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2足の草鞋を履く薬剤師

更新日: 2021年12月31日 井手 綾子

「薬剤師×旅」じゅんさんのたどり着いた場所

「薬剤師×旅」じゅんさんのたどり着いた場所の画像1

コロナ禍で派遣薬剤師という言葉が認知される前から、全国各地で旅をしつつ薬剤師としてのスキルを培ってきたじゅんさん。
次の新たな目標としてじゅんさんが選んだのは、過去の経験をいかして調剤薬局を立ち上げることでした。

派遣薬剤師として勤務していた頃の出来事や開業して間もない現在の心境など、ひとりで薬剤師として奮闘するじゅんさんにお話しをうかがいました。

自分の将来について悩んだ数年間

さっそくですが、今までのご経歴をうかがえますか?

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じゅんさん

これまでの経歴ですよね。私、ちょっと変わっているかと思います。4年生最後の薬学生で、国家試験受けずに薬剤師にならずに卒業しました。自分の生き方に迷いが出てきたこともあり、これでいいのかと悩んで過ごしました。

社会にとって役立つ資格であるということは理解していたのですが。
正直に言うと、他の人よりも薬剤師になりたいという気持ちが少なかったと思います。

でも薬学部にも合格したのですから、勉強はしっかりされていたのでしょう。

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じゅんさん

確かに勉強はしてましたね。でもそこがまた悩みのポイントでもあって、自分は勉強しかしてこなかったんじゃないかと思いが生まれてしまいました。大学に入ったら、いろいろな人と出会って世界が広がるでしょう?でも結局、迷いに迷って、薬剤師になりましたね。

大学卒業後は、どんなことをされていたんでしょうか。

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じゅんさん

何をしたというわけでなく、休養です。少し引きこもり気味だったかもしれません。違う仕事をしようかなと思った時期もありました。

そうしているうちに、せっかく薬学部を出たし、薬剤師になるしかないのかと思い出しまして。私は4年卒なので6年制とカリキュラムも変わって問題も難しくなって、無理じゃないかとも言われたんですけど、1年間勉強して薬剤師になりました。
予備校にも通いましたね。同級生より遅れに遅れて、薬剤師になったのが28歳でございます(笑)。薬剤師になってからも薬剤師っぽくないと言われることがあったのですが、こんな経緯からかもしれません。

「旅する薬剤師」 派遣薬剤師としてスタート

薬剤師としてのスタートはどうでしたか。

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じゅんさん

最初は、調剤薬局への就職でした。東京に憧れていた時期があり、東京で働かせてもらったのですが、結局東京も会社も合わず退職。そこで、関西に戻ってきて中小薬局で働いていました。

旅先で働くという方法を選ばれていますが、どのような働き方だったのか教えてください。

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じゅんさん

私は正社員として働いたのがほんの少しで、途中からは派遣薬剤師にスイッチしたんですね。コロナ前の比較的時給が安い時期でした。ご存じの通り、地方に行けば行くほど、時給も高いし求人数も多い。それで静岡や愛知など周りながらお金を貯めました。

派遣だと、人も場所も一から関わる必要があり大変なイメージがあります。

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じゅんさん

おっしゃる通りで、風当たりがきついときもありました。「派遣さんって高い時給もらっているんでしょう」という感じの方もいて、人間関係で苦労はしましたね。あまり出しゃばってはいけないという、純粋な薬剤師業務以外のところも必要になってくるなというのを感じました。

2、3ヶ月おきに働く場所を変えていたので、だんだん慣れてはきましたけど、やはり精神的にきつかったです。

いいこともありましたよね。

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じゅんさん

もちろんです。いろんなところに行けたのは楽しかったですね。イレギュラーなことに対する対応力もつきました。

イレギュラーなことに対する対応力。どんなところでも働く力がつきましたか。

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じゅんさん

どうでしょう。例えば、私が病院薬剤師として働くのは無理なので、どこでもって言われると…。

でも、イレギュラーな対応は得意ですよ。薬剤師はまじめで計画的な方が多いのですが、反面イレギュラーな対応が苦手というように感じています。でも私は派遣薬剤師として、イレギュラーな対応力が鍛えに鍛えられましたね。

患者さん第一をモットーに、役立てる薬剤師に

困ったときに頼れるツールはありますか。

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じゅんさん

つど勉強するということです。後回しにせずに、わからなかったことはその日のうちに疲れていようが解決します。その積み重ねこそが大切だと思います。

経験を踏まえ、薬剤師としてこうありたい、こんな薬剤師がいるといいなという理想像はありますか。

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じゅんさん

患者さん第一、というところは、ぶれたらダメですね。それから、患者さんにはいろんな方がいますが、困ったときにはあまり一人で抱え込まず誰かに相談したほうがよいかなと思います。

もしかしたら、薬剤師も責任感が強すぎるのかもしれません。私は伝えるべきところを伝えたら、後は患者さんにお任せしています。しっかり治そうという患者さんの態度も大事だと思うので、冷たいかもしれませんが、ここまでやったから後は知らないよというメッセージを伝えることも重要だと考えています。

でももし、患者さんに対してネガティブな発言をする理由として、仕事をいろいろ背負いすぎているせいだとしたら、一人であまり抱えなくても良いのではないかということです。実際には、「バスが来るんでちょっと早くして!」なんて患者さんもいますけど(笑)。

いろんな患者さんがいる中で、印象に残る患者さんや嬉しかったできごとがあれば教えてください。

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じゅんさん

専門的なことを丁寧にしっかりと伝えることができ、患者さんの役に立てたら嬉しいですね。例えば、カルシウムの吸収を助けるビタミンDってあんまり飲みすぎると、だるさや頭痛など出てくることがあります。それをある患者さんにやめてみませんかと提案したところ、「飲むのをやめたら治ったわ〜」といわれて嬉しかったのを覚えています。

新しい薬剤師像を求めて薬局を開業

現在は、どんなお仕事をされていますか。

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じゅんさん

今月(2021年11月)、独立しました。私はもともと独立志向があって派遣薬剤師をやったのも、いろいろな経験ができ、かつ短期間でお金を貯められるということがあります。
遅れて28歳で薬剤師になったので、ハンディを埋めようとハードな環境に身を置いた次第です。経営的にはまだまだですが、一つスタートすることができました。

おめでとうございます。面薬局で独立した理由について教えてください。

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じゅんさん

自分の考え方として医薬分業は違うんじゃないかという思いと、病院の下請けのような状態を避けたかったというのがあります。たくさんの思いを抱いての開業でしたが、まだまだ患者さんがたくさん来るというところには至ってないです。

今後、どのように活動される予定なのでしょうか。

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じゅんさん

どんどん外に出て行きたいと思っています。地域に参加して、顔を覚えてもらえる薬剤師・薬局になりたいです。

ありがとうございました。メッセージや、これからの薬剤師について一言お願いします。

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じゅんさん

他にたくさん頑張っていらっしゃる薬剤師の方がいる中で、私はあんまり偉そうに言える立場ではないのですが…。

こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、実は私、薬剤師なんていらないんじゃないか、と感じたことがあります。今までの薬剤師のやり方、あり方を考えてみたほうがよい時期にきているのかもしれません。これからは、新しい薬剤師像が求められると思います。どんどん新しいあり方が出てくるんじゃないですかね。

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じゅんさん経歴

薬剤師。近畿大学4年生最後の年を卒業後、自分を見つめ直す旅に出る。予備校に1年通学し猛勉強を経て、第100回国家試験合格。大手から中小の調剤薬局で勤務し、派遣薬剤師として5年経験後、独立。

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井手 綾子
いで あやこ

福岡県生まれ。地方のフリーペーパーの編集を経験し、編集長となる。フリーランスとなってからは、全国紙や地方紙、webなどの編集・執筆を行う。取材経験は20年超、取材人数1000人以上。自分の闘病経験・治験を受けた経験から、医療関係、医薬品関係などの執筆に力を入れている。

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