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よくわかる!オピオイドの正しい使い方

更新日: 2025年7月28日 杏 優花

「中毒になる」は勘違い!「オピオイド」の誤解にどう向き合うべき?

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オピオイドを処方された患者から「中毒にならない?」「寿命が縮まるのでは?」などの質問をされた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

がんの痛み治療を成功させるためには、患者のオピオイドに対する誤解を解き、患者と医療者で、共通の目標に向かってともに治療を行うことが大切です。

また、痛みの強さに応じた適切な薬剤を選択することは、がんの痛み治療の基本となります。今回は、がんの痛み治療の基本となる、オピオイドに対する誤解への対応、痛みの評価と治療目標、WHO方式3段階除痛(鎮痛)ラダーについて解説します。

オピオイドに対する誤解へどう対応すべき?

一般市民や患者のオピオイドに対する認識について調査した結果、約30~40%に「中毒になる」「寿命を縮める」「精神症状の副作用がある」といった誤解や懸念が認められたと報告されています1)

オピオイドの服薬指導の際には、患者の抱えているこのような誤解や懸念を解消し、服薬アドヒアランスを向上させることが何よりも大切です。患者が正しくオピオイドを服用しない限り、疼痛治療の成功はないからです。

以下に、よくみられる誤解や懸念とその説明例を紹介します1)2)

誤解・懸念 説明例
麻薬中毒になるのでは? 「医療用麻薬が、痛みの治療を目的に適切に使用された場合、
精神依存(麻薬中毒)を起こすことはありません。
理由は、痛みのない健康な人が麻薬を使用した場合、ドパミン
という快楽物質が働き精神依存を生じる場合がありますが、
痛みのある患者さんでは、麻薬を使用してもドパミンが働か
ないためです。
医師の指示通りに正しく医療用麻薬を使用した場合、麻薬中毒
にはなりませんので、どうぞ安心してご服用ください」
寿命が縮まるのでは? 「医療用麻薬の使用量と予後には相関性がないことがわかって
います。むしろ、痛みをとることによってQOLが向上し、生存
期間が延長することなども報告されています。
寿命が縮まったり、死期が早まったりすることはありません
ので、安心してご服用ください」
頭がおかしくなるのでは? 「がん患者さんの中には、しばしばせん妄(つじつまの
合わない発言をする、幻覚が見えるなど)の症状を生じる方
がいます。せん妄は、肺炎などの感染症や発熱、痛み、脳腫瘍
や脳転移、薬剤の影響などさまざまな要因で発生します。
医療用麻薬が原因で発生することもありますが、頻度としては
低いです。仮に生じても、医療用麻薬の量や種類の変更、せん妄
を改善する薬の使用などで、症状の改善が期待出来ます」
薬が効かなくなるといけない
ので、痛みはなるべく我慢
したほうがよいのでは?
「痛みを我慢すると、食欲が低下したり、不眠になったり、
動くのが億劫になったりと、日常生活に支障が出ます。
痛みを我慢することで、痛みが治りにくくなる場合もあります。
また、医療用麻薬を使うことで、痛め止めが効きにくくなること
はありません。痛みそのものが強くなった場合には、痛み止めの
量を増やす必要が出てくるかもしれませんが、量の調整や種類の
変更で、ほとんどの痛みはやわらぎます。
痛みは決して我慢せず、十分な量の痛み止めを使い、積極的に
痛みをとることが、安定した生活を送るためにも大切です」

オピオイドに関する誤解や懸念に至った背景は、患者個々で異なります。

例えば、「SNSでオピオイドは死を早めるという情報を見た」場合と、「家族がオピオイドによる疼痛治療を開始した直後に亡くなった体験がある」場合とでは、同じ「寿命を縮めるのでは?」という懸念であっても、対応を変えたほうがよいでしょう。

前者であれば、麻薬の使用量と予後には相関がないという事実をお伝えするだけで納得してもらえるかもしれません。

後者の場合は、医学的事実の説明とともに、亡くなった家族への罪悪感やオピオイドへのトラウマを払拭するアプローチが必要となるでしょう。

患者の訴えにしっかりと耳を傾け、その認識に至った経緯を尊重したうえで、正しい情報を与えることが大切です。

痛みの評価と治療目標について

痛みは患者自身にしかわかりません。痛み治療を成功させるためには、患者自身にしかわからない痛みを、医療者に具体的に伝えてもらうことが大切です。

痛みの強さの評価には、Numerical Rating Scale (NRS) やVAS(Visual Analogue Scale)、Face Pain Scale (FPS)の使用が有用です。

「中毒になる」は勘違い!「オピオイド」の誤解にどう向き合うべき?の画像1
「中毒になる」は勘違い!「オピオイド」の誤解にどう向き合うべき?の画像2

「痛みの教育コンテンツ」/厚生労働省科学研究「痛み」に関する教育と情報提供システムの構築に関する研究
Ver1.03 2013年11月より抜粋

例えば、起床時のNRSが7だった患者が、オピオイドを開始後、起床時のNRSが3になった場合を考えてみましょう。痛みの治療は成功したといえるのでしょうか。

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杏 優花
きょう ゆたか

薬科大学大学院修士課程修了後、病院薬剤師としてさまざまな診療科を経験。緩和ケアチーム発足時、専任薬剤師として活動したことをきっかけに、緩和医療の世界へ。約11年間緩和医療に従事し「心にも身体にも優しい医療」を実践。現在は3歳の娘の育児に奮闘中の母。長年の臨床経験で培われたリサーチ力、共感力をベースに、読者が今日(杏)も心豊か(優花)に過ごせるよう、正確かつ心に寄り添う文章の執筆をこころがけています。

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