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2足の草鞋を履く薬剤師

更新日: 2022年1月15日 井手 綾子

「薬剤師×発信」面調剤で自分自身の理想を目指す

「薬剤師×発信」面調剤で自分自身の理想を目指すの画像1

現在、4店舗を経営する代表として忙しい毎日を過ごしているそーえさん。
代表の立場から、学生の頃から思い描いていた薬剤師というお仕事についてうかがいました。
さらに自身の経営など経験したことをブログで発信しています。活動の幅を広げる意図や求められる薬剤師について語られています。

大学生の頃に考えた面調剤薬局の経営を実現

さっそくですが、これまでの経歴や活動について教えてください。

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そーえさん

私は薬剤師免許取得後、製薬会社でMRとして働いていました。もともと薬局経営には興味はあったのですが、大学生の頃は私が理想としていた面調剤がメジャーではなく、MRとして医師に提案することが私の薬剤師の理想に近いのではないかと製薬企業への就職を選びました。

でも実際に働いてみると、患者情報を持たないMRからの提案には限界を感じました。さらに、MRの情報提供等に関する規制も最近は大きくなり、自分が描いたMRをするのは難しいと感じるようになりました。そこで、以前から興味があった面薬局をスタートした次第です。

学生の頃からということは、何かきっかけがあったのですか。

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そーえさん

きっかけというか、反骨心のようなものです。僕は薬剤師免許を取る勉強の中で、薬剤師ができることは多いと感じていました。薬剤師もドクターと同じで人を集められるのではないか、と。

でも、自分が面調剤をやりたいと言った時「薬局は病院のドクターからもらった処方を出すだけだから」という人ばかりでした。ずっとこれが心の中で引っかかっていて、自分のプラン・考えは間違えていないという証明がしたかったのです。

髪を切るなら相性の合う美容師さんを目指してお客さんが集まる、美味しいものを食べたいなら好きな料理を目指してレストランにお客さんが集まる、というのが基本的な考えだと思います。薬局も美容院やレストランのように、そこにしかないものを提供できればファンが集まると思っていました。

面調剤薬局の経営で大変だったことを教えてください。

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そーえさん

私の環境は、薬局の環境としては最低かもしれません(笑)。というのも、うちの薬局から一番近くにあるクリニックは、院内調剤なのです。そのため地域の方々は、今まで薬局を体験したことがない方が多く、まずは薬局を周知するというのが、第一のハードルでした。

そこでお薬相談会や、子供にも興味を持ってもらえるよう薬局体験会など、イベントを徹底してやりました。大々的に行うことで、薬局に何も持たずに入っても大丈夫ですよ、変な人ではないですよというのを知ってもらうことからスタートしましたね。

医師に敬意を持って接することでよい関係を築ける

MRのお仕事では医師との関係を大事にされていたと思いますが、いかがでしょう。

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そーえさん

医師とお話させていただくと、やはり医師は知識の量、考えの深さ、倫理的なところも含めて、すごいと思います。そのため敬意を持って接するようにしています。

医師と接するなかで、疑義照会のコツなどがあれば教えてください。

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そーえさん

疑義照会も確かに面倒なものもありますね。ただ、私の場合は面調剤なので、医師とのコミュニケーションの時間は門前薬局と比較すると限られています。そのためにも疑義照会や情報提供文書は非常に大切にしています。今後の治療のために患者の情報を教えて欲しいといった時は、「後からこの患者さんで聞きたいことがあるので、アポイントの時間もらっていいですか」や「ファックスでやりとりさせてください」と医師に相談をしています。

忙しい中で色々言われると先生も不機嫌になるのは自然なことで、相手に合わせて敬意を払いながらやればプレッシャーを感じることはないですね。

看取りを支えた患者さんの家族からの感謝の言葉

2019年からは、がん末期在宅もされているそうですね。

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そーえさん

はい。もともとがん末期在宅に興味はあったのですが、どういう形で関われるのか、最初はつかめませんでした。でも、在宅に特化された先生のところに話を聞きに行くうちに、そこから別の先生を紹介いただいたり、ケアマネさんから患者さんを紹介していただいたりして、広がっていきました。

思い出深い患者さんや、薬剤師を続けていてよかったと思うことはありますか。

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そーえさん

最近、亡くなった患者さんのことですね。この方は癌末期ではないのですが、僕が最初に在宅に関わった患者さんで100歳を超えた方でした。僕も初めての在宅の患者さんだったので、手探りでのスタートで、本当に役に立っているのかなと疑問に思ったこともあります。

それでも6年在宅を続けて、亡くなってしまわれた。しばらくすると、ご家族の方が薬局に来られて「家で家族を看取るのはすごく大変なことだよ、と周囲の人に言われていたけれど、私は病院の先生や薬剤師さんが定期的に来てくれることで、すごく支えられていたんです」とおっしゃってくれて。やっていてよかったと、心から思いました。

ご家族が一人でも気が楽になった、話を聞いてくれてよかったなど、医療の本質ではないかもしれませんが、自分がしたことで誰かが助かったと思ってもらえたのなら嬉しいことです。ここに薬局があってよかったと感じてもらえて、僕も本当によかったと思っています。

「独立したい」と思う人を後押しできるようブログで発信したい

ブログを始めたきっかけを教えてください。

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そーえさん

MRの頃は週何回かプレゼンする機会があり、さらにプレゼン大会と称して仲間内で好きなことなど上手に伝える練習を定期的にしていました。薬剤師になってからはプレゼンの機会が少なくなり、伝えることが下手になってしまうと感じていました。言いたいことを伝える力は薬剤師としても重要だと思っています。医師や看護師、ケアマネ、患者に伝える仕事なので、この力が不十分にならないことが理想です。

私のプレゼンはオリジナリティがあるというより、自分の伝えたいことを暗記して行っていたので、どちらかというと書くことに近い方法でした。この方法を使えば、ブログで自分の経験を誰かに向けてプレゼンできると思ったのがそもそものきっかけです。

実際にブログを始めてみると文章を書くだけでなく、イラストを作るなど色々な工程があることが分かりました。ブログで練習することで、いろんなソフトに触れることができ、実業務でも目を引くデザインなどを意識するようになりました。

発信すること、書くこと、目を引くデザインにすることなど、まさにプレゼンをしている感覚です。

ブログを続けていくなかで、これからのビジョンなどはありますか。

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そーえさん

面調剤でスタートした頃は、「面調剤の経営は難しい」とよく言われました。実際、調剤薬局が6万とある中で面薬局は1割にも満たないといわれています。

それで一歩踏み出せない方も多いと思うので、面薬局でも経営できるというポジティブな発信をしたいですね。僕は、面調剤は本当によいと思っています。時間が取れる、患者さんは自分のことを好きで来てくれる方ばかり、ドクターとの変なつながりも持たなくていい。変なというと語弊があるかもしれませんが、しがらみもないので自分の意見を伝えることも気負いすることなくできます。

僕が発信することで、これから薬剤師を目指す方や独立を目指す方が「面調剤って面白そう」と思ってくれれば嬉しいですね。

薬剤師の可能性を自分で開いていこう

最後に、メッセージをお願いします。

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そーえさん

独立すると自分がやっていることも即実績につながってきます。もし独立したいという思いがあるのなら、こういう薬局にしたいという信念を強く持って、それに向かって勉強していれば最終的に実績につながっていくと思います。そこを大切にして、薬剤師の可能性を自分で開いていってください。

もちろん独立は簡単ではないですが、嫌な仕事だと思いながら続けるのももったいないので、自分の理想の薬剤師像があるなら、これからは独立するという選択肢も持っておくと良いかもしれません。そのなかに「面調剤」という選択肢も新しく加えてもらえるように発信したいと思います。最初はあまり難しく考えず、色々な人と連絡を取ってやってみてください。

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そーえさん 経歴

薬剤師。製薬会社でMRとして働き、30歳を機に薬局薬剤師に転職。現在は、調剤薬局4店舗を経営し、癌末期在宅などにも携わる。ブログやTwitterなどで、面調剤薬局の魅力・独立などについて発信している。
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井手 綾子
いで あやこ

福岡県生まれ。地方のフリーペーパーの編集を経験し、編集長となる。フリーランスとなってからは、全国紙や地方紙、webなどの編集・執筆を行う。取材経験は20年超、取材人数1000人以上。自分の闘病経験・治験を受けた経験から、医療関係、医薬品関係などの執筆に力を入れている。

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