水虫の薬を塗っても爪の水虫は治らない!なぜOTC医薬品で治療できない?

花粉症のシーズンが終わり、気温・湿度が上がってくると、次は「水虫」の相談が多くなります。水虫の原因菌である白癬菌は、高温多湿の環境を好むため、夏が近づくと水虫を発症・再発する人が増えてくるからです。
しかし、ここで注意したいのは、OTC医薬品で治療できるのはあくまで「足の水虫」であって、「爪の水虫」は治療できない、という点です。今回は、この「爪の水虫」にどう対応すれば良いのか、基本とポイントをおさらいします。
- 爪の水虫に、OTC医薬品が効かない理由
- 爪の水虫には、どういった治療が適しているか
- 爪の水虫にならないためには、どういった対策が重要か
爪の水虫にOTC医薬品の「抗真菌薬」が効かないのはなぜ?
水虫の根本的治療ができる「抗真菌薬」の塗り薬は、OTC医薬品としても多く販売されていますが、いずれの製剤も「爪の水虫」に使うことはできません。使っても効果を期待できないからです。
そもそも「爪の水虫」では、白癬菌は爪の表面だけでなく、爪の深部から皮膚との接触面(爪床)にいたるまで広く感染しています。そのため、これを塗り薬で治療するためには、爪の表面に塗布した薬を深部にまで浸透させる必要があります。しかし、現在使われている「抗真菌薬」の塗り薬はいずれもケラチンを透過できないため、爪の深部には到達できません1)。つまり、爪の表面に薬を塗っても、退治できるのは爪表面の白癬菌だけなので、「爪の水虫」の治療には全くなり得ない、ということです。

「抗真菌薬」のOTC医薬品が爪水虫に効かない理由の解説図(筆者作成)
爪の水虫には、どういった治療が適している?
では、「爪の水虫」はどのように治療する必要があるかというと、爪組織にしっかりと薬が届く「抗真菌薬の飲み薬」を使う必要があります2)。具体的には、「イトラコナゾール」や「テルビナフィン」が該当しますが、これらの薬はOTC医薬品としては販売されていません。そのため、「爪の水虫」になってしまった場合には、OTC医薬品を用いたセルフメディケーションではなく、皮膚科を受診して医師・薬剤師の指導のもとでしっかりと治療を行う必要があります。
医療用医薬品として使われている、爪白癬の外用薬は?
なお、医療用医薬品としては「エフィナコナゾール」や高濃度「ルリコナゾール」が爪白癬用の塗り薬として用いられていますが、これらの薬はケラチンの透過性を高めた特殊な薬剤です。しかし、それでも根本的な治療ができるのは、ごく初期のものに限られます。爪全体が濁ってしまった進行した爪白癬に対しては、あまり効果を期待できません。そのため、「爪の水虫」は「抗真菌薬の飲み薬」を使って治療するのが基本2)になります。