オピオイド等価換算表付き。オピオイドスイッチングの基本と実践

「オキシコドン徐放錠からフェンタニル貼付剤に変えたいけれど、変更のタイミングや用量を教えてほしい」。医師からのこのような質問をされ、すぐに答えられずに戸惑った経験はありませんか。
「オピオイド」による疼痛治療では、副作用の改善や鎮痛効果の増強などを目的に、投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更する「オピオイドスイッチング(オピオイドローテーション)」が行われることがあります。
オピオイドスイッチングの際は、切り替えのタイミングや換算方法について相談を受けるなど、薬剤師の専門性が求められる場面が多々あります。そこで今回は、オピオイドスイッチングの注意点について徹底解説します。
「オピオイドスイッチング」の目的を明確にしよう
オピオイドスイッチングを行う際は、その目的を明確にし、医療者・患者間で共有することが大切です。オピオイドスイッチングの目的を患者に説明することで、変更後のオピオイドを安心して服用してもらえるでしょう。
オピオイドスイッチングの目的は主に以下の3つです。
- 副作用の改善
- 鎮痛効果の増強
- 投与経路の変更
以下に、それぞれについて具体例を挙げて解説します。
1、オピオイドの副作用の改善
投与中のオピオイドやその代謝物による副作用が、オピオイドスイッチングにより改善する場合があります。例として以下が挙げられます。
1)腎機能障害患者にモルヒネを使用していた場合
腎障害時には、モルヒネの活性代謝物であるモルヒネ-6-グルクロニドが蓄積し、強い眠気や呼吸抑制が引き起こされる場合があります。このようなケースでは、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニルへの変更が有効な場合があります1)。
2)便秘や悪心・嘔吐が問題となる場合
オピオイドによる便秘や悪心・嘔吐がコントロールできない場合、オピオイドスイッチングが選択肢のひとつとなります。モルヒネからオキシコドンまたはフェンタニルに、あるいは、オキシコドンからフェンタニルに変更することで、悪心・嘔吐が臨床的に改善したとの報告があります2)。μ1受容体選択性が高いフェンタニルへの変更は特に有効と考えられます(前回記事参照)。
ただし、オピオイドスイッチングを行う前に、十分な副作用対策が行われているか必ず確認しましょう。日本緩和医療学会のガイドラインでは、オピオイドによる悪心・嘔吐に対して、「制吐薬を投与しても緩和しないとき」という条件付きでオピオイドスイッチングが推奨されています1)。
3)眠気が問題となる場合
モルヒネやオキシコドンで眠気が強い場合、フェンタニルへの変更が有効な場合があります3)。
2、オピオイドの鎮痛効果の増強
オピオイドは、副作用がなければ、鎮痛効果が得られるまで増量することが基本です。まずは十分な量まで投与量を増量しましょう。
オピオイドを十分に増量しても予測される鎮痛効果が得られない場合には、オピオイドスイッチングが検討されます1)。
ただし、オピオイドスイッチングを行う前に、オピオイド以外の鎮痛薬が適切に使用されているかを必ず確認しましょう。NSAIDsや鎮痛補助薬などが有効な痛みに対してオピオイドスイッチングを行っても、痛みが改善されず、患者からの不信感やオピオイドへの嫌悪感につながる恐れがあるからです。
どのオピオイドからどのオピオイドへの変更が有効かについて評価した研究はないため1)、各薬剤の特徴を理解し、最も適した薬剤を選択することが大切です(前回記事参照)。
3、オピオイドの投与経路の変更
オピオイドは経口投与が基本です。しかし、嚥下機能の低下や腸閉塞など、経口投与が困難となった場合、投与経路の変更が必要になります。同成分の注射剤に変更する場合など、投与経路のみの変更も、広義のオピオイドスイッチングに含まれます3)。
また、経口オピオイドからフェンタニル貼付剤への変更が選択される場合もあります。
「オピオイド」の正しい換算量を知ろう
オピオイドスイッチングでは、オピオイドの投与量の設定方法を正しく理解する必要があります。