オンライン服薬指導を知ろう!4つのタイプを解説
2020年9月1日より、ついに本格スタートする「オンライン服薬指導」。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月10日に時限的・特例的なオンライン服薬指導が可能になっており、すでに対応中という方もいると思います。今後、オンライン服薬指導が拡大するのは確実。しかし、なかには「まだオンライン服薬指導をやったことないし、周囲にも対応している薬剤師がいないから少し不安…」という薬剤師も多いのではないでしょうか。
本シリーズでは、先の国家戦略特区でのオンライン服薬指導を経験した「きらり薬局」薬剤師の原敦子さんに、オンライン服薬指導の概要と、経験から感じたメリット・デメリットなどについておうかがいします。
お話をうかがった方
原敦子さん
きらり薬局 名島店勤務(2013年9月入社)総合病院勤務時代に「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を取得。緩和ケアを必要とする患者に接するうちに、「在宅医療の環境を整えたい」と2013年に転職。現在は後輩の育成にも力を入れている。
原さんの在宅医療に関するインタビュー記事はこちら
オンライン服薬指導とは?
「オンライン服薬指導」とはPC、スマートフォン、電話などを利用して、患者さんに対面せずに薬剤師が服薬指導すること。これまで、薬剤師は必ず患者さんに対面して、服薬指導することが義務付けられていましたが、2019年12月、改正薬機法によりオンライン服薬指導が認められました。オンライン服薬指導を導入することで、医療機関の少ない地域の医師や薬剤師といった医療従事者の身体的・時間的な負担の軽減、患者宅への訪問回数を減らすことで医療従事者への感染リスクを低減する、といった効果が見込めます。
オンライン服薬指導は、以下の4つの「基本的な考え方」に基づいています。
- 薬剤師と患者との信頼関係
- 薬剤師と医師又は歯科医師との連携確保
- 患者の安全性確保のための体制確保
- 患者の希望に基づく実施と患者の理解
これらを満たしたうえで、患者が安全に薬物治療にのぞめるようサポートするのがオンライン服薬指導です。
参考資料:
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)」(厚生労働省)
オンライン服薬指導の4タイプを紹介
2015年に発表された日本再興戦略で「テレビ電話による服薬指導を可能にする」と明記され、2018年度診療報酬改定から、国家戦略特区の一部でオンライン服薬指導の実証実験が始まりました。そして現在、オンライン服薬指導は4つのタイプがありますので、それぞれ簡単に説明します。
①遠隔服薬指導
国家戦略特区の一部でスタートした実証実験で、「離島・へき地」「離島・へき地以外」で条件が若干異なります。1「離島、へき地に居住する患者」、2「遠隔診療が行われている患者」、3「対面での服薬指導が行われる患者」に限られています。
参考資料:
「国家戦略特区における離島・へき地以外での遠隔服薬指導への対応について 」
②0410対応
新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、2020年4月10日からスタートした時限的な緩和措置。
参考資料:
「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて 」
③外来オンライン服薬指導
④在宅オンライン服薬指導
③と④が、2020年9月1日からスタートするオンライン服薬指導です。次の章で詳しく紹介します。
オンライン服薬指導の算定要件
2020年9月から実施可能となるオンライン服薬指導は、③外来オンライン服薬指導と④在宅オンライン服薬指導の2タイプです。
③外来オンライン服薬指導とは、オンライン診療時の処方箋に基づくもの、④在宅オンライン服薬指導とは、在宅訪問で対面診療した時の処方箋に基づくものです。オンライン診療で発行された処方箋についてはオンラインでの服薬指導が可能。対面診療で発行された処方箋については、薬剤師もしくは医師が患者宅を訪問する必要があります。
外来オンライン服薬指導※(オンライン診療時の処⽅箋に基づく調剤時)
以下の場合の服薬指導をオンラインで実施するもの
- 対⾯服薬指導を⾏ったことのある患者に、
- 患者のオンライン服薬指導の希望を踏まえ、
- 当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について
- オンライン診療による処⽅箋に基づき調剤を⾏う
在宅オンライン服薬指導※(在宅訪問診療時の処⽅箋に基づく調剤時)
以下の場合の服薬指導をオンラインで実施するもの
- 患家で対面服薬指導を⾏ったことのある患者に、
- 患者のオンライン服薬指導の希望を踏まえ、
- 当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について
- 訪問診療による処⽅箋に基づき調剤を⾏う
参考資料:
「医療におけるITCの利活用について 」(厚生労働省)
③④いずれの場合でも
- 原則として同一の薬剤師が行う
- 患者に対して日頃から継続して対面服薬指導を行う
- 服薬指導計画を策定する
の3つの要件を満たす必要があります。
服薬指導計画には「薬剤の種類、授受方法」「オンラインと対面を組み合わせる」「実施できない場合の想定」「緊急時の対応方針(医療機関との連絡や搬送方法)」などが必要です。また、オンライン服薬指導実施についての患者側の希望を確認し、オンライン服薬指導の利益・不利益のほか、服薬指導計画の内容について患者に説明する他、服薬指導計画を処方医などに共有するといった対応にも配慮しなければなりません。
診療報酬改定においては、オンライン服薬指導は「薬剤服用歴管理指導料 4 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合」43点(月1回まで)が規定されています。
オンライン服薬指導の流れを解説
まず、医師がオンラインで診療します。オンライン診療で出された処方せんは特定処方せんと呼ばれますが、様式は一般のものと変わりません。この処方せんはFAXやメールで薬局に届きます。ただし、処方せん原本が薬局に届かないと患者さんに薬を配送できないため、患者さんの手元に薬が届くまでに1日〜2日かかります。
0410対応の服薬指導は、電話や情報通信機器を使用します。「きらり薬局」では、電話での服薬指導が9割。服薬指導の内容は、対面とほとんど変わりませんし、テレビ電話などを使う場合は、患者さんの顔色やむくみなどもチェックできます。
配送は、普通の宅急便を利用している薬局もけっこうあるようです。「きらり薬局」では、薬の温度管理や紛失のリスク、費用負担などを加味し、非薬剤師スタッフが患者さんの自宅に配送もしくは薬配達のスペシャリストである薬品卸業者に委託しています。
次回は、実際にオンライン服薬指導のメリットやデメリットについて詳しくご紹介します。