今さら聞けない! オンライン服薬指導の基本
「オンライン服薬指導」導入の背景
日本は超高齢化社会を迎え、高齢者人口と訪問診療を受ける患者が大幅に増加しています。これにより在宅医療の需要が高まると同時に、労動力人口の不足が表面化してきています。
近年の情報通信技術の飛躍的な進展と急速な普及により、オンラインでも会話がスムーズに行えるようになってきたため、この現状を打開するための策として国を挙げてオンライン診療、オンライン服薬指導を進めていくこととなりました。また、COVID-19の感染拡大により医師のオンライン診療や電話対応による処方できるようになりました。これを受けて薬も郵送による対応が可能となったことで、オンライン服薬指導をより加速させる流れとなっています。
オンラインでの患者対応により、医師や薬剤師の働き方改革の推進、生産性の向上を図ることができます。これまでは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規程に基づき、薬剤を販売または授与する場合には、薬剤師が対面で服薬指導を行う必要がありました。しかし、令和2年9月1 日に施行された薬機法の改正によりオンライン服薬指導が新たに規定され、その具体的な要件について示されました。
オンライン服薬指導の要件
通信手段
映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法である必要があります。
医師または歯科医師との連携確保
処方箋を交付する医師または歯科医師と、服薬状況のフィードバック等を行うなどの連携を行う必要があります。連携を円滑に行うために服薬指導計画を策定することとされています。
服薬指導計画書に記載する事項は以下のURLをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000650601.pdf
(服薬指導計画は、当該計画に基づき、行った直近の服薬指導の後、3年間保存する必要があります)
緊急時の体制確保
患者急変などの緊急時等においても患者の安全を確保するため、処方医等との連絡体制を確保しなければなりません。また、オンライン服薬指導を中止した場合に、速やかに対面による服薬指導に切り替えられるよう、適切な体制整備が求められます。
薬剤師と患者との信頼関係
オンライン服薬指導を行う薬剤師は、対象とする患者に対して日頃から対面による服薬指導を行なっていて、その患者の服薬状況を継続して把握・管理している必要があります。つまり、患者との信頼関係があってこそオンライン服薬指導は可能であるということになります。
また、現段階では同一の薬剤師が対面による服薬指導を適切に組み合わせて行うこととされており、時々は対面にて指導するように促されています。
ただし、オンライン服薬指導しか行わない薬剤師が今後やむを得ず発生する場合は、対面にて服薬指導をする薬剤師と連携が図れていれば可とされています。
患者の希望に基づく実施と患者の理解
あらかじめ、オンライン服薬指導の実施に関する患者側の希望を確認しなければならなければなりません。対面による服薬指導と比べ、患者の状態に関する情報が限定されることなど、オンライン服薬指導の利益・不利益について十分に説明し、その理解を得なければなりません。
オンライン服薬指導を利用することで、オンライン診療と組み合わせれば通院時の交通費はかからなくなるものの、通信にかかるコストや医薬品の配送費がかかるため、患者負担の差異が生じることは事前に確認しておくべきでしょう。
なお、患者に重度の認知機能障害がある等の理由によって薬剤師と十分に意思疎通を図ることができない場合は、患者の家族や介護者を患者の代理人に対して服薬指導を行うことができます。
処方の内容(同一処方またはこれに準じる処方)
いわゆるDo処方と、同一成分・同一効能の先発品と後発品の変更など、処方内容が大幅に変わるわけではない場合にかぎり、オンライン服薬指導は実施できます。
プライバシーの管理
現段階では、薬剤師がオンライン服薬指導を行う場所は調剤を行った薬局内でなければなりません。その場所は、対面による服薬指導が行われる場合と同程度にプライバシーが保たれるような物理的に外部から隔離される空間である必要があります。
実際の流れ
オンライン診療をした場合を例にあげて説明していきます。
- オンライン診療の後、処方箋がファックスなどを利用して薬局に送られてきます。
- 通常の処方箋と同様に処方監査を行い、薬歴などを確認しつつ、必要に応じて疑義照会を行います。
- 事前に、患者さまにオンライン服薬指導の予約をしてもらう、あるいは電話にて薬局と患者双方がオンラインシステムにログインし、オンライン服薬指導を実施可能な通信状況であるかどうかを確認します。
- オンラインで服薬指導を行います。
- 調剤と最終監査を行い、郵送を行います。
※システムや予約などには薬局によって多少の違いが生じる可能性があります
問題点と課題
オンライン服薬指導は、薬局の開局時間内に行う必要があるので、夜の遅い時間には対応できません。仕事終わりで薬剤師の指導を受けたい場合などには対応しきれない可能性があります。
オンライン服薬指導は、高齢者と在宅療養者の増加に伴い始まったもの(※最初に紹介したオンライン服薬指導導入の背景)のため、高齢者に対して行うことが多くなると考えられます。その際、ネット環境や設備がそもそも患者宅にて整っていなければ行うことができません。また、高齢者はシステムの立ち上げやログイン、操作に手間取ることも予想されます。あるいは、予約の時間を忘れてしまうこともあるかもしれません。
そのため、これらの課題や問題点をいかに解決できるかが、今後オンライン服薬指導を推進していく上で重要になっていくと思われます。
その一方で、服用している薬が多く管理が大変な方に対し、オンライン服薬指導を通して実際の管理状況や使用方法の確認が行える、自身の病気を知られたくない方はプライバシーが守られた自宅で相談することもできる、といったメリットもあります。
このように、オンライン服薬指導を今後実施していくには様々な問題もありますが、その特性から見えてくる新たな可能性や潜在的な需要もたくさんあります。患者さま各々の状況にあわせたオンライン服薬指導を実施していくこと、オンライン服薬指導で活躍できる薬剤師が増えることが、これからの薬局業界にとって必要不可欠と言えます。