Pharmacy Technicians~アメリカにおける調剤技師の実態~
アメリカと日本の薬局の大きな違いの一つでもあるテクニシャン制度。日本では「調剤技師」「薬局テクニシャン」などと訳されています。今回は「テクニシャン」の職業についてご紹介します。義務、教育、労働環境などの視点からアメリカのテクニシャンについて知ることで、薬剤師との違いがよく分かるはずです。
テクニシャン(調剤技師)の業務内容
テクニシャンは薬局や病院で働き、資格のある薬剤師が患者や医療従事者に処方薬を出すのを補佐する。
義務
テクニシャンは一般的に下記の業務を行う。
- 顧客や医療従事者から処方薬を出すために必要な情報を引き出す。
- 処方箋に必要な薬の量を計測する。
- 処方薬をパッケージに入れたり、容器に詰め、ラベルをつける。
- 在庫管理をして、薬や備品の在庫不足があれば薬剤師に注意喚起する。
- 処方箋支払いの受付と、保険給付支払手続を処理する。
- 顧客、患者の情報(過去の処方履歴含む)をデータとしてシステムに入力する。
- 顧客からの電話対応を行う。
- 顧客が薬や健康に関して質問がある場合、顧客と薬剤師が相談できる機会を調整する。
テクニシャンは薬剤師の監督下で働き、テクニシャンが処方薬を患者に渡す前に、必ず薬剤師が確認をしなければならない。ほとんどの州において、テクニシャンは薬を調合でき、リフィル処方が可能か医者に電話で確認できる。また、テクニシャンは処方薬を用意する際に、自動調剤機の操作ができなくてはならない。
病院やその他の医療施設で働くテクニシャンは、静脈内に投与する薬などさらに多くの種類の薬を準備する。患者に投薬をしながら、病院を巡回することもある。
労働環境
2012年時点、就業しているテクニシャンの数は35万5300人であった。基本的には薬局(スーパーマーケットやドラッグストア併設を含む)に勤務しているが、中には病院や診療所で働くテクニシャンもいる。ほとんどの職場において、テクニシャンは立ち仕事である。
勤務スケジュール
テクニシャンの大半は常勤で働いている。24時間営業の薬局もあるため、夜や週末も勤務しなければならない時がある。
テクニシャンになる方法
テクニシャンになるには高卒、またはそれに相当する資格が必要。テクニシャンは基本的にOJTか、大学の教育プログラムの受講を通して学ぶ。多くの州では試験の合格や、公式の教育プログラムまたはトレーニングプログラムの修了が必須要件となっている。
教育とトレーニング
テクニシャンの大半はOJTを通して必要な業務を学ぶが、その期間や内容は雇用主によって異なる。
その他のテクニシャンは、製薬技術のプログラムを高等教育で終了した後、職に就く。これらのプログラムは通常、職業訓練学校やコミュニティカレッジで受講が可能である。基本的には1年か1年未満で修学証明書が授与されるが、中には準学士号取得のために長期間を要するものもある。プログラムは、薬局で必要となる計算、記録保管業務、調剤の方法、薬事法、倫理などの幅広い分野をカバーしており、薬の名前、用法、効用についても学ぶ。また、薬局での実践的な経験を積むために臨床経験の機会も含まれていることが多い。
アメリカ病院薬剤師会(ASHP)からテクニシャンになるための教育プログラムとして認定を受けるためには、最低15週間にかけて少なくとも600時間の指導が必要であるとされており、2012年には正式認定されたのは213プログラムあった(ドラッグストアチェーンも含む)。
資格、証明書、登録
大半の州ではテクニシャンに関して何らかの規定があり、各州の規定については、州の薬事委員会に確認が必要。主に含まれる規定の内容は以下の通りで、この一部だけの州もあれば、全てを含む州も存在する。
- 高校卒業証書、または高卒認定資格
- 犯罪歴検査
- 公式の教育プログラムまたはトレーニングプログラム
- 試験
- 手数料
- 継続教育
州や雇用主によってはテクニシャンに資格を求めるところもある。資格が必要とされない場合でも、資格を保持している方が仕事を得やすい。多くの雇用主は、テクニシャンの資格試験受験料を本人の代わりに支払っている。
資格を発行する組織は二つある。一つ目は高校卒業証書と試験通過によって取得できる「薬局テクニシャン認定委員会(PTCB)」と、二つ目は18歳以上・高校卒業証書・トレーニングプログラムの受講または1年以上の就業経験が必要な「全米ヘルスケア協会(NHA)」である。テクニシャンは資格維持のために2年に1度20時間の継続教育のコースを受講しなければならない。
重要な特性
・接客スキルテクニシャンはほとんどの時間を顧客と接しながら過ごすため、小売店で働く際には顧客の役に立ち礼儀正しいことが必要。
・詳細にこだわる志向調剤時のミスは深刻な健康問題を生じさせる可能性がある。調剤する処方箋の正確さを確認する義務は薬剤師にあるものの、リスク回避のため、テクニシャンも細心の注意を払って業務を行わなければならない。
・聞き取るスキル処方箋の指示を薬剤師や医師から得る際、明確なコミュニケーションが必要である。また顧客の求めているものを理解し、顧客が薬剤師と話す必要があるかを判断するために、テクニシャンは注意深く顧客の話を聞かなくてはならない。
・数学的スキル薬局で錠剤を数えたり調合を行ったりする際に必要な、数学的概念を理解しなければならない。
・管理的スキルテクニシャンとして働くことは、さまざまな責任のバランスを取ることが求められる。顧客や患者の対応をすると同時に、薬剤師から任された仕事も完結させる高い管理能力が必要だ。
給料(賃金)
2012年5月時点で、テクニシャン年収の中央値は307万8600円(2014年9月3日時点$1.00=105円で換算)。年収の中央値とは、テクニシャンの半分はそれ以上の金額を稼ぎ、残り半分のテクニシャンはそれ以下であったことを示している。下位10%の年収額は216万900円以下であり、上位10%は445万2000円以上であった。
2012年5月時点の上位5業態における薬剤師年収の中央値は以下の通り。
将来の見通し
2012年から2022年にかけて、テクニシャンの雇用は20%(他の職業の平均スピードよりも早い)伸びると予測されている。次の通り、いくつかの要因により処方薬の需要増加を引き起こすだろう。
高齢化が進行。一般的に若年層より高齢層の方が処方薬を多く使うのに加え、糖尿病などの慢性疾患患者の割合が年齢を問わず増加していることも、処方薬の需要増加を引き起こす要因となるだろう。また、薬学研究の進歩に伴い、病気と戦う処方薬が今以上に誕生すると予想される。
政府の医療保険制度改革法制定により、保険の利用者は増えるだろう。保険適用範囲内の利用者が増えるに従って、増大する処方箋に対応するため、テクニシャンのニーズはますます高まるはずだ。
さらに、予防接種の実施など薬剤師の活躍領域の拡大に伴い、テクニシャンも薬局業務における役割が拡大すると考えられる。患者情報の収集、より多くの種類の薬剤の準備、他のテクニシャンの業務チェックの他、以前は薬剤師が担っていた業務などもテクニシャンに求められるだろう。
就職の見通し
テクニシャンの就職の見通しは良く、公式なトレーニングを受けている者、資格をもっている者、小売店での経験がある者に関しては特に就職が有利である。
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