「薬剤師×旅」じゅんさんのたどり着いた場所

これまでの経歴ですよね。私、ちょっと変わっているかと思います。4年生最後の薬学生で、国家試験受けずに薬剤師にならずに卒業しました。自分の生き方に迷いが出てきたこともあり、これでいいのかと悩んで過ごしました。

社会にとって役立つ資格であるということは理解していたのですが。
正直に言うと、他の人よりも薬剤師になりたいという気持ちが少なかったと思います。

確かに勉強はしてましたね。でもそこがまた悩みのポイントでもあって、自分は勉強しかしてこなかったんじゃないかと思いが生まれてしまいました。大学に入ったら、いろいろな人と出会って世界が広がるでしょう？でも結局、迷いに迷って、薬剤師になりましたね。

何をしたというわけでなく、休養です。少し引きこもり気味だったかもしれません。違う仕事をしようかなと思った時期もありました。

そうしているうちに、せっかく薬学部を出たし、薬剤師になるしかないのかと思い出しまして。私は4年卒なので6年制とカリキュラムも変わって問題も難しくなって、無理じゃないかとも言われたんですけど、1年間勉強して薬剤師になりました。
予備校にも通いましたね。同級生より遅れに遅れて、薬剤師になったのが28歳でございます（笑）。薬剤師になってからも薬剤師っぽくないと言われることがあったのですが、こんな経緯からかもしれません。

最初は、調剤薬局への就職でした。東京に憧れていた時期があり、東京で働かせてもらったのですが、結局東京も会社も合わず退職。そこで、関西に戻ってきて中小薬局で働いていました。

私は正社員として働いたのがほんの少しで、途中からは派遣薬剤師にスイッチしたんですね。コロナ前の比較的時給が安い時期でした。ご存じの通り、地方に行けば行くほど、時給も高いし求人数も多い。それで静岡や愛知など周りながらお金を貯めました。

おっしゃる通りで、風当たりがきついときもありました。「派遣さんって高い時給もらっているんでしょう」という感じの方もいて、人間関係で苦労はしましたね。あまり出しゃばってはいけないという、純粋な薬剤師業務以外のところも必要になってくるなというのを感じました。

2、3ヶ月おきに働く場所を変えていたので、だんだん慣れてはきましたけど、やはり精神的にきつかったです。

もちろんです。いろんなところに行けたのは楽しかったですね。イレギュラーなことに対する対応力もつきました。

どうでしょう。例えば、私が病院薬剤師として働くのは無理なので、どこでもって言われると…。

でも、イレギュラーな対応は得意ですよ。薬剤師はまじめで計画的な方が多いのですが、反面イレギュラーな対応が苦手というように感じています。でも私は派遣薬剤師として、イレギュラーな対応力が鍛えに鍛えられましたね。

つど勉強するということです。後回しにせずに、わからなかったことはその日のうちに疲れていようが解決します。その積み重ねこそが大切だと思います。

患者さん第一、というところは、ぶれたらダメですね。それから、患者さんにはいろんな方がいますが、困ったときにはあまり一人で抱え込まず誰かに相談したほうがよいかなと思います。

もしかしたら、薬剤師も責任感が強すぎるのかもしれません。私は伝えるべきところを伝えたら、後は患者さんにお任せしています。しっかり治そうという患者さんの態度も大事だと思うので、冷たいかもしれませんが、ここまでやったから後は知らないよというメッセージを伝えることも重要だと考えています。

でももし、患者さんに対してネガティブな発言をする理由として、仕事をいろいろ背負いすぎているせいだとしたら、一人であまり抱えなくても良いのではないかということです。実際には、「バスが来るんでちょっと早くして！」なんて患者さんもいますけど（笑）。

専門的なことを丁寧にしっかりと伝えることができ、患者さんの役に立てたら嬉しいですね。例えば、カルシウムの吸収を助けるビタミンDってあんまり飲みすぎると、だるさや頭痛など出てくることがあります。それをある患者さんにやめてみませんかと提案したところ、「飲むのをやめたら治ったわ〜」といわれて嬉しかったのを覚えています。

今月（2021年11月）、独立しました。私はもともと独立志向があって派遣薬剤師をやったのも、いろいろな経験ができ、かつ短期間でお金を貯められるということがあります。
遅れて28歳で薬剤師になったので、ハンディを埋めようとハードな環境に身を置いた次第です。経営的にはまだまだですが、一つスタートすることができました。

自分の考え方として医薬分業は違うんじゃないかという思いと、病院の下請けのような状態を避けたかったというのがあります。たくさんの思いを抱いての開業でしたが、まだまだ患者さんがたくさん来るというところには至ってないです。

どんどん外に出て行きたいと思っています。地域に参加して、顔を覚えてもらえる薬剤師・薬局になりたいです。

他にたくさん頑張っていらっしゃる薬剤師の方がいる中で、私はあんまり偉そうに言える立場ではないのですが…。

こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、実は私、薬剤師なんていらないんじゃないか、と感じたことがあります。今までの薬剤師のやり方、あり方を考えてみたほうがよい時期にきているのかもしれません。これからは、新しい薬剤師像が求められると思います。どんどん新しいあり方が出てくるんじゃないですかね。