アメリカと日本の薬局の違い 現地レポート
先日、アメリカのドラッグストアを訪れる機会があった。これまで当サイトでもアメリカの薬剤師事情を紹介してきたが、今回は現地の実際の様子をレポートしたいと思う。
訪れたのはアメリカ南部に位置するテネシー州の「ウォルグリーン」。入口のすぐ近くには調剤受付カウンターを配置、壁には「Immunization(予防接種)」のポスターを貼り出している。
アメリカでは多くの薬局で各種予防接種を受けることが可能だ。筆者が訪問した12月上旬はインフルエンザの予防接種シーズンということもあり、ポスターでもそれを大きく打ち出していた。また、ウォルグリーンの自社アプリでは、自分と家族の予防接種の履歴、各自が受けるべき予防接種の種類を確認することが可能で、リピートを促す仕組みとなっている。さらに同社で受ける予防接種はほとんどの保険プランが適用され、自己負担金0円で受けることができるという。
ここでアメリカにおける処方薬の宣伝広告に少し触れたい。日本では処方薬のテレビCMは薬事法上規制されているが、アメリカではインフルエンザ治療薬「タミフル」のテレビCMを頻繁に見る。ここでは医薬品の広告はごく一般的だ。実際、「There’s no such thing as a little flu(少しだけインフルエンザ、なんていうものはない)」と、インフルエンザは普通の風邪と異なる旨を伝えるタミフルの広告を、テレビや雑誌でたびたび目にした。さらに、タミフルのオフィシャルサイトでは、値引きクーポンまで配布。日本での処方薬の扱い方の違いに驚かされた。
さて、話を元に戻すと、医療費削減の一環としてセルフメディケーションを促進するアメリカでは、薬に関する相談は医師ではなくまず薬剤師にすることが奨励されている。ほとんどの薬局はドラッグストアに併設しており、処方箋を持たない人でも入りやすい環境だ。ウォルグリーンでは調剤受付カウンターとは別に「Consultation(ご相談)」窓口を設置しており、患者が薬剤師に直接質問できる環境を整えていた。予防接種の受付も含め、薬局や薬剤師の活躍領域を積極的に拡大する方針の表れだろう。
また、アメリカの薬局ならではの特徴の一つが、薬物のセルフチェック用キット。大麻やコカインなど特定のものを調べるキットは20ドル以下、多様な種類に対応するキットは倍程度の価格で販売しており、主に親が子どものドラッグチェックのために購入するという。違法ドラッグ以上に深刻なアメリカの処方薬依存症だが、特に依存性が高いヒドロコドンを含む薬は、2014年10月よりリフィル処方箋非対応の旨を記した文書を受付に掲示。処方薬に関する知識はもちろん、違法ドラッグや処方薬依存症に至るまで薬剤師には幅広い知識が求められているようだ。
薬局の役割領域の拡大は、日米ともに課題となっている。法律の規制もあるが、処方箋受付以外でどのような方法を通して集客するか、アメリカのドラッグストアや薬剤師から参考にできることが多いと感じた。
掲載内容は、記事公開時のものであり、現時点における最新情報ではない可能性があります。