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更新日: 2014年12月11日

「受付時の先確認」が安心・安全のきっかけに

「受付時の先確認」が安心・安全のきっかけにの画像1

2014年度調剤報酬改定では、基準調剤加算の厳格化、後発医薬品調剤体制加算の変更率引き上げなど「医療機能の分化と連携」と、無菌製剤処理加算の評価、医療・衛生材料の供給体制整備といった「在宅医療の充実」が明確になり、全体として2025年問題を睨んだ結果となりました。今回はその中でも、調剤業務に関わる重要な変更点である「処方せん受付時の先確認」について解説します。これは、医薬分業に対する患者の理解にもつながるため、薬局薬剤師はその意図を真摯に受け止め、かかりつけ薬局をめざすチャンスと捉えてほしいと思います。

藤田 道男氏の画像

藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

調剤時の「先確認」を義務化

テクニシャン(調剤技師)の業務内容の画像 表1:体質、アレルギー歴等の患者情報、後発医薬品の意向確認などの10項目

14年度改定では、薬剤服用歴管理指導料(薬歴管理料)の算定要件に関して、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項」が改正され、「患者の服薬状況、残薬確認、後発医薬品使用の意向確認等を調剤前に行うこと」とされました。
調剤時の先確認については、10年度調剤報酬改定で「留意事項」の見直しがあり、薬歴管理料を算定する際に、氏名、生年月日、被保険者番号、指導した薬剤師の氏名などを記載すること。さらに「体質、アレルギー歴等の患者情報、後発医薬品の意向確認などの10項目(表1参照)」を、処方せんの受付け時、薬を取り揃える前に患者に確認することが、努力義務として明記されています。また、11年に日本薬剤師会が編集した『調剤指針第13改訂』の「調剤の概念」には、「薬局で処方せんを受け取り、患者から情報を聞き、問題点を発見、解決してはじめて調剤設計ができる」という内容が盛り込まれ、より明確になっています。

これにより、保険請求上と業務遂行上の問題を解決し、調剤業務において対人業務(患者対応)と対物業務(調製行為)を明確に区分して調剤を行うという原則が確立。対人業務を済ませたうえで対物業務を行う流れになりました。しかし、14年改定で改めて「先確認」の原則が義務化されたということは、調剤報酬算定上の留意事項や業務遂行のうえでの原理原則である調剤指針が、今まで遵守されていなかったともいえます。

待ち時間対策が先確認のネックに

従来、ほとんどの薬局薬剤師は患者が来局すると、処方せんを受け取ったら処方をチェックし、必要であれば疑義照会を経て、直ちに調剤に入ります。そして、処方薬を手渡す際に服薬指導を行ない、業務完了としていました。
この背景には、薬剤師が患者の待ち時間を気にするあまり、「少しでも早く調剤を済ませたい」との意向が働いていたことがあります。事実、「受付時の先確認」を義務化する改定内容が明らかになった当初は、薬局関係者から「業務が煩雑になる」「調剤手順の見直しが必要」「患者の待ち時間が増える」といった声が少なくありませんでした。さらに、事務職員が受付を行っていた薬局では、事務職員から薬剤師への人員変更を余儀なくされ、薬剤師確保にも腐心する状況が見られました。最近では、受付カウンターにポスターを貼り、患者さんから事前確認への理解を求める薬局があるなど、少し落ち着きを取り戻しつつあるようです。

「対人業務優先」は待ち時間解消に

図2:出典:14年度診療報酬改定における中医協資料よりの画像 図2:出典:14年度診療報酬改定における中医協資料より

しかし、私はどうしても「調剤時の先確認」の「先か、後か」という議論に違和感を拭えません。一般的に医師は患者を診る場合、診察・問診・カルテで確認した後に、診断・治療に着手します。薬局でも一般用医薬品を販売する際は、購入者の服薬状況を確認し、数種類の同種同効薬の中から最も適切と思われる医薬品を選んで販売するはずなのに、なぜ調剤薬局においては、「患者の状況を確認せずに、処方せんだけを確認して調剤して良いものかどうか」と議論になるのでしょうか。
これについては、14年度診療報酬改定時の中医協資料にも「医師は患者の問診等を通じて、最後に診断を行い治療方法を決める。薬剤師も患者の問診等(服薬状況、残薬状況、後発品の意向確認)を通じて、最後に処方せん内容の通り調剤してよいかどうか判断することが必要である」と提示されています(図2参照)。

「先確認による対人業務優先」は、業務の煩雑さや待ち時間などの問題から渋々受け入れられた感がなきにしもあらずですが、これらは、患者の納得・安心感につながるだけでなく、医薬分業の理解を深めるうえでも重要と考えられます。

これまで患者は、医療機関でも薬局でも長時間待たされ、いら立ちを覚えていたのが現状です。ですから、薬局もできるだけ待ち時間を短縮しようと苦心してきました。最近では、アプリなどで事前に処方せんを送るシステムを使用したりと、待ち時間の短さをアピールする薬局も目につきます。
では、なぜ患者はいらだちを覚えるのでしょうか。それは、患者心理から言えば、処方せんを提出した後、「何の情報もなしに待たされる」からです。受付時に患者さんから服薬状況などを聞き、希望すれば飲みやすいように工夫できることや、待ち時間の目安などをきちんと伝えれば、きっと患者さんは納得し、待ち時間のイライラも和ぐでしょう。単に薬をもらうだけと思っていた薬局が、実はさまざまなことに配慮しながら調剤しているという理解が得られ、医薬分業への理解にもつながるに違いありません。

薬剤師が「何を行ない、何をできるか」を理解してもらうために、患者とのコミュニケーションを積極的に取ることが、これからも重要になってくるのではないでしょうか。

掲載内容は、記事公開時のものであり、現時点における最新情報ではない可能性があります。

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