つるつるの「ドラッグストアでトリアージ」OTC医薬品を紹介するコツ「皮膚」
初めまして。ドラッグストアと一般用医薬品(以下、OTC医薬品)をこよなく愛する鶴見健です。連載を通して、身近な症状を例に「薬剤師がお客様にOTC医薬品をすすめる時のコツ」についてご紹介します。第4回は「皮膚トラブル(手荒れ)を抱えたお客様にはどう対処するべきか」です。
皮膚トラブルの原因は「体外」と「体内」
皮膚トラブルの原因は、「体外」「体内」に大別されます。「体外」の原因としては、ウイルスや細菌、紫外線、気温や湿度、環境汚染、化粧品などが挙げられます。「体内」としては、肝臓や胃腸の不調、食生活の乱れ、ストレス、睡眠不足、疲労の蓄積が挙げられます。
お客様へのアプローチ方法
ドラッグストアや薬局で肌トラブルの原因疾患を診断することはできません。しかしお客様に対するアプローチとして、症状を詳しく聞くことは可能です。今回は皮膚トラブルの中でも特に相談の多い、「手荒れ」に関するトリアージ方法をご紹介します。年齢や性別など、生活スタイルによって考えられる疾患はさまざまなので、以下のトリアージ方法は一例という認識を持って柔軟に対応しましょう。
◆薬剤師からのお客様への質問一覧
- 水疱やカサブタはありますか?
- 手荒れの症状が出るのは通年ですか? 特定の時期ですか? また、症状は手の甲ですか? ひらですか?
- よく水仕事をしますか? 手を洗う時は石鹸をよく使いますか?
- 手荒れの症状はジュクジュクしていますか? カサカサしていますか?
これら4つの質問をすることで、皮膚のトラブルに適切なOTC医薬品をすすめることができます。
- 水疱やカサブタはありますか?
これは「異汗性湿疹(汗疱<かんぽう>)」の可能性を探る質問です。「異汗性湿疹」は「小水疱型」と「乾性落屑型」の2タイプがあります。小水疱型は指や手のひらに小水疱が突然多発し、時間の経過とともに水疱が破れて鱗屑(りんせつ)となります。一方、乾性落屑型は指先の膜様の鱗屑・落屑が主な症状として出ます。小水疱型はかゆみを伴うことがありますが、乾性落屑型はかゆみがありません。発症は初夏に多く、1ヶ月程度で自然軽快しますが、毎年繰り返します。はっきりとした原因は分かっておらず、金属アレルギーや扁桃腺・鼻・歯・耳などへの細菌感染が関与している場合があります。
軽症の場合は、ケラチナミン(興和)、フェルゼア(資生堂)、サリチル酸ワセリンなどの保湿剤で対処しましょう。湿疹が生じている部位にはステロイド外用を追加します。効果が現れない場合は、強めのステロイド外用と抗アレルギー剤の服用が有効なこともあります。また、患部がジュクジュクしている場合は、亜鉛華軟膏(小堺)を重ね塗りして包帯を巻くと効果的です。症状が改善しない場合、皮膚科での紫外線を使う光線療法などをすすめると良いでしょう。
- 手荒れの症状が出るのは通年ですか? 特定の時期ですか? また、症状は手の甲ですか? ひらですか?
「手湿疹」か「アトピー性手湿疹」、「手白癬(てはくせん/水虫)」、「異汗性湿疹」を探る質問です。通年を通して手荒れがある場合は、「手湿疹」もしくは「アトピー性手湿疹」です。「手湿疹」は、皮脂の再生が追い付かないところに、慢性的な刺激が加わることで発症します。気管支炎やアレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴、既往歴がある、もしくは複数の疾患があることが多い、俗に言うアレルギー体質の方は、「アトピー性手湿疹」が疑われます。
また、「アトピー性湿疹」が手のひらに出ることは稀です。ですから、手のひら側に症状が出ている場合は、「急性・慢性手湿疹」の可能性が高く、手の甲側であれば「アトピー性皮膚炎」の可能性が示唆されます。夏季など、汗が出やすい特定の時期のみに出る場合は、「手白癬」や「異汗性湿疹」なども考えられます。しかし、最近の手袋は保温保湿性が優れているため、冬場でも発症する可能性があるので注意が必要です。
- よく水仕事をしますか? 手を洗う時は石鹸をよく使いますか?
「手白癬」を疑う質問です。水仕事が多い人や、石鹸でよく手を洗う人は、手のひらの皮膚が厚くなりやすく、鱗屑となります。その際、かゆみはないか軽度です。
「手白癬」の場合は、足や爪にも白癬があるので併せて確認すると良いでしょう。「手白癬」は「異汗性湿疹」と症状が似ているため注意が必要です。また、仕事などで日常的に水に触れる時間が長い人は「手白癬」と「異汗性湿疹」を併発する場合もあります。「手白癬」にはスイッチOTC薬が多くあり、テルビナフィン(ラミシール:第一三共)、ブテナフィン(ブテナロック:久光製薬)などが有効です。軟膏・クリーム・液体・スプレーなど、剤形も豊富なので、患部の場所や状態によって、適宜すすめてみてください。
OTC医薬品の特徴としてかゆみ止め成分(抗ヒスタミン薬:ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、局所麻酔薬:リドカイン、ジブカイン)が配合されていることがほとんどです。また、メントールなどの冷感剤も配合されおり、使用感の工夫もされています。軽度の治療薬としては、有効成分である「フェノール」が入った木酢液や竹酢などが有名です。患部に塗るのではなく、水で薄めて患部を浸します。
- 手荒れの症状はジュクジュクしていますか? カサカサしていますか?
この質問により、「乾燥型」と「湿潤型」の2つのタイプに分けられます。「乾燥型」は皮膚がカサつき、ひどくなるとひび割れが生じます。さらに症状が悪化すると、指紋が消える、皮膚が硬くなるなどの症状がみられます。個人差はありますが、利き手の親指、人さし指、中指などよく使う指先から症状がはじまり、次第に手のひら全体に広がっていきます。「湿潤型」は汗腺の異常によって、皮脂の分泌がうまくいかずに炎症を起こし、小さな発疹や水泡ができるのが特徴です。指の腹や手のひらから発症することが多く、手の甲にも症状がみられます。
乾燥型は保湿剤による治療がメインとなります。多少効果が落ちるものの、保湿剤に刺激物が入っていない方が良い方はワセリンを。刺激物が入っているものの、保湿効果が高い方が良い方には、尿素やヘパリン類似物質などをすすめると良いでしょう。また、保湿成分の入った化粧品や入浴剤を併用するのも効果的です。OTC医薬品の保湿剤では、医療用のヒルドイドクリームと同じ、ヘパリン類似物質配合のHPクリーム(ノバルティス)があります。医薬品ではありませんが、ロコベースリペア(第一三共)もおすすめです。保湿機能が高く皮膚保護膜を作るタイプの保湿剤です。
湿潤型で、特に症状がひどければ、OTC医薬品のステロイド外用剤の使用をすすめましょう。軽度の場合でも炎症が原因なので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いるのも一つの方法です。特にエピアマートS(杏林製薬)はおすすめです。この薬は、赤ちゃんのオムツかぶれなどにも使用できます。通気性の良い木綿の手袋をするなど、日頃の心がけも大切ですので、お客様に伝えると良いでしょう。
乾燥型と湿潤型が混在している場合は、保湿剤を塗り、炎症している部分のみステロイド外用剤を使うように伝えてください。保湿剤は1日に何度使っても良いので、こまめに塗り、乾燥から手を守るよう話してみましょう。
最後に
全身スキンケアの基本として入浴もおすすめですが、注意したい点があります。それは入浴剤選びです。ドラッグストアにはさまざまな入浴剤がありますが、アトピー性皮膚炎の方は炭酸ガス系の入浴剤は使用しない方が良いでしょう。炭酸ガスの効果で角質が落とされ、かゆみが出ます。さらに、血管が拡張することでもかゆみが増してしまうのです。
この様に、OTC医薬品以外のことでも症状に合わせた対処法を提案するのも薬剤師の仕事です。
確定診断は専門医が下すものですが、日頃のスキンケアはOTC医薬品で十分に対応が可能。薬剤師は、薬剤を使った治療方針や病態を理解しているからこそ、予防医学に貢献できると思います。お客様との会話で原因やヒントを発見し、受診勧奨レベルなのかそうでないのかを判断して、病院に行くきっかけや、予防を始めるきっかけをつくるのが良いのではないでしょうか。
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