オピオイドの副作用「便秘」は早期&継続治療が鍵!対策薬の使い分け
オピオイドの三大副作用をご存じでしょうか。悪心・嘔吐、便秘、眠気がオピオイドの三大副作用といわれています。前回の記事では、オピオイドの三大副作用のひとつである悪心・嘔吐の対策について解説しました。今回は、オピオイドの副作用として、悪心・嘔吐とともに重要な「便秘」について取り上げます。患者のQOL向上のためには、便秘対策は疼痛コントロールに匹敵するほど重要です。オピオイドによる便秘の発現機序や対策のポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
オピオイドによる便秘の特徴を知ろう
まずは、オピオイドによる便秘の基本的な特徴を解説します。
便秘は、下剤を投与しない場合、オピオイド服用患者の約55~65%に発生すると報告されています1)2)。悪心・嘔吐の発生率に比べても高く、その対策の重要性がお分かりいただけるのではないでしょうか。
モルヒネによる便秘は、鎮痛に必要な用量の約1/50の低用量でも起こると報告されています3)。つまり、オピオイド投与開始直後の血中濃度が低い段階でも発生する可能性があるのです。
オピオイドの血中濃度が鎮痛用量に達していない早期の段階で便秘が生じると、患者は痛みと便秘の二重苦に陥ります。このような状態を避けるためにも、オピオイド投与開始初期から便秘対策を行うことが大切です。
また、悪心・嘔吐とは異なり、オピオイドによる便秘には耐性がほとんど生じないとされています4)。オピオイド投与期間中は、継続的に便秘対策を行うことが重要です。
日本緩和医療学会のガイドラインでは、オピオイドが原因で便秘のあるがん患者に対して、オピオイドの投与と同時に、または投与後に、下剤を定期投与することが推奨されています4)。
オピオイドによる便秘の発現機序とは?
オピオイドによる便秘の発現機序として、以下が挙げられます5)。
- 小腸から大腸における蠕動運動が低下し、内容物の通過時間が遅延することで、水分の吸収が促進される
- 肛門括約筋の緊張増加
オピオイドによる便秘は水分の吸収促進による便の硬化だけではなく、肛門括約筋の緊張増加によっても生じます。緊張した肛門括約筋から硬くなった便を排出することは非常に困難です。
オピオイドによる便秘の治療では、蠕動運動を促進する大腸刺激性下剤に加え、便を軟化させる浸透圧性下剤も併用するとよいでしょう。
オピオイドによる便秘に推奨される薬剤について
日本緩和医療学会のガイドラインでは、オピオイドによる便秘に対して、浸透圧性下剤や大腸刺激性下剤を使用することが推奨されています4)。また、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬の投与は、複数の下剤が投与されていても便秘が緩和されないときという条件付きで推奨されています4)。