ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント

更新日: 2022年4月13日 ぺんぎん薬剤師

ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント①
〜調剤報酬改定の概要と調剤基本料と加減算の改定

2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント1メインの画像1

改定の全体像と背景

改定率から見る調剤への影響

2022(令和4)年度診療報酬改定は2021年12月22日の予算大臣折衝を踏まえ、技術料本体の改定率がプラス0.23%1)となりました。これに、看護師の処遇改善のための特例対応分としてプラス0.20%、リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化によりマイナス0.10%、不妊治療の保険適用のための特例対応でプラス0.20%、小児の感染防止対策に係る加算措置の期限到来によるマイナス0.10%が加わり、診療報酬の改定率はプラス0.43%となっています。薬価については実勢価格等の改定でマイナス1.44%、妊治療の保険適用のための特例対応のプラス0.09%を合わせて、合計マイナス1.35%となっています。材料価格はマイナス0.02%です。全体(ネット)改定率は公表されていませんが、計算するとマイナス0.94%となります。

技術料本体の内訳を見ると医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3は維持されており、調剤の改定率はプラス0.08%となっています。ここで注意したいのは、各科の改定率は分母を各科の医療費として計算されるため、調剤の改定率は調剤医療費に対する改定率を示します。この考えは薬価の改定率を考える際でも同様で、薬剤費をベースとした場合の薬価改定率はマイナス6.69%2)です。

令和2年度の調剤医療費の概要3)を見てみると、技術料:薬剤料=25:75となっており、調剤医療費には薬価改定が大きく影響することがわかります。調剤報酬がわずかなプラス改定であることを考えると全体としてはマイナス改定と考えるべきです。

財務省からの指摘

医療費のうち約25%は国庫が負担しています。そのため、財務省の意見は診療報酬改定に大きな影響を与えることになります。今回の改定に先駆けて財務省からはかなり厳しい意見が出されていました4)。診療報酬本体については「躊躇なくマイナス改定をすべき」という意見が出され、調剤報酬についても多く指摘されています。具体的には、「対物業務から対人業務への転換」、「調剤報酬上の評価は地域連携薬局に対して行うべき」、「かかりつけ薬局・薬剤師以外への処方箋受付における患者負担の在り方」、「敷地内薬局等の調剤基本料の見直しの強化」、「後発医薬品調剤体制加算は廃止を含めた見直しを行い、減算を大幅に拡大すべき」、「リフィル処方の導入」、「多剤・重複投薬等への対応の強化」などです。
こういった逆風の中、今回の改定が行われたということも押さえておくべきポイントになります。

調剤基本料とその加算の改定

調剤基本料に関する改定のポイント!〜大型チェーン薬局に厳しい改定

調剤基本料については、チェーン薬局を対象とする調剤基本料3と医療機関と特別な関係を有する場合を対象とする特別調剤基本料についての改定が行われています。

調剤基本料 2020 2022 施設基準
42点 42点 以下のいずれにも該当しない
26点 26点 ①月2000~4000回、集中率85%超
②月4000回超 集中率70%
③月1800回超、集中率95%超
21点 21点 ①グループで3.5回超4万回以下、集中率95%超
②グループで月4万回超40万回以下、集中率85%超
16点 16点 総受付回数40万回超または薬局数300以上のグループ
に所属、集中率85%超または不動産取引関係
新設 32点 総受付回数40万回超または薬局数300以上のグループ
に所属、集中率85%以下
特別調剤基本料 9点 7点 医療機関と特別な関係、集中率70%超
※特別な関係の定義について適応範囲の拡大あり

調剤基本料3についてはロの施設基準に「同一グループの保険薬局の数が三百以上のグループに属する保険薬局」が加わりました。また、新たに「同一グループの保険薬局における処方箋の受付回数の合計が一月に四十万回を超える又は同一グループの保険薬局の数が三百以上のグループに属する保険薬局」を対象とする「調剤基本料3のハ」が設けられました。

この改定により、総受付回数40万回超または薬局数300以上のグループに所属する薬局は調剤基本料1を算定することができなくなりました。(医療資源の少ない地域に係る特例に該当する場合を除く)

特別調剤基本料については点数が2点マイナスとなったことに加えて、地域支援体制加算・後発医薬品調剤体制加算が20%減算されるルールが追加されました。また、特別な関係の対象となる医療機関については服薬情報等提供料を算定することができなくなりました

調剤基本料は在庫や光熱費等、薬局の運営維持費を評価するものであるため、調剤基本料1を基本としながら、経営効率に応じて細分化が行われていますが、改定を重ねることでかなり複雑になってきました。受付枚数や集中率、立地や組織の規模によって調剤基本料が異なることについては患者さん側からみてわかりにくく、調剤基本料が低い方に誘導することになる問題についても議論されており、今後の改定でどのように見直されていくか注目していきたいと思います。

地域支援体制加算〜評価の拡大と在宅の強化

地域支援体制加算については段階的な評価への見直しが行われ、算定対象が拡大されるとともに、より高い評価が設定されることになりました。

2020 2022 対象
地域支援体制加算 38点 地域支援体制加算1 39点 調剤基本料1
地域支援体制加算2 47点
地域支援体制加算3 39点 調剤基本料1以外
地域支援体制加算4 17点

調剤基本料1を算定している薬局は地域支援体制加算1・2、調剤基本料1以外を算定している薬局は地域支援体制加算3・4を算定することが可能です。

地域医療に貢献する体制を有する実績
地域支援体制加算1 ❶〜❸を満たした上で❹・❺のいずれかを満たす
地域支援体制加算2 ❶〜❸を満たした上で❹・❺のいずれかを満たし、①〜⑨のうち3つ以上を満たす
地域支援体制加算3 ❶を満たした上で①〜⑨のうち④・⑦を含む3つ以上を満たす
地域支援体制加算4 ①〜⑨のうち8つ以上を満たす
❶麻薬小売業者の免許を取得
❷在宅薬剤管理の実績:24回以上
❸かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出
❹服薬情報等提供料の実績:12回以上
❺研修認定を取得した薬剤師が地域の多職種と連携する会議に参加した実績:1回以上
※❷・❹・❺は1薬局あたりの年間の回数
①夜間・休日等の対応実績:400回以上
②麻薬の調剤実績:10回以上
③重複投薬・相互作用等防止加算(在宅患者重複投与・相互作用等防止管理料)の実績:40回以上
④かかりつけ薬剤師指導料等の実績:40回以上
⑤外来服薬支援料1の実績:12回以上
⑥服用薬剤調整支援料1・2の実績:1回以上
⑦単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績:24回以上
⑧服薬情報等提供料の実績:60回以上
⑨研修認定を取得した薬剤師が地域の多職種と連携する会議に参加した実績:5回以上
※①〜⑧は処方箋1万枚あたりの年間回数、⑨は薬局あたりの年間回数

地域支援体制加算の施設基準である「地域医療に貢献する体制を有する実績」の内容を見ると、地域支援体制加算1・4がこれまでの地域支援体制加算に相当することがわかります。

ただし、在宅に関する実績は調剤基本料1の場合もそれ以外の場合も24回以上に増え、厳しくなっています。ただし、調剤基本料1以外に必要な実績の計算方法が薬剤師一人あたりの回数から処方箋1万枚あたりの回数に変更されており、多くのケースで算定しやすくなったのではないかと思います。なお、在宅に関する実績の変更について、改定前に在宅に関する実績を満たしているとして地域支援体制加算の申請を行なっていた薬局については2023年3月末までの猶予期間が設けられています

調剤基本料1で地域支援体制加算1が算定可能な薬局についてはさらに施設基準を満たすことで地域支援体制加算2を算定することが可能となります。これについては求められる施設基準がそれほど難しくはないので調剤基本料1を算定している薬局にとっては大きなチャンスとなります。

調剤基本料1以外で地域支援体制加算4が算定できない薬局でも、地域支援体制加算3であれば算定可能という薬局は少なくないと思います。特に新たに調剤基本料3のハに該当してしまった場合は地域支援体制加算3・4を算定することで調剤基本料のマイナスをカバーしたいところです。

調剤基本料1と地域支援体制加算を算定していた薬局が調剤基本料3のハに該当して地域支援体制加算3・4が算定できない場合はかなり大きなマイナスとなりますが、今回の改定で調剤基本料1から調剤基本料3のハに変更となる薬局については、2023年3月末までの間は地域支援体制加算の施設基準に限り調剤基本料1を算定しているとみなすことができる猶予期間が設けられています。

薬局の機能による評価を進めることが議論されている中、今後の改定では調剤基本料の中で地域支援体制加算の占めるウエイトが増していくのではないかと予想しています。

連携強化加算の新設

新たに、災害や新興感染症の発生時等における医薬品供給や衛生管理に係る対応など、地域において必要な役割を果たすことができる体制を確保した場合の評価として連携強化加算が設けられます。連携強化加算は地域支援体制加算を算定している薬局のみが算定可能になります。

連携強化加算:2点

  • 地域支援体制加算を算定
  • 他の薬局と連携した災害や新興感染症の発生時における対応の体制整備
    • ア 医薬品供給・地域衛生管理に係る対応を行う体制
    • イ 都道府県等の行政機関、地域の医療機関、薬局、関係団体等と適切に連携するため、地域の協議会又は研修に積極的に参加
    • ウ 非常時に対応可能な体制を確保していることをホームページ等で広く周知
  • 非常時には都道府県の要請に応じて必要な対応を行う

後発医薬品調剤体制加算

後発医薬品調剤体制加算については、より置き換え率の高い薬局を評価する形に見直されています。

置換率 2020 2022
90%以上 後発医薬品調剤体制加算3 28点 後発医薬品調剤体制加算3 30点
85%以上90%未満 後発医薬品調剤体制加算2 28点
80%以上85%未満 後発医薬品調剤体制加算2 22点 後発医薬品調剤体制加算1 21点
75%以上80%未満 後発医薬品調剤体制加算1 15点 加算の対象外

財務省からは廃止を含めた見直しを検討するよう意見が出されていましたが、置換率を維持することを評価するため3段階の加算が継続される形になりました。80%未満の加算は廃止となりますが、2020年3月時点で置換率の全国平均が77.9%となっていることを考えると当然の結果かと思います。

次回以降の改定では、90%以上を超える施設基準の追加は行われないのではないかと思います。国が目標とする「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」を達成した後は、置換率を維持することが目的となり、後発医薬品調剤体制加算については縮小される方向に進んでいくのではないかと予想しています。

後発医薬品に係る減算

後発医薬品に係る減算については適応範囲が拡大、減算される点数も大きく増える形になりました。

置換率 2020 2022
50%以下 減算の対象外 マイナス5点
40%以下 マイナス2点

2022年9月末までは40%以下の施設基準が適用されるよう猶予期間が設けられていますが、減算についてはマイナス5点が適用されます。

受付回数600回以下の場合、先発医薬品の変更不可の記載がある処方箋の受付回数が50%以上の場合が対象外となることについては変更ありません。

今後の改定では後発医薬品の置換率を維持することが目標となっていくため、減算の範囲はどんどん拡大してくのではないかと予想しています。

参考資料
1) 厚生労働省 令和3年12月22日 診療報酬改定について
2) 厚生労働省 令和4年度薬価基準改定の概要
3) 厚生労働省 調剤医療費(電算処理分)の動向〜令和2年度版〜
4) 財政制度等審議会 令和4年度予算の編成等に関する建議
5) 厚生労働省 令和4年度診療報酬改定説明資料等について(21 令和4年度診療報酬改定の概要)


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ぺんぎんやくざいし

4年制薬学部を卒業後、大学院では特許を取得。その経験を患者さんの身近な場所で活かしたいと考え薬局に就職。薬局では通常の薬局業務に加え、学会発表、研修講師、市民講座など、様々な形で「伝えること」を経験。自分の得た知識を文章にし、伝えていくことの難しさと楽しさを学ぶ。 薬局での仕事が忙しくなる中、後輩に教える時間がなくなり、伝える場としてブログ「薬剤師の脳みそ」の運営を開始。その後はTwitter、Facebook、Instagramなどの各種SNSも開始し、より多くの薬剤師に有意義な情報を提供できるメディアを目指して運営を続けています。

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