大卒薬剤師が知っておくべき年収の実態とは?年収アップのキャリアパスも
長い間勉強して獲得した薬剤師免許。大学を卒業して就職するときに気になることには、仕事の内容や人間関係とともに年収もあるのではないでしょうか。
薬剤師は専門職として安定した収入が期待できる職業です。しかし、実際の年収は業種や職場の形態によって大きく異なります。
特に大卒の薬剤師の場合、初任給やキャリアアップの可能性、福利厚生などを含めた全体像を把握することが重要です。
この記事では、大卒薬剤師の年収について詳しく解説し、年収をアップさせるためのポイントもご紹介します。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
大卒薬剤師の初任給は高い?
薬キャリで薬剤師に初任給の金額についてアンケートをとったところ、次のような結果になりました。
初任給 | 割合 |
〜19万円 | 22.10% |
20〜24万円 | 35.10% |
25〜30万円 | 20.70% |
31〜34万円 | 4.60% |
35万円〜 | 3.10% |
全体の初任給の平均金額は約23万円となりました。
アンケート対象の薬剤師の年齢が幅広かったため、この金額は現在の初任給の水準とは異なるところもありますが、全年齢の平均が約23万円というのは高水準と言えます。
このように、大卒薬剤師の初任給は、他の職業と比べて高い水準にあります。
これは国家資格を必要とする専門職であることや、現在は6年間の薬学教育を修了していることが反映された結果です。
業種別にみると、病院は新卒の薬剤師に人気があるので初任給は比較的低めです。また、公務員薬剤師は人事院規則の定めに基づいた俸給表が適用されるため、初任給は低いところからのスタートとなります。
一方で、ドラッグストアは希望者が相対的に少ないので、人員を確保するために初任給は高めに設定されています。
調剤薬局は就職する新卒薬剤師の数も多いので、金額も全体のなかでは平均的だと言えます。
薬剤師の初任給は基本的に高水準ですが、その後の昇給の速さや将来的な年収は職場の種類や働き方によって異なります。そのため、長期的な視点をもって職場を選ぶことが重要です。
大卒薬剤師の年収を他業種と比較
次に、大卒薬剤師がこれから働くとどのくらいの年収になるのかをみていきましょう。
まず、一般の労働者と薬剤師の平均年収を比較します。
男女の平均値を比較すると、一般労働者の312万円に比べて薬剤師は583万円。その差は250万円以上となっています。
女性の場合をみても、一般労働者が259万円であるのに対し540万円と、こちらも250万円以上の差となっています。
女性にとって薬剤師免許は非常に強い資格だと言えるでしょう。
男女計 | 男 | 女 | |
一般労働者 | 312万円 | 342万円 | 259万円 |
薬剤師 | 583万円 | 637万円 | 540万円 |
※一般労働者の平均年収は、厚生労働省「付表2 一般労働者の性、雇用形態別賃金及び雇用形態間賃金格差の推移/令和4年賃金構造基本統計調査の概況」より、男女計の正社員・正職員の賃金に12を掛けた数字を平均年収としている
次に、他の医療従事者と比べて薬剤師の年収はどのくらいの水準にあるのかをみていきましょう。
男女計 | 男 | 女 | |
医師 | 1429万円 | 1515万円 | 1138万円 |
歯科医師 | 810万円 | 794万円 | 878万円 |
薬剤師 | 583万円 | 637万円 | 540万円 |
看護師 | 508万円 | 523万円 | 506万円 |
※厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
医療従事者のなかでも、やはり医師の年収は高くなっています。男性も女性も平均年収が一千万円を越える職業はなかなかないでしょう。
また、医師に次いで歯科医師も男女ともに高い水準にあります。
それに比べると、同じように6年間大学に通って国家試験も受けた薬剤師の年収は少し低くなっています。
ただ、医師や歯科医師が高いだけで、一般の労働者と比べると高年収であることに違いはありません。
【業種別】大卒の薬剤師の年収
同じように大学を卒業して就職しても、薬剤師は働く場所や業種によって年収が大きく変わります。
以下に、主要な業種別に年収傾向を解説します。
調剤薬局
調剤薬局の薬剤師は、患者の処方箋に基づく調剤や服薬指導が主な業務で、薬キャリの調査によると、平均年収は517万円です。
特定のクリニックの門前薬局も多く、夜勤や休日出勤がほぼないため、比較的安定した働き方が可能です。地方では人材不足から年収が高めになるケースもあります。
管理薬剤師など上位ポジションを目指すことで年収アップをねらえます。一方で、少人数の職場ではキャリアアップや昇給の機会が限られている場合があるのが実情です。
ドラッグストア
ドラッグストアの薬剤師は、調剤業務に加えてOTC(一般用医薬品)の販売や店舗運営を担当することが多く、薬キャリの調査によると、平均年収は514万円です。
大手チェーンでは、薬局というよりも小売店の側面が大きくなります。業務範囲が広いぶん、店舗管理や売上達成などで結果を出せば、昇進や昇格に直接結びつき、大幅な年収アップも見込めます。
一方で、シフト制勤務が基本となるので、労働時間は安定しません。業務の幅を広げて出世したいと思った場合、転勤も避けられないでしょう。
マネジメントに興味があり、調剤にとらわれずに仕事の幅を広げたいと思う人にはチャレンジのしがいのある職場だと言えます。
病院
薬キャリの調査によると病院薬剤師の平均年収は約474万円で、他業種と比べるとやや低めです。
主な業務は、患者の治療をサポートする調剤や服薬指導です。病院のなかで、医師や看護師などと共に医療チームの一員として働くことには、ほかの職場にはないやりがいがあります。
夜勤やオンコール対応がある場合、その手当は給与に反映されます。専門薬剤師や認定薬剤師の資格を取得することで資格手当がつく職場もあります。
病院は若手の薬剤師が多く、平均年齢が低いため平均年収も低めですが、長く働いて薬剤部長などになれば年収は高くなります。
製薬会社
製薬会社で働く薬剤師の平均年収には大きな幅があります。
大手製薬会社の研究開発職や医薬情報担当者(MR)では、年収1000万円を超えることもあります。特に外資系企業では成果主義によりさらに高収入が期待できます。ただ、そのような職では大学院卒のような高い能力が求められたり、成果を求められるプレッシャーも大きかったりします。
また、製薬会社だけでなく、一般企業のなかでも薬品を扱う部署では薬剤師が必要とされます。倉庫や工場などの管理薬剤師の年収は、一般的な薬剤師と同程度のところが多くなっています。
大卒の薬剤師が初任給以外にチェックしたいポイント
大卒の薬剤師の目が行きがちなのは初任給の金額でしょう。
ただ、実際に働き続けるために大切になるのは初任給だけではありません。次にあげるような手当や福利厚生も、長期的な収入や働きやすさに影響を与えます。
基本給以外の手当
給与には基本給以外にさまざまな手当が設定されています。
主な手当としては、次のようなものがあります。
分野 | 手当名 |
時間関係 | 時間外手当・休日手当・夜勤手当・皆勤手当・精勤手当 |
役職関係 | 役職手当、職能手当 |
スキル関係 | 資格手当 |
家族関係 | 扶養手当・家族手当 |
働く地域関係 | 地域手当 |
通勤・住居関係 | 通勤手当・住宅手当 |
手当は給与でかなりの割合を占める重要なものですが、どの手当が設定されているかは勤務先によって違います。
たとえば、資格を取得した場合でも、資格手当がつくところとつかないところがあります。
住宅についても、住宅手当があるところとないところがあり、その計算方法や金額も勤務先によって違います。
また、ボーナスについては基本給や各種手当をもとに計算されることが一般的ですが、具体的な計算方法や含まれる手当の範囲は会社ごとに異なります。
このような各種手当やボーナスの扱いによっても年収には大きな違いが生じてきます。給与をチェックする際には、基本給だけでなく、手当やボーナスも含めた総額を確認するようにしましょう。
福利厚生
給与以外に働くうえで大切なのは福利厚生です。福利厚生が充実しているかどうかは、労働環境の満足度や長期的なキャリア形成に大きな影響を与えます。
法律で定められている社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)は、どの職場でも整備されています。加えて、健康診断や人間ドック、予防接種などの費用補助を行う企業もあります。
育児・介護休業制度も法律で定められたものですが、女性の多い薬剤師業界では、育児時短勤務制度を長く利用できる企業も増えています。
また、資格取得のための研修や学会参加費用の補助など、キャリアアップを支援する制度のある職場もあります。
レジャー施設やスポーツクラブの優待など、リフレッシュのための福利厚生が提供されるところもあります。ドラッグストアでは買い物補助制度がある企業もあり、これは毎日の生活にうれしい福利厚生だと言えますね。
昇給のタイミング
薬剤師の昇給のタイミングはさまざまです。調剤薬局は個人経営のところも多く、一般企業のように昇給が就業規則で定められていないこともあります。
全体的には、薬剤師は初任給が高い代わりに昇給のペースが抑えられがちな傾向があります。
一方で、公務員薬剤師は、初任給は低いですが、毎年確実に昇給があるので、長い目で見ると高年収になります。
一般薬剤師の昇給は緩やかですが、管理薬剤師になれば大幅な給与アップが期待できます。
また、自分の働きが昇給に反映されていないと感じるときは、直接上層部と交渉することで給与アップがかなうこともあります。
ただ、職場によっては希望する昇給が実現できないこともあります。そのような場合でも、職場を変えれば年収アップできるのが薬剤師です。
大卒薬剤師が年収をアップさせるには
薬剤師が働きながら年収を上げるためにはどのような方法があるかをみていきましょう。
経験を積んでスキルを磨く
大卒薬剤師が年収をアップさせるために基本となるのは、経験を積んでスキルアップを図ることです。キャリアを積み重ねて専門性を向上させることは収入増加に直結します。
調剤や服薬指導などの基本業務を確実にこなすだけでなく、より複雑な症例にも対応できるようになり、上司からの信頼が厚くなれば、昇進のチャンスが増えます。
薬剤師が確実に年収アップする方法は、管理薬剤師や薬剤部長への昇進です。管理薬剤師は薬を扱う場には必ず設置するように定められており、その職務に対して高い責任が伴いますが、そのぶん給与も増加します。
薬剤部長も、業務能力やスタッフの管理能力が評価されて昇進するので、大幅な収入増加が期待できます。
資格を取る
薬剤師としての専門性を高めるために、認定薬剤師や専門薬剤師といった資格を取得するのも効果的です。
これらの資格は、薬剤師としての知識やスキルを証明するもので、資格を取得することで職場での評価が上がります。資格手当のある職場だと、収入アップにつながります。
特に、がん治療や糖尿病など特定の分野に特化した薬剤師は高い評価を受けるため、年収が高くなる傾向があります。
また、認定薬剤師の資格を取り、同じ薬局で勤務を続けることでかかりつけ薬剤師になれば、薬局への貢献度が高くなり、年収アップも期待できます。
転職する
薬剤師が年収アップできるかは、勤務先の規模や売上によってほぼ決まっています。もし少人数で管理薬剤師になることが難しい職場だと、どれだけ働いても年収アップは難しいでしょう。
そのように同じ職場で働き続けても年収アップの可能性が見込めない場合、転職は非常に有効な選択肢となります。薬剤師の年収は職場ごとに大きく異なり、給与水準の高いところに転職すれば、収入の大幅な向上が期待できるからです。
たとえば、小規模な薬局や病院では、管理職への昇進が難しい場合がありますが、大手の調剤薬局やドラッグストアに転職すれば、管理薬剤師や複数の店舗を管理するエリアマネージャー職に就くことで、収入が増加するケースがあります。
逆に、なかなか人を確保できない個人経営の薬局が高給与を提示していることもあります。
また、ボーナスがない職場からボーナスがある職場へ転職するだけで年収アップすることもあります。転職の際には、ボーナスの計算方法や、各種手当の金額なども確認しておきましょう。
このように、転職はキャリアの幅を広げて年収アップするために有効な手段です。
薬剤師のなかでは転職は一般的で、転職によってキャリアアップを果たすことができます。
大卒薬剤師として働きながら、自分の将来を見据え、着実にスキルアップしていきましょう。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
まとめ
大卒薬剤師の年収は、初任給の高さだけでなく、働いている業種やその後のキャリアパスなど多くの要素に影響を受けます。
調剤薬局や病院、ドラッグストア、製薬会社など、それぞれの業種で異なる特徴を理解し、自分に合った働き方を選ぶことが重要です。また、年収アップを目指すには、スキルの向上や資格取得、戦略的な転職が有効です。
薬剤師免許があれば、自分の希望する働き方を実現することができます。そのためにも、まずは一つひとつの業務に誠実に取り組み、どこに行っても通用するスキルを身につけましょう。
薬キャリエージェントでは、管理薬剤師、年収600万円以上、定期昇給ありなど、希望に合ったドラッグストアの求人を多数扱っております。まずは、お気軽にご相談ください。