OTCの酔い止め薬を薬剤師が選ぶポイント、副作用と使用回数で提案
秋の行楽シーズンには「乗り物酔い」の酔い止め薬の相談が増えます。初めての空の旅、長時間の船旅、細切れなバス旅行…人それぞれ色々な旅の内容に合わせて適切な酔い止め薬を案内するためには、薬剤師は薬の使い分けをどういった基準で考えれば良いのか、その基本的なポイントを解説します。
- 「第一世代の抗ヒスタミン薬」と「抗コリン薬(スコポラミン)」で、効果はほとんど変わらない
- 「第一世代の抗ヒスタミン薬」は眠気、「抗コリン薬(スコポラミン)」は口の乾きが問題になる
- 「乗り物酔い」の薬には、「服用回数」が1回、2回、3回のものがある。
OTC酔い止め薬の使い分け①:「副作用」の違いで選ぶ~眠気とトイレのトラブルを考える
現在日本で用いられている酔い止め薬には「第一世代の抗ヒスタミン薬」と「抗コリン薬(スコポラミン)」があります。いずれの薬もプラセボよりも高い効果が確認されていますが、各薬剤間で、明確な使い分けが必要なほどの効果の差はほとんど確認されていません1,2)。そのため、基本的に“どの薬を使っても良い”ことになります。
ただ、期待できる効果は同じでも、「第一世代の抗ヒスタミン薬」は眠くなりやすい、「抗コリン薬(スコポラミン)」は口が渇きやすい、という違いがある1,2)ため、この頻度の高い副作用が出ると困るかどうか、が提案の重要なポイントになります。
よくある副作用 | こんな人は避けた方が良い | |
第一世代の抗ヒスタミン薬 ・クロルフェニラミン ・ジフェンヒドラミン ・メクリジン |
眠くなる | 眠くなると困る (移動時間も楽しみたい) (細切れに移動しながらあちこち観光する) |
抗コリン薬 ・スコポラミン |
口が渇く | 水分摂取が増えてトイレが近くなると困る (自動車やバスで長時間の移動をする) |
たとえば、移動時間も家族や友人との会話を楽しみたい、車窓からの景色を楽しみたいという人の場合、眠くなりやすい「第一世代の抗ヒスタミン薬」の入った商品を選んでしまうと、移動時間ずっと眠くて何も楽しめないことになってしまいます。特に、秋の行楽シーズンに多い、“観光バスなどで細切れな移動をしながら色々な場所を巡るツアー”に参加する人の場合、「第一世代の抗ヒスタミン薬」では移動時間以外にも薬が効いていて、肝心の観光やショッピングの最中にも体がだるい、といった事態が起こる恐れがあります。
一方、「抗コリン薬(スコポラミン)」では口渇の副作用が現れやすい傾向にあります2)。人によっては、この口渇によって水をたくさん飲むことになりトイレが近くなる、といった問題に繋がるケースがあります。飛行機や新幹線ではあまり問題になりませんが、自動車やバス、ローカル線の電車のように気軽にトイレに行けないような移動手段を用いる旅の場合には、注意が必要です。