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よくわかる!オピオイドの正しい使い方

更新日: 2025年10月17日 杏 優花

がん患者「突出痛」に対するレスキュー薬の選び方。持続時間に応じて選択しよう

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「レスキュー薬を飲むと眠くなるから、痛くても我慢している」。患者のこのような訴えに戸惑う人がいるかもしれません。オピオイドの疼痛治療では、レスキュー薬を効果的に使うことが治療成功の大切なポイントとなります。本記事では、突出痛の対処法とレスキュー薬の効果的な使い方、服薬指導のポイントを解説します。

がん患者の「突出痛」の種類と対処法を知ろう

痛みは、「1日のうち12時間以上持続する痛み」である「持続痛」と、「短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み」である「突出痛」に分けられます1)

突出痛はがん患者の約70%にみられ2)、突出痛のコントロール不良はしばしばがん患者のQOLを低下させます。

突出痛を上手にコントロールするためには、突出痛の特徴にあわせた治療を選択することが重要です。突出痛をその特徴に応じて以下のように分類すると、対策を考えやすいでしょう。

表1;突出痛の種類と対処法1)

体性痛 内臓痛 神経障害性疼痛 対処法
予測可能 体動時痛 嚥下、排尿時、排便時 姿勢や体動による神経圧迫、アロディニア ・痛みの出にくい動作方法の検討、コルセットの装着など
・予防的なレスキュー薬投与
予測不能 誘因がある 不随意な動きに伴う痛み
(咳、しゃっくり、ミオクローヌスなど)
蠕動痛(ぜんどうつう)、膀胱の攣縮など 不随意な体動による神経圧迫など ・迅速なレスキュー薬投与
・痛みの誘因の頻度を減少させるアプローチ(例:鎮咳薬の投与、消化管運動調律剤の投与)
誘因がない 特定できる誘因がなく生じる発作痛 迅速なレスキュー薬投与
定時鎮痛薬の切れ目の痛み 定時鎮痛薬の薬効の切れ目に出現する痛み 定時鎮痛薬の増量

がん患者の「突出痛」の持続時間に応じて最適なレスキュー薬を選択しよう

レスキュー薬として使用される「オピオイド」には、「短時間作用型オピオイド(short acting opioid、SAO製剤)」、「即効性オピオイド(rapid onset opioid、ROO製剤)」、「皮下・静脈内投与」があります。PCA*を使用して、レスキュー薬を自己投与する方法もあります。

PCA*:自己調節鎮痛法(patient-controlled analgesia)。通常、モルヒネなどの注射剤を静脈あるいは皮下からPCAポンプと呼ばれる機械を用いて24時間持続投与する治療法。PCAポンプのボタンを押すことで、あらかじめ設定された薬液量が投与され、レスキュー分の薬剤を患者自身で投与できる。

それぞれのレスキュー薬の効果発現時間と作用時間は以下の通りです。

表2;レスキュー薬の効果発現時間と作用時間3)

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杏 優花
きょう ゆたか

薬科大学大学院修士課程修了後、病院薬剤師としてさまざまな診療科を経験。緩和ケアチーム発足時、専任薬剤師として活動したことをきっかけに、緩和医療の世界へ。約11年間緩和医療に従事し「心にも身体にも優しい医療」を実践。現在は、薬局薬剤師、医療ライターとして活動しながら、一児の育児に奮闘中。長年の臨床経験で培われたリサーチ力、共感力をベースに、読者が今日(杏)も心豊か(優花)に過ごせるよう、正確かつ心に寄り添う文章の執筆をこころがけています。

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