明日使えるOTC医薬品 提案のコツ

更新日: 2025年3月8日 児島 悠史

妊娠中でも使える湿布薬は?

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妊娠中の女性は、特に20週以降の中期~後期にかけて多くの痛み止めを使うことができません。そこで、「貼り薬なら大丈夫なのではないか?」と考えて湿布薬を使うケースはよくありますが、実は貼り薬であっても妊娠中に使えるものはごく一部に限られています。「使える薬がない」わけでも、「貼り薬ならどれを選んでも良い」わけでもないため、薬剤師がしっかりとフォローする必要があります。

☞この記事でわかること
  • 妊娠中には“使えない湿布薬”がたくさんあること
  • 例外的な、“妊娠中でも使える湿布薬”にはどんなものがあるか
  • 薬を販売する際にはどんな声掛けが必要か

「妊娠中でも貼り薬なら大丈夫」…ではない

基本的に、妊娠に気づいた時点でNSAIDsの使用は避けるのが無難です。NSAIDsは、“禁忌”の指定がある妊娠後期(28週以降)には、胎児の動脈管を狭窄させて心不全や肺高血圧症を起こす原因になりますが、“禁忌”の指定がない妊娠中期(20週以降)のタイミングでも、羊水を減少させて胎児の呼吸機能の発達に悪影響を及ぼす恐れがある1)からです。

こうした胎児への悪影響は、NSAIDs全般がもつシクロオキシゲナーゼ阻害作用によるものだとされています。つまり、このリスクは特定の薬だけに限ったものではなく“すべてのNSAIDs”に共通したものだと認識しておく必要があります。

さらに、この妊娠中のリスクは「内服薬」だけに限ったものではなく、湿布薬のような「外用薬」でも同じことが起こる2)ことがわかっています。ときどき、「貼り薬なら大丈夫」と誤解してNSAIDsの外用剤を使ってしまう人がいるため、注意が必要です。特にOTC医薬品では、こうした妊娠中のリスクに対するスタンスが曖昧で、「してはいけないこと(禁忌)」に妊娠中の女性に対する記載がほとんどありませんが、よほどの事情がない限りは避けておいた方が無難です。

モーラステープの添付文書より引用

引用元:モーラステープの添付文書より

すべての湿布薬は、妊娠中に使えない?

一方で、「妊娠中は市販されているすべての湿布薬を使えない」というわけでもありません。NSAIDsの外用剤の中でも、作用がやさしめの「サリチル酸メチル」や「サリチル酸グリコール」に関しては、医療用医薬品についても“禁忌”の指定はされておらず、これまで長年使われてきた中で目立ったリスクの報告もされていません3)。そのため、「サリチル酸メチル」や「サリチル酸グリコール」を主体とした外用薬は、妊娠中の女性が湿布薬を使いたいときの良い選択肢になると考えられます。

「サリチル酸メチル」や「サリチル酸グリコール」のOTC湿布薬一覧

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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