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2足の草鞋を履く薬剤師

更新日: 2022年1月28日 井手 綾子

薬局アワード受賞から6年「薬剤師×講演」

薬局アワード受賞から6年「薬剤師×講演」の画像1

「第1回 みんなで選ぶ薬局アワード2017」で受賞したヒルマ薬局で活躍する2代目比留間榮子さんと孫の4代目比留間康二郎さん。創業90年以上歴史のあるヒルマ薬局が地元で長年愛される理由、患者さんとの関係性など、おふたりに幅広く語っていただきました。今回は前編として比留間康二郎さんにインタビューしています。

母や祖母を助けるために薬剤師の道を決心

はじめに、薬剤師になるまでの道のりを教えていただけますか。

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康二郎さん

小学生の時は、薬剤師になろうとは思っていませんでした。ただ、お店にいるスタッフと学校帰りにお店で遊ぶのが楽しくて。親には「仕事の邪魔をするな」と怒られましたが、お店にいるのが楽しいという環境でした。

でも、中学1年生のときに父親が倒れてしまい、母と祖母でお店を切り盛りすることになり…。父が倒れる直前に小豆沢店が出来上がっていたので、祖母と行き来をしているのを見て大変そうだというのが子供心にありましたね。それから薬剤師になりたいというより母や祖母を助けたい、楽をさせたいという思いがあって高校生のときに薬剤師という道を決めた次第です。

榮子先生と一緒に薬局をどのように切り盛りされていますか。

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康二郎さん

榮子先生は98歳ですが、週2回お店に立っているので、朝と夜の送り迎えなどをしています。本店は兄と母が経営しているので、それぞれの店舗でお互いに任せっきりという感じです。

榮子先生からどのように教わってこられたのでしょうか。

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康二郎さん

榮子先生からは、薬局に来てくださることに感謝を込めて対話をすることで、最大のサービスを提供するということを教わりました。

医療はどんどん進化していくので、お薬に関しては自分たちが伝えることが多い気がします。患者さんに対する姿勢、経営の理念・思いなどは試行錯誤のなかで身についてきました。

「みんなで選ぶ薬局アワード」で語った夢の実現

「みんなで選ぶ薬局アワード」拝見しました。「必要なのは薬じゃなくてあなたの夢」というテーマでしたね。スタッフの夢だったお花の教室も薬局内で実現されたとか…。

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康二郎さん

はい。私自身、スタッフ、薬局に来られる方の夢の実現に向けた話をさせていただきました。フラワーアレンジメント教室は、今でも開催しています。こんなふうに夢を描き、実現することが生きがいにもなるという内容でした。

またヒルマ薬局を最高の薬局にするために、みなさんの夢に耳を傾け、薬局に来られる方と共にドリームマップを作り一緒に夢を叶えていく。そんな薬局をつくりたいと日々スタッフや榮子先生たちと精進しています、というお話をさせていただきました。

今もみなさんで夢の実現を続けていますか。

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康二郎さん

そうですね。自分の夢、スタッフや家族の夢、たくさん叶えて来た結果が薬局アワードです。そこから6年くらい経ったと思うのですが、さらに新しい夢が出来て、次の夢に向かって挑戦しているところです。

あの舞台で発表させていただくことで、自分もまた次のステップに向けてスイッチも入りますし、後から振り返ったときに自分の立ち位置や原点に改めて帰れます。受賞させていただいてよかったなと思っています。

withコロナ時代の薬剤師だからこそ必要な患者さんとの関係

コロナが流行っている中、お店ではオンラインは取り入れていますか。日頃のお仕事などについて教えてください。

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康二郎さん

患者さんとは対面がほとんどです。コロナだからという特別なことはなく、こんな時代だからこそ日頃からの自分たちの活動が大事だという気はしますね。

日常の対人業務では、榮子先生が親身になってお話をうかがっています。「薬だけの話だけじゃなく、生活の部分まできちんとフォローしていくことで信頼関係ってできていくのよ」といつも榮子先生がおっしゃっていて、それを地道に行っています。

長年薬局を経営されていて、忘れられない方もいらっしゃるのでは?

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康二郎さん

もちろん、たくさんいらっしゃいます。中でも足腰が悪い年配の女性が、ご自宅にお薬を持って帰られて、そのあと車椅子を押してじゃがいも1kgほどを届けてくださったことは嬉しかったです。また患者さんが亡くなったとき、ご主人や子供さんなどご家族がわざわざ連絡してくださるのも嬉しいですね。

榮子先生に至っては、一人暮らしの方から「私が亡くなったら、お金はあなたに託すわ」と、現金を知らない間に渡されてどうしよう?となったこともあるんですよ。

お客さまの夢を大切にした薬剤師・薬局に

新しくやりたいこと、薬剤師として目標があれば教えてください。

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康二郎さん

自分の目標は、夢を大切にすることです。その目標から、患者さんにもどう生きたいのか、どう死にたいのか、死ぬまでに何がしたいのかの夢を実現していただきたいと思っています。そのために治療をどのように頑張るのかなど共有して、薬剤師・薬局として関わりたいですね。

新しいこととしては、性教育やLGBTにつながる人権活動などをやっています。そこに薬剤師が必要なのかいう方もいらっしゃいますが、どちらも病気になった時にお薬が必要なので。事前に心理的な部分でフォローしたいと、全国あちこちで講演しています。SNSで発信することでの講演依頼もありました。

SNSで発信もされているのですね。

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康二郎さん

はい。ほかの薬剤師さんともつながれますし、Twitter、Instagram、Facebookなど全部取り入れています。薬剤師としてではなく、個人として発信していることのほうが多いのですが、結果として薬剤師ということを知っていただくことで、相談や講演も増えてきています。なので、世界を狭めないで一人の人間として出ていくことがSNS上では必要かと思っています。

ありがとうございました。最後にメッセージをお願いします。

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康二郎さん

この前もTwitter経由で、福祉サロンの方から薬剤師としての性教育の講演依頼がありました。SNSだけではなく、地道に自分の道・可能性を信じて、やっていけば必ず結果はついてくると思います。

それから、榮子先生が「時間はくすり」という書籍を出版したのでよろしくお願いします(笑)。

後編につづく(2月中旬公開予定)

薬局アワード受賞から6年「薬剤師×講演」の画像13

比留間康二郎さん 経歴

東京薬科大学卒業。日本大学医学部附属板橋病院、国立成育医療研究センターを経て、ヒルマ薬局に勤務。「第1回 みんなで選ぶ薬局アワード2017」では、「必要なのは薬じゃなくてあなたの夢」というテーマで発表を行う。
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井手 綾子
いで あやこ

福岡県生まれ。地方のフリーペーパーの編集を経験し、編集長となる。フリーランスとなってからは、全国紙や地方紙、webなどの編集・執筆を行う。取材経験は20年超、取材人数1000人以上。自分の闘病経験・治験を受けた経験から、医療関係、医薬品関係などの執筆に力を入れている。

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