹介してもらえます。
薬剤師が生涯年収をアップするためにおすすめの転職先
いざ転職しようと思ったときに、どの職場を選べばいいのでしょうか。
ここでは、薬剤師が生涯年収をアップしやすい転職先を解説します。
大手ドラッグストア
給与水準や転職しやすさから考えてまずおすすめなのが、全国チェーンの大手ドラッグストアです。
大手ドラッグストアは給与体系も整っており、店舗数も多いため、店長職への昇進も比較的しやすいといえます。
全国で展開しているので転勤の可能性もありますが、それもチャンスと考えれば評価も上がり、生涯年収アップにつながるでしょう。
薬剤師が不足している地域や離島
生涯年収を増やすには、都会よりも地方で働くほうが収入アップの可能性が高くなります。
もし都会の大学の薬学部に入るために上京し、そのまま都会で就職したのなら、地元へのUターンやIターンを考えてみてはいかがでしょうか。
地方は年収が高いだけでなく、物価が都会に比べると安いので、総合的に経済的な満足度は高くなるでしょう。
また、薬剤師が不足している僻地や離島で働けば、年収を大幅にアップすることができます。
働く場所にはこだわらない方、チャレンジ精神にあふれた方にはおすすめです。
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短期間で稼ぐなら派遣薬剤師
現在の年収にもの足りなさを感じて、短期間で大きく稼ぎたいと考える方には、派遣薬剤師もおすすめです。
薬キャリエージェント調べによると、派遣とパートの時給は次のようになっています。
時給 | |
派遣 | 3341円 |
パート・アルバイト | 2079円 |
派遣薬剤師の時給は、パート薬剤師の1.5倍であることがわかります。
たとえば、時給3000円の派遣薬剤師が、1日8時間、一カ月に20日働くと、月収は約48万円となります。1日の労働時間や働く日数を増やせば、より高い収入を得ることができます。
このように、即戦力である派遣薬剤師であれば、短い期間で正社員以上稼ぐことも可能です。
また、現在の仕事を続けながら、副業として空いた時間で派遣として働くという選択肢もあります。
これは、資格職であり、時給の高い薬剤師ならではのメリットといえるでしょう。
まとめ
ここまでデータをもとに薬剤師の生涯年収についてみてきました。
薬剤師の生涯年収は少ないわけではありませんが、難関の国家資格というイメージに比べるとそう高くはないと言えるかもしれません。
自分の生涯年収を増やしたいと考える方は、ここで紹介したポイントをもとに、できることからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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