糖尿病患者のフットケア、OTC医薬品のセルフメディケーションで大丈夫?

水虫は、OTC医薬品を活用したセルフメディケーションでも十分に完治させることができますが、これは「フットケア」が重要な糖尿病患者さんの場合も同様でしょうか。今回は、水虫薬を買いに来られた患者さんが糖尿病を患っていることがわかったとき、あるいは糖尿病の患者さんに水虫が疑われたとき、薬剤師としてどのような点に注意して対応すれば良いのか、そのポイントを紹介します。
- 糖尿病の患者さんにとって「水虫」がどのくらい“侮れない”ものか
- 糖尿病の患者さんに皮膚科受診を勧める際、受診することの何が重要だと伝えれば良いか
OTC医薬品でも、水虫は“完治”を目指せる
水虫は、皮膚に感染している白癬菌を退治することが治療のゴールになりますが、最近のOTC医薬品には「テルビナフィン」や「ブテナフィン」、「ラノコナゾール」といった新しい抗真菌薬も用いられています。そのため、途中で挫折することなく、しっかりと根気よく薬を使い続けることさえできれば、OTC医薬品であっても“完治”を目指すことができます。
しかし、すべての水虫で同じように安全かつ効果的なセルフメディケーションを行えるわけではありません。
糖尿病の患者さんは、足病変が悪化しやすい
糖尿病を患っていると、免疫機能の低下によって感染症を起こしやすくなる1)ほか、末梢の血行障害によって足にできた傷も治りにくくなることが知られています。そのため糖尿病の患者さんは、足にマメやタコなどができていないか、あるいは“深爪”していないか、知らない間に足の傷が悪化していないかといった点を自分で毎日チェックし、足を清潔に保つ「フットケア」を心掛ける必要があります。
つまり、糖尿病の患者さんにとっては水虫も“たかが水虫”と侮ることはできず、水虫によってできたちょっとした傷から組織が壊死し、これが下肢を切断しなければならなくなる事態を招く、といったことが起こり得る、非常に警戒すべきトラブルと言えます。
このことから、水虫薬を買いに来られた人に対しては、糖尿病を患っていないかどうかを必ず確認し、もし糖尿病患者さんであれば、OTC医薬品を使ったセルフメディケーションではなく、病院を受診して皮膚科医の指導のもとで厳格な水虫治療を行うよう提案した方が無難です。
使う薬は同じでも、専門医の目で定期的に診てもらうことが重要
このとき、皮膚科を受診しても、結局はドラッグストア等で購入できるOTC医薬品と同じ薬が処方される、ということはよくあります。しかし皮膚科を受診することの意義は、「OTC医薬品よりも良い薬を処方してもらうこと」ではなく、「定期的に皮膚科医に足の状態を診てもらうこと」にあります。というのも、糖尿病の患者さんは、合併症である末梢神経障害によって足の病変に気づきにくくなっている2)ため、“自分でも気づかないうちに水虫が重症化”していることが珍しくないからです。
セルフメディケーションでの対応では、患者さんは薬剤師にすら足の病変を“見せる”機会はほとんどありません。皮膚科に通院して治療を行うことには、定期的に専門家の目で足の状態を確認してもらう、というセーフティを機能させるという重要な意味があることを、しっかりと伝えるようにしてください。