ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント

更新日: 2022年4月18日 ぺんぎん薬剤師

ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント②
〜これまでの評価の見直しによる新たな評価体系

2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント2メインの画像1

調剤業務の評価体系の見直し

調剤業務の細分化と見直し

「患者のための薬局ビジョン」1)の中で対物中心の業務から対人中心の業務への転換が示されたことにより、技術料のうち調剤料が高い割合を閉めていることについて厳しい意見が寄せられました。

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厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第500回) 調剤(その3)について

中医協の議論の中では上のグラフのように調剤料の割合は微減しているものの、まだ技術料の半分を占めていることが指摘されています。ですが、調剤料として評価されているものの中には、いわゆる対物業務と呼ばれる薬剤の調製業務だけではなく、処方内容の薬学的分析や調剤設計のような対人業務が含まれており、対物業務と対人業務が入り混じった形になっています。今回の改定では、内服薬の調剤業務において、対物業務と対人業務を細かく分けて整理することで実際の業務における評価を見直すことが試みられています。

2020改定 調剤業務の流れ 位置付け
調剤料 ①患者情報等の分析・評価 対人業務
②処方内容の薬学的分析 対人業務
③調剤設計 対人業務
④薬剤の調製・取り揃え 対物業務
⑤最終監査 対物業務
薬剤服用歴管理指導料 ⑥調剤した医薬品の薬剤情報提供、
 服薬指導、薬剤の交付
対人業務
⑦調剤録・薬歴の記録 対人業務

この考え方に基づき、調剤料と薬剤服用歴管理指導料は廃止され、新たに薬剤調製料、調剤管理料、服薬管理指導料として評価されることになりました。

薬剤調製料の新設〜調剤料の見直し

薬剤調製料は、これまで調剤料として評価されてきたものうち薬剤の取り揃え・監査業務についての評価を行うものです。

日数 2020(調剤料) 2022(薬剤調製料)
内服薬
浸煎薬・湯薬を除く
(1剤につき、3剤まで)
7日分以下 28点 24点
8日分以上14日分以下 55点
15日分以上21日分以下 64点
22日分以上30日分以下 77点
31日分以上 86点
内服薬以外 (略) (変更なし)

内服薬については日数に応じた段階的な評価ではなく、日数に関係なく1剤につき24点という評価に変更されました。内服薬以外の点数については変更ありません。

調剤管理料の新設〜調剤料と薬剤服用歴管理指導料の見直し

調剤管理料は、これまで調剤料として評価されたもののうち処方内容の薬学的分析、調剤設計等と、これまで薬剤服用歴管理指導料として評価されていた薬歴の管理等についての評価を行うものです。

調剤管理料 日数 点数
調剤管理料1
(1剤につき、3剤まで)
内服薬(浸煎薬・湯薬を除く)
7日分以下 4点
8日分以上14日分以下 28点
15日分以上28日分以下 50点
29日分以上 60点
調剤管理料2(1を算定しない場合) 4点

内服薬を1剤でも調剤した場合は調剤管理料1を剤数に応じて算定し、内服薬を調剤しない場合には調剤管理料2を算定します。薬剤調製料には反映されなかった日数に応じた評価が調剤管理料1に反映されていますが、5段階から4段階に縮小されており、内服薬の調剤料と薬剤調製料+調剤管理料1を比較した場合、日数によってプラスとなる場合とマイナスとなる場合があります。

服薬管理指導料の新設〜薬剤服用歴管理指導料の見直し

服薬管理指導料は、これまで薬剤服用歴管理指導料として評価されていたもののうち服薬指導等についての評価を行うものです。

2020(薬剤服用歴管理指導料) 2022(服薬管理指導料)
1 3ヶ月以内、手帳あり 43点 45点
2 1以外 57点 59点
3 特養入所者を訪問 43点 45点
4 オンライン服薬指導 43点  45点
 59点

※4のイは1と同様、ロは2と同様の区分

薬歴管理の部分が調剤管理料で評価されるようになったにも関わらず点数が2点プラスとなっているのは、新たに服薬フォローが算定要件に加わっているためです。また、オンライン服薬指導については対面と同様2段階の評価に見直しされています。

評価体系の変化に伴い見直しが行われたもの

自家製剤加算の見直し

自家製剤加算は調剤料の加算から薬剤調製料の加算に区分変更されています。点数自体には変更がないのですが、錠剤を分割する場合の点数が予製剤と同様に100分の20に相当する点数となるように変更されています。おそらく算定機会が最も多い半錠の点数がマイナスになります。

重複投薬・相互作用等防止加算の見直し

重複投薬・相互作用等防止加算は薬剤服用歴管理指導料の加算から調剤管理料の加算に見直されています。点数や算定要件上の変更は特にありません。

外来服薬支援料2の新設〜一包化加算の廃止

これまで調剤料の加算として評価されていた一包化加算は廃止され、新たに薬学管理料として外来服薬支援料2が新設されました。(これに伴い、これまでの外来服薬支援料は外来服薬支援料1の名称に変更)

点数上の変更はありませんが、調剤技術料から薬学管理料に変更になったことに伴い、算定要件に「必要な服薬指導を行い、かつ、患者の服薬管理を支援した場合」に算定する旨が追加されています。単純な一包化調剤に対する評価から、一包化を必要とする患者さんの服薬管理を行う総合的な評価に変化したことが読み取れます。それ以外の算定要件については変更されていないので、処方上の算定の可否の判断はこれまでと同様の考え方で問題ないと思います。

対人業務の評価の見直し

調剤後薬剤管理指導加算の充実

調剤後服薬管理指導加算は算定要件に変更がないまま、30点のプラスになっています。

2020 2022
調剤後薬剤管理指導加算
(薬剤服用歴管理指導料)
30点 調剤後薬剤管理指導加算
(服薬管理指導料)
60点
・地域支援体制加算の届出を行なっている薬局
・インスリン製剤・SU剤を使用している糖尿病患者
・インスリン製剤・SU剤が追加・変更された場合
・患者・家族・医療機関の求めに応じて服薬フォローを実施
・服薬フォローの結果を医療機関に文書で情報提供

糖尿病患者に対する服薬フォローを評価する調剤後薬剤管理指導加算の評価充実が行われています。現在算定できるのは糖尿病に対してのみとなっていますが、薬局での活動が評価されることで次回以降の改定で適応範囲が拡大する可能性もあります。

服用薬剤調製支援料2の見直し〜2段階評価に変更

服用薬剤調製支援料2については薬局の重複投薬等の解消に係る実績に応じた2段階の評価に変更されました。

2020 2022
服用薬剤調製支援料2 100点 イ 施設基準を満たす場合 110点
ロ イ以外の場合 90点

施設基準は過去1年間に服用薬剤調製支援料1の算定、もしくはそれに相当する実績を有することとなっています。単純に情報提供を行なっている薬局か、実際に重複投薬等の解消につながるような取り組みを行なっているかどうかで評価が異なることになります。

かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師の評価の見直し〜服薬管理指導料の特例の新設

かかりつけ薬剤師指導料(包括管理料)を算定する患者に対して、やむを得ない事情により、患者の同意を得て、かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師が対応する場合の評価が新設されます。

2020 2022
かかりつけ薬剤師指導料 76点 76点
かかりつけ薬剤師包括管理料 291点 291点
かかりつけ薬剤以外が対応した場合 薬剤服用歴管理指導料1 43点
薬剤服用歴管理指導料2 57点
服薬管理指導料1 45点
服薬管理指導料2 59点
連携する薬剤師が対応した場合 新設 服薬管理指導料の特例 59点

かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師は保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験を有し、かつ、当該保険薬局に1年以上在籍している必要があります。一人のかかりつけ薬剤師に対して連携する薬剤師を一人決めることが可能で、その場合、同意書に連携する薬剤師の名前を記載した上で同意を取得しておく必要があります。また、服薬管理指導料の特例を算定できるのは直近の調剤においてかかりつけ薬剤師指導料(包括管理料)を算定した場合のみとなっているので、服薬管理指導料の特例を連続して算定することはできません

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急時等共同指導料)の見直し〜主治医以外の指示による訪問が可能に

これまでは在宅療養を担う保険医療機関の保険医の指示があった場合のみ在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急時等共同指導料)を算定可能でしたが、在宅療養を担う保険医療機関と連携する他の保険医療機関の保険医の指示でも算定可能になります。

退院時共同指導料の見直し〜オンラインでの出席可能に

これまで薬局の薬剤師がビデオ通話可能な機器を用いて共同指導に参加できるのは非常に限定された条件の中だけでしたが、今回の改定によりその条件が撤廃され、オンラインで参加した場合でも退院時共同指導料が算定可能になります。

参考資料
1) 厚生労働省 「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~
2) 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第500回) 調剤(その3)について
3) 厚生労働省 令和4年度診療報酬改定説明資料等について(21 令和4年度診療報酬改定の概要)


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ぺんぎん薬剤師
ぺんぎんやくざいし

4年制薬学部を卒業後、大学院では特許を取得。その経験を患者さんの身近な場所で活かしたいと考え薬局に就職。薬局では通常の薬局業務に加え、学会発表、研修講師、市民講座など、様々な形で「伝えること」を経験。自分の得た知識を文章にし、伝えていくことの難しさと楽しさを学ぶ。 薬局での仕事が忙しくなる中、後輩に教える時間がなくなり、伝える場としてブログ「薬剤師の脳みそ」の運営を開始。その後はTwitter、Facebook、Instagramなどの各種SNSも開始し、より多くの薬剤師に有意義な情報を提供できるメディアを目指して運営を続けています。

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