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更新日: 2015年10月27日

植物療法が変えるセルフメディケーションの世界 メディカルハーブの基礎知識

つるつるの「ドラッグストアでトリアージ」OTC医薬品を紹介するコツ「胃(腹痛)」の画像1

セルフメディケーションの推進は薬剤師に課せられた役割の一つです。このセルフメディケーションの一環として今注目を集めるのが、アロマやハーブと言った植物療法。そこで、東京・自由が丘でアロマ・ハーブショップ「グリーンフラスコ」を経営し、植物療法の普及に取り組む薬剤師の林真一郎氏に、薬剤師が知っていると役立つ植物療法とセルフメディケーションの関係についてうかがいます。

林 真一郎の画像

林 真一郎
はやし しんいちろう

東邦大学薬学部薬学科卒業。1985年グリーンフラスコ株式会社設立。 医師・鍼灸マッサージ師・助産師・薬剤師などとネットワークを作り、情報交換を行いながらホリスティック医学としてのアロマテラピーやハーブ療法の普及に取り組んでいる。
「グリーンフラスコ」
東京都世田谷区奥沢5-41-12 ソフィアビル1F
電話03-5483-7565 営業時間/11:00~20:00 水曜定休(祝祭日の場合は営業)
◆主な著書
植物力をくらしに活かす「緑の医学」(東京堂出版)、ファーマシューティカル アロマセラピー&メディカルハーブ(南山堂)など多数

メディカルハーブ(植物療法)の基礎知識

数ある相補・代替療法の中で歴史が最も長く、ヒポクラテスの時代から現代まで脈々と受け継がれてきたのが、メディカルハーブ(植物療法)です。そして、アスピリンがメドースィートから、ジゴキシンがジギタリスから作られたように、メディカルハーブは、医薬品の生みの親でもあります。

ジャーマンカモミールやペパーミントなどのハーブにはフラボノイドやタンニン、精油やビタミンなどさまざまな成分が含まれています。アロマセラピー(芳香療法)では主に精油のみを用いますが、メディカルハーブは、これらすべての成分を丸ごと用いるのが特徴です。
薬剤師にとって「生薬」はなじみが深い言葉でしょう。生薬は「植物」「動物」「鉱物」の3つに分類され、中でもメディカルハーブは「植物性生薬」と考えられます。「漢方」は東の植物療法、「メディカルハーブ」は西の植物療法、ともいえます。

ところで、メディカルハーブには、茶剤(ハーブティー)やチンキ剤、カプセル剤や散剤、湿布剤や入浴剤などさまざまな剤形があります。日常生活で活用するならば、有効性、有用性、安全性の観点から、最もおすすめなのが茶剤(ハーブティー)です。

ハーブティーの楽しみ方

ハーブティーを淹れるには、特別な器具や技術が必要だと考えている方がいらっしゃいますが、急須と熱湯があれば十分です。原料のドライハーブ2~3グラムを急須に入れたら、熱湯200ミリリットルを注ぎ、フタをして3分間蒸らします。フタをするのは揮発性の成分を逃がさないため。抽出したら、香りを楽しみながらゆっくりと服用しましょう。

なお、消化管からの吸収がよいのは空腹時ですが、一般には1日3回毎食後に服用します。クセがって飲みにくい場合は、ペパーミントやローズヒップ(野バラの実)とブレンドすると飲みやすくなります。中には苦いハーブティーもありますが、苦味そのものが効能・効果をもたらすので砂糖やハチミツなどはできるだけ控え、自然本来の味と香りを楽しみましょう。

ハーブティーの心身への作用機序

ここで下の表1をご覧ください。わが国で入手可能な主要ハーブ10種とその作用、適応を示しました。

種類 作用 適応
ジャーマンカモミール 消炎・鎮静・鎮痙 胃炎・胃潰瘍・アレルギー
ペパーミント 消化器機能調整 消化不良・食欲不振
ローズヒップ ビタミンC補給・緩下 感染症・便秘
ハイビスカス エネルギー代謝 肉体疲労・冷え症
エキナセア 免疫賦活 風邪・インフルエンザ・膀胱炎
タンポポ 腸内環境改善・強肝 便秘・関節リウマチ・虚弱
マルベリー 糖吸収抑制 糖尿病・高血糖
ネトル 血液浄化・体質改善 アレルギー・関節リウマチ・貧血
リンデン 鎮静・利尿 不眠・高血圧
エゾウコギ ストレスへの適応力向上 心身症・感染症

表1 主要ハーブティーの作用と適応

例えば、ストレスが続いて胃の調子が悪いときに、ジャーマンカモミールのハーブティーを服用したとします。ジャーマンカモミールには芳香成分の精油と消炎成分のカマズレン、それにフラボノイドのアピゲニンなどが含まれています。
ハーブティーは、まずカップから立ち上がる心地良い香りが、心身をリラックスさせます。服用すると、消炎成分のカマズレンが胃の粘膜に直接作用して炎症を鎮めます。また、アピゲニンは鎮痙作用とともに、ベンゾジアゼピン様の抗不安作用を与えます。このように、多様な成分が多様なメカニズムで私たちの体に働きかけ、心身に調和をもたらすのがメディカルハーブの特徴です。

ハーブティーによるセルフメディケーションの具体例

ハーブティーによるセルフメディケーションの具体例

①胃潰瘍・機能性胃腸症

胃潰瘍には、早朝、食間、就寝前にジャーマンカモミールのハーブティーを服用します。機能性胃腸症には、ジャーマンカモミールまたはジャーマンカモミールとペパーミントのブレンドハーブティーを。
ブレンドは、ジャーマンカモミール1に対してペパーミント0.5~2を目安に配合します。
お酒やカフェイン飲料、炭酸飲料を控えます。

②風邪・インフルエンザ

風邪のひき始めに、エキナセアのハーブティーを1日3~6杯、集中的に服用します。ビタミンC補給のため、ローズヒップとブレンドする方法もあります。
体を冷やす清涼飲料水は控え、温かいハーブティーを服用します。

③アトピー性皮膚炎

症状の改善にはジャーマンカモミール、根本的な体質改善にはネトルやダンディライオンのハーブティーが有効です。
慢性炎症の増悪要因である糖分を多く含んだ嗜好飲料や、体を冷やす清涼飲料水の摂取を控えます。

④不眠・イライラ

就寝前にリンデン(西洋ボダイジュ)のハーブティーを香りを楽しみながら服用します。飲みにくい場合は、ペパーミントを少量ブレンドする方法もあります。
日中にカフェイン飲料の摂取を控えます。

掲載内容は、記事公開時のものであり、現時点における最新情報ではない可能性があります。

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