HIV感染症薬物療法認定薬剤師とは?取得方法とメリット
HIV感染症薬物療法認定薬剤師とは?資格の概要、認定団体、取得メリット、役割、試験や論文・学会発表の有無といった取得方法や取得にかかる費用、更新情報、参考書、難易度までわかりやすく解説します。
HIV感染症薬物療法認定薬剤師とは?その役割も解説
「HIV感染症薬物療法認定薬剤師」は、一般社団法人日本病院薬剤師会による認定です。HIV感染症という疾患は、現在では治療法の進歩により、死の病から病気とともに生きていく疾患に変わっていきました。しかし、そのことは一般の人にはあまり知られていません。HIV感染症薬物療法認定薬剤師は、そのような背景や患者の社会的な立ち位置を理解した上で、安全で確実な薬物療法をもたらす役割を担います。
HIV感染症の病態や使用される医薬品の薬理作用、体内動態等を理解することはもちろん、認定を取得し更新していく間において、研究・指導的な役割も果たすことが求められます。
日本病院薬剤師会の他の認定と少し違うのは、保険薬局の薬剤師にも取得の門戸が開かれているところです。また、HIV感染症専門薬剤師を目指すにあたって必須の認定となっています。
認定を取得するメリット・強み
HIV感染症の患者数は他の疾患に比べ多くはありません。しかし、一人の患者に対し薬学的視点だけでなく、社会的・心理的な支援が求められます。自分の病気について周囲に理解されにくいHIV感染症患者にとって、大きなよりどころとなるのが、専門的な医療スタッフです。HIV感染症薬物療法薬剤師はその一員として、HIV感染症患者と良好なコミュニケーションを通して、患者の意思を尊重した服薬支援をはじめ、総合的なサポートという形で貢献することができます。
また、この認定を取得する過程で得られる、患者を長期に渡ってあらゆる観点から総合的に見る視点は、他の疾患の患者の服薬指導においても役立ちます。
この認定を取得すると、日本病院薬剤師会のサイトに氏名と所属が掲載され、HIV感染症の薬物療法に詳しい薬剤師として、外部にも広く認識されます。
「HIV感染症薬物療法認定薬剤師」は、こんな人向け
薬物療法だけでなく一人の患者と総合的に向き合いたい
臨床も研究も両立させたい
HIV感染症の患者さんと多く接してきた
難易度
領域 | 更新年 | 勤務歴 | 試験 | 論文 | 学会 | 症例報告 | 薬局薬剤師 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
HIV感染症 | 5年ごと | - | 認定時 | 更新時 学会といずれか |
更新時 論文といずれか |
認定時 更新時 |
◎ |
HIV感染症薬物療法認定薬剤師の詳細
認定団体:一般社団法人 日本病院薬剤師会
認定申請に必要な資格:
- 薬剤師の国家資格
- 薬剤師として3年以上の実務経験
- 申請する時点で以下いずれかの団体に所属していること
日本病院薬剤師会
日本薬剤師会
日本女性薬剤師会
日本保険薬局協会(申請時に会員企業に所属していること) - 以下いずれかの学会の会員であること
日本医療薬学会
日本薬学会
日本臨床薬理学会
日本エイズ学会 - 以下いずれかの認定を所有していること
日病薬病院薬学認定薬剤師
日本医療薬学会の専門薬剤師
医療薬学専門薬剤師
がん専門薬剤師
薬物療法専門薬剤師
地域薬学ケア専門薬剤師 - 下記の勤務実績についての所属長による証明
申請時に病院または診療所もしくは保険薬局に勤務していること
HIV感染症患者に対する指導に3年以上、かつ申請時よりさかのぼって 1 年以上従事していること
初回取得時、更新時に必要な単位や条件
初回取得時 | 更新時 | |
---|---|---|
必要単位 | 5単位(10時間)以上 | 40単位(毎年3単位以上) うち指定の単位12単位以上必須 |
勤務歴の条件 | HIV感染症患者に対する指導を3年以上かつ 申請時より1年以上直接従事していること |
施設内において HIV 感染症に関する専門的 業務に従事 |
試験の有無 | 筆記試験あり | なし |
論文発表 | 不要 | あり(学会発表といずれか) |
学会発表 | 不要 | あり(論文発表いずれか) |
症例報告 | 10例 | 5例 |
推薦状 | 必要 | 不要 |
かかる費用 | ・受験料(税込) 会員11,000円、非会員 16,500円 ・認定審査料(税込) 会員 11,000円、非会員 16,500円 ・認定料(税込) 22,000円 |
・更新審査料(税込) 会員 11,000円、非会員 16,500円 ・認定料(税込) 22,000円 |
HIV感染症薬物療法認定薬剤師の取得の流れ
大まかな流れは以下のようになります。下部に詳細を記載しました。
1. 症例を集める(10症例)
HIV感染症患者に対する服薬指導の実績を10症例以上積みます。
認定申請時に提出する書類の書き方は下記に要領が記載されています。
「HIV 感染症患者への指導実績の要約」作成のための手引き
2. HIV養成研修を受ける、または3年以上指導業務に従事する
研修施設においてHIV感染症薬物療法認定薬剤師養成研修(2日間、計16時間)を受講する、または研修施設で3年以上、HIV感染症患者に対し指導業務に従事します。
養成研修の受講対象者は以下のとおりです。
(1)薬剤師としての実務経験を3年程度有する者
(2)国立国際医療研究センター病院、エイズ治療拠点ブロック拠点病院、中核拠点病院、拠点病院、もしくは抗HIV薬を含む処方せんの調剤を行う保険薬局に所属する常勤薬剤師
研修費用は13,200円(税込)です。
毎年度1-2回、研修の案内がなされますので、日本病院薬剤師会のサイトの「日病薬専門領域」の更新をチェックしましょう。
3. 指定の研修会・講座で必要単位を取得
認定に必要な単位:10単位(5時間)を取得します。
対象の講習
- 下記の団体・組織主催のHIV感染症領域の講習会
日本病院薬剤師会
日本病院薬剤師会が実施する e ラーニング
各都道府県病院薬剤師会(ブロック開催も含む)
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター
HIV/AIDSブロック拠点病院
HIV感染症薬物療法認定薬剤師養成研修事業において日本病院薬剤師会が認定する研修施設 - 下記の学会が主催するHIV感染症領域の講習会
日本医療薬学会
日本薬学会