がん患者「突出痛」に対するレスキュー薬の選び方。持続時間に応じて選択しよう

「レスキュー薬を飲むと眠くなるから、痛くても我慢している」。患者のこのような訴えに戸惑う人がいるかもしれません。オピオイドの疼痛治療では、レスキュー薬を効果的に使うことが治療成功の大切なポイントとなります。本記事では、突出痛の対処法とレスキュー薬の効果的な使い方、服薬指導のポイントを解説します。
がん患者の「突出痛」の種類と対処法を知ろう
痛みは、「1日のうち12時間以上持続する痛み」である「持続痛」と、「短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み」である「突出痛」に分けられます1)。
突出痛はがん患者の約70%にみられ2)、突出痛のコントロール不良はしばしばがん患者のQOLを低下させます。
突出痛を上手にコントロールするためには、突出痛の特徴にあわせた治療を選択することが重要です。突出痛をその特徴に応じて以下のように分類すると、対策を考えやすいでしょう。
表1;突出痛の種類と対処法1)
体性痛 | 内臓痛 | 神経障害性疼痛 | 対処法 | ||
予測可能 | 体動時痛 | 嚥下、排尿時、排便時 | 姿勢や体動による神経圧迫、アロディニア | ・痛みの出にくい動作方法の検討、コルセットの装着など ・予防的なレスキュー薬投与 |
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予測不能 | 誘因がある | 不随意な動きに伴う痛み (咳、しゃっくり、ミオクローヌスなど) |
蠕動痛(ぜんどうつう)、膀胱の攣縮など | 不随意な体動による神経圧迫など | ・迅速なレスキュー薬投与 ・痛みの誘因の頻度を減少させるアプローチ(例:鎮咳薬の投与、消化管運動調律剤の投与) |
誘因がない | 特定できる誘因がなく生じる発作痛 | 迅速なレスキュー薬投与 | |||
定時鎮痛薬の切れ目の痛み | 定時鎮痛薬の薬効の切れ目に出現する痛み | 定時鎮痛薬の増量 |
がん患者の「突出痛」の持続時間に応じて最適なレスキュー薬を選択しよう
レスキュー薬として使用される「オピオイド」には、「短時間作用型オピオイド(short acting opioid、SAO製剤)」、「即効性オピオイド(rapid onset opioid、ROO製剤)」、「皮下・静脈内投与」があります。PCA*を使用して、レスキュー薬を自己投与する方法もあります。
PCA*:自己調節鎮痛法(patient-controlled analgesia)。通常、モルヒネなどの注射剤を静脈あるいは皮下からPCAポンプと呼ばれる機械を用いて24時間持続投与する治療法。PCAポンプのボタンを押すことで、あらかじめ設定された薬液量が投与され、レスキュー分の薬剤を患者自身で投与できる。
それぞれのレスキュー薬の効果発現時間と作用時間は以下の通りです。