ないと損する?かかりつけ薬剤師に必要な「認定薬剤師」って何ですか?
研修や学会を受講すると発行される研修受講シール。認定薬剤師になるために必要だと知ってはいるけど、なんとなく集めたまま認定を受けていない方はいませんか。認定薬剤師になることは、自分自身のキャリアアップだけではなく地域の患者さんのためにも役立ちます。今回は認定薬剤師の認定を受けるための条件、方法やメリットなどをお伝えします。
参考資料
患者のための薬局ビジョン(厚生労働省)
2018年度4月改定版 調剤報酬はやわかりマニュアル(田辺三菱製薬)
研修認定薬剤師になるには(日本薬剤師研修センター)
いまさら聞けない「かかりつけ薬剤師」になる条件
厚生労働省は2025年までに、すべての薬局を「かかりつけ薬局」にすることを目指すと、「患者のための薬局ビジョン 」にあげています。薬剤師には、患者さんの「かかりつけ薬剤師」となって、地域包括ケアシステムの一端を担うよう求めています。
かかりつけ薬剤師の具体的な役割は、患者さんが住み慣れた地域において最期まで自分らしく暮らし続けるために、服薬情報の一元的で継続的な把握、在宅での対応を含む薬学的管理・指導などです。
これらの業務はかかりつけ薬剤師ではなくても、薬剤師なら当然行うものですね。しかし、実行した業務に対し「かかりつけ薬剤師指導料」や「かかりつけ薬剤師包括管理料」といった調剤報酬を算定するためには、いくつかの条件をクリアして、勤務先が「かかりつけ薬局」の認定を受け、さらにそこで働く薬剤師が患者さんに「かかりつけ薬剤師」に指名してもらう必要があります。
【かかりつけ薬局になるための基準】
以下の要件をすべて満たす保険薬剤師が配置されている。
- 以下の勤務経験等を有していること
- ア)保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験。
- イ)当該薬局に週32時間以上(32時間以上勤務する他の保険薬剤師を届け出た薬局において、育児・介護休業法の規定により労働時間が短縮された場合にあっては、週24時間以上かつ週4日以上である場合を含む)勤務。
- ウ)当該薬局に1年以上在籍(2018年9月末までは6カ月以上で可)。
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得している。
- 医療に係る地域活動の取り組みに参画している。
かかりつけ薬剤師になるために!「認定薬剤師」への道
上にあげた基準の中で、勤務する薬剤師自身の努力を要するのが「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得」すること、つまり「認定薬剤師」の認定を受けることです。かかりつけ薬局になるために、薬局として必要なことはわかるけど…自身が取得するメリットが思い浮かばない方もいると思います。メリットは後述しますので、まずは、認定薬剤師になる方法を見ていきましょう。
【認定薬剤師になるために必要な単位・更新するために必要な単位】
- 認定の対象となる研修を受講して40単位以上(最長4年以内、毎年5単位以上)を取得する。(日本薬剤師研修センターの場合 )※1
- 認定取得後は、3年毎に更新を受ける。この3年間では30単位以上(各年5単位以上)の取得が必要。(日本薬剤師研修センターの場合 )※2
多くの薬剤師が仕事をしながら認定薬剤師を目指すことになり、勉強と仕事を両立させるための学習計画をしっかり立てる必要があります。たとえば、初めて認定を受ける場合に4年間で毎年10単位ずつ取得しようと考えると、ほぼ毎月なんらかの研修を受講する必要があります。学習計画がなく、なんとなく過ごしてしまうと5単位に満たない年があって一からやり直しになってしまったり、最後の年に20単位以上の学習が必要になって単位取得が追い付かなくなるかもしれません。
認定薬剤師になるメリットとは?
認定薬剤師になるには勉強時間の確保のほかに、研修費用や申請・更新費用もかかります。それでも認定を受けることにどのようなメリットがあるのでしょうか。
私は、認定薬剤師の認定を受けるメリットは、以下の3つだと考えます。
- 自己研鑽に努めたという実績の保証となる
- 患者さんに信頼と安心を与えることができる
- 会社によっては資格の有無で給与に差が出ることがある
1.自己研鑽に努めたという実績の保証となる
認定を受けることは、自己研鑽の実績が第三者から認められたということです。認定を受けたプロバイダから認定証が発行された場合、カードタイプのものをネームホルダーに入れたり、賞状タイプのものを額縁に入れて薬局内に掲示したりして、患者さんのために継続的に学び付けている薬剤師だという実績を示すことができます。
2.患者さんに信頼と安心を与えることができる
学習した知識や技術を薬局に来た患者さんの健康のために役立てることができます。その結果、患者さんに安心して薬物治療を続けていただき、信頼を寄せていただけるようになったら、薬剤師にとっての大きなやりがいになるに違いありません。個人的に、一番のメリットだと感じています。
3.会社によっては資格の有無で給与に差が出ることがある
勤務する会社(薬局)によっては、認定を受けたら手当として給与に反映されるといった金銭的なメリットもあるようです。
また、認定薬剤師の認定を受けるための研修費用の補助や、有給休暇付与などがある会社もあり、補助を受けながら自己研磨できるメリットがあります。
認定薬剤師になることは地域の患者さんのためにはもちろん、自己研鑽にも役立ちます。仕事と学びを両立しながら、認定薬剤師を目指したいですね。
高垣 育(薬剤師ライター、国際中医専門員)
2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。