薬局を開業すると年収はどのくらい?薬局開業の流れとポイントも解説


薬剤師はどこかの調剤薬局や病院に雇用されている限り、年収が非常に高くなることはありません。年収1000万円は夢の金額と言えるでしょう。それが同じ医療職でも医師との大きな違いです。
しかし、薬剤師であっても高年収をねらえる働き方があります。それは自分で薬局を開業することです。
ここでは、薬剤師が薬局を開業する方法について解説します。併せてどのくらいの年収がねらえるのかも確認してきます。
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薬局を開業したときの年収は?

薬局を開業すると、薬剤師として調剤などの業務を行っていても、立場は経営者になります。
雇用されて毎月決まった給与をもらう立場とは、お金の流れがまったく違います。
まず、薬局を経営するとどのくらいの年収になるのかをみていきましょう。
薬局経営者の平均年収
薬局を開業した経営者の年収は、事業規模や運営状況によって大きく異なります。
薬局経営者全体の年収を調査した公的なデータはありません。
ただ、厚生労働省による管理薬剤師の年収に関する次の調査結果が参考になるでしょう。
その調査によると、調剤薬局で働く管理薬剤師の平均年収は次の表のようになっています。
年収 | 最大年収 | |
保険薬局 開設者別 法人の場合 | 735万円 | 736万円 |
保険薬局 店舗数別 個人薬局の場合 | 735万円 | 933万円 |
※厚生労働省/中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)令和5年実施」 より
個人薬局の場合、経営者が管理薬剤師である場合が多いので、個人薬局の年収は経営者の年収と考えることができます。
個人薬局の最大年収は933万円となっています。個人薬局を開業すれば年収1000万円の可能性があるということです。
事業が順調に伸びて複数店舗を経営するようになれば、年収はさらに伸びるでしょう。
これは、どこかに勤務しているだけでは無理な領域になります。開業薬剤師ならではの世界と言えるでしょう。
一般的な薬剤師の年収と比較
この金額がどのくらいの水準かを確認するために、一般的な薬剤師の年収と比べてみましょう。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師全体の平均年収は599万円※となっています。先ほどみた個人薬局の年収とは大きな差があることがわかります。
薬局経営者は、経営リスクを負う代わりに、一般の薬剤師よりも高い収入を得る可能性があるのです。
※厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和6年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
薬局を開業後の年収の変化

薬局を経営している場合、どこかに勤めているときと違って年収は安定していません。
薬局を開業すると一般的にどのように年収が変化するかについて確認してみましょう。
開業直後
開業直後は、初期投資や運転資金が必要となる一方で、患者さんの数が未知数なので、利益が安定しない時期です。
売上が読めないため、最初は自分一人だけでスタートするケースも多いでしょう。
まずは年収500万円が目標となります。
一人薬剤師の時期
法律により、薬剤師1人あたりの処方箋枚数は1日40枚までと決まっています。
1日に扱う処方箋が40枚で収まるようならば、自分一人で人件費を抑えて経営することができます。
処方箋が1日30〜40枚程度あれば、年収を500〜600万円とすることができるでしょう。
ただ、雇用されていると毎月の給与や手当の額は決まっていますが、経営者であれば経費も含めて管理していくことになります。たとえば車に関する支出を経費に計上できたりするので、実質的な収入をコントロールできる範囲が増えます。
「給与」としては表れない部分で実質的な収入を増やすことができることも開業のメリットと言えるでしょう。
人を雇用する時期
経営が順調に伸びて、処方箋が1日40枚を超えるようになると、ほかの薬剤師を雇用する必要が出てきます。
従業員を雇用すると人件費が増加しますが、業務負担が軽減され、売上の拡大も期待できます。
扱う処方箋が増えても雇用する人数を増やせば対応できるので、年収も上限なく増やしていくことができます。ただ、人件費とのバランスを考えていくことが必要となります。
この状態になれば、年収700〜900万円をめざすことができるでしょう。
年収1000万円は可能?
先ほど確認したように、薬局を開業すれば年収1000万円は十分に達成可能な金額です。
ただ、そのためには事業を拡大し、安定させる努力が必要となります。
多数の処方箋を応需できる病院のもとで開業するのはもちろん、介護施設と提携したり、往診対応を行ったりすることで、売上を安定させることができるでしょう。
年収2000万円は可能?
複数店舗が営業できるようになれば、年収2000万円も難しくはないでしょう。
最初の店舗で薬局経営の実績があるとはいえ、新店舗にはまとまった資金が必要となりますし、店舗の立地が違えば売上も違ってきます。必ず成功するとは限りません。
複数店舗に手を広げればそのようなリスクを負うことになりますが、成功すれば従業員の働きによって自分の収入を増やせることになります。自分が薬剤師として働くのでなく、経営者として働くことで年収を増やしていくステージになります。
薬局を開業する方法

では、薬局を自分で開業するにはどのような方法があるかを確認してみましょう。すべて自分で始める以外にもいくつかの方法があります。
独立開業する
ここまで解説してきたように、自分で資金を用意して自分の店舗を開業する方法です。
自由度が高い反面、資金調達のハードルは高くなります。また、実際に薬局を経営するスキルも自分で勉強することが必要です。コンサルタントなどの支援を受けながら開業することもできます。
フランチャイズで開業する
自分で開業するのはハードルが高いと感じる場合は、フランチャイズで開業する方法もあります。フランチャイズで開業すれば、既存のブランド力を活用でき、経営ノウハウや仕入れなどで本部の支援を受けることができます。
薬剤師としての経験はあるけれど、経営面では不安だという人にとっては心強い方法だと言えるでしょう。
ただ、フランチャイズの場合は、開業時に加盟料・補償金、その後はロイヤリティを払わなければなりません。また、店舗の経営についても自由度は低くなります。
事業継承で開業する
経営者が高齢で後継者がいない既存の薬局を引き継ぐという方法もあります。
薬剤師の高齢化により、後継ぎのいない薬局が増えています。そのような薬局を継承することができれば、店舗やさまざまな設備、顧客がすでに整っているのでスムーズに開業することができます。
ただ、まとまった継承費用が必要となります。また、自分が希望する場所や時期にそのような薬局があるとは限らないことに注意が必要です。
薬局を開業するステップ

次に、実際に薬局を開業するためにはどのようなことを行っていくのかを解説します。
1. 事業計画を作成する
まず、自分が経営したい薬局のビジョンや目標を明確にし、そこから具体的な計画に落とし込んでいきます。
薬局の開業で大事なのは立地です。近くに大きな病院があるか、どのくらいの処方箋を発行しているか、家賃相場はどのくらいかはまず押さえておきたいポイントです。
新規開業する病院の情報が入ってくるようなネットワークがあると有利です。
2. 資金計画を立てる
開業資金の準備も重要なポイントです。
開業には、店舗や条件にもよりますが、初期費用として約1000–3000万円かかります。自己資金だけで確保するのが難しい場合は、銀行から融資を受けたり、助成金を申請したりする必要が出てきます。
また、開業後も家賃や薬の仕入れなどにお金が必要となるので、経営が軌道に乗るまでの運転資金も準備しておきたいものです。
必要な資金を確保するだけでなく、その後の返済も無理なく行えるか、しっかりシミュレーションしておきましょう。
3. 物件を探す
立地は薬局経営の成功を左右します。事業計画にしたがって、慎重に探していきましょう。
病院に対する利便性が最も大切なポイントですが、それ以外にも駅近、競合の多さ、駐車場の確保など状況によって検討すべき条件が出てきます。
また、建物や内装の清潔感も大切です。店舗の改装や設備にもお金はかかります。
資金調達との兼ね合いも含めて、広い視野をもって探していきましょう。
4. 必要な届出や申請を行う
事業計画に見合った物件が決まり、いよいよ開業が具体化すると、保健所への届出や薬局開設許可が必要となります。
薬局開設許可申請書や保険薬局指定申請書を提出し、必要な審査を受けていきます。法人なら法人設立届の提出もしなければなりません。
届出・許可ごとに申請の条件や期限が異なるので、きちんと確認しながら進めていきましょう。
5. 人の採用や開業準備をする
最初から人を雇用する場合は、採用活動も並行して行っていきます。正社員なのかパートなのか、資金との兼ね合いもふまえて適切な人数を判断しましょう。
店舗の準備ができたら、設備や機器を配置し、必要な医薬品の仕入れを行います。スタッフの採用後は、研修も行うことになります。
6. 薬局をオープンする
このような準備が整ったら、晴れて薬局のオープンとなります。
ただ、薬局オープンはスタートにすぎません。開店直後は自分が薬剤師として長時間働くことも覚悟しておかなければなりません。
一方で、経営者としての業務もこなしながら、日々起こるさまざまな問題に対処していくことになります。
薬局を独立開業するメリット・デメリット

このように労力とお金が必要な独立ですが、どのようなメリット・デメリットがあるかをまとめてみました。
薬局を開業するメリット
自分で薬局を開業する最大のメリットは、自分の努力次第で収入を伸ばしていけることでしょう。どこかに勤務していると、どれだけ店舗に貢献しても給与の伸びは限られています。
しかし、自分が経営者の場合、さまざまな施策をすることで売上が伸びれば、その利益を自分のものとすることができます。仕事のやりがいは段違いなものとなるのではないでしょうか。
自分の薬局であれば定年を気にせずに働けますし、経営が軌道に乗れば自分が働く時間を減らしてもより多くの収入を得ることもできます。
経営者となれば、ほかの経営者や地域のドクターとのネットワークができる点もメリットと言えるでしょう。雇われる立場でいるときとは違う世界が広がります。
また、自分の薬局を通して地域医療に貢献できることにもやりがいを感じられるでしょう。
薬局を開業するデメリット
薬局を開業する最大のデメリットもまた金銭的なリスクになります。
店舗を開業するためには、一般的に1000万〜3000万円程度の資金を用意しなければなりません。借入を行えば返済の義務が生じます。
開業後も経営がうまくいくとは限りません。最悪の場合、倒産してしまうリスクもあります。毎月決まって比較的高い給与がもらえていた勤務薬剤師のころとはまったく違うプレッシャーを背負うことになります。
とくに開業して最初のころは長時間働くことになるでしょう。家族とすごしたり、自分のために使ったりする時間を犠牲にすることになるかもしれません。
また、従業員を雇えばその人たちに対する責任が生じます。医薬品という患者さんの健康に直結する商品を販売することに関する責任もあります。
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まとめ

薬局を開業すれば、薬剤師としての収入やキャリアの可能性が大きく広がります。
どこかに雇用されていたときとは違う世界が広がり、やりがいを感じながら限度なく収入を伸ばすことができます。
ただし、経営にはリスクが伴いますし、日々生まれてくるさまざまな問題に対処していかなければなりません。
自分で薬局を開業したいと考えたときには、事業計画をしっかり立て、必要なスキルを積んだり資金を貯めたりしながら準備を進めていきましょう。
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