ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント

更新日: 2022年4月30日 ぺんぎん薬剤師

ぺんぎん薬剤師が解説する2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント③
〜新しく設定された評価と医科の改定による薬局業務の変化

2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント3メインの画像1

対人業務の評価の充実

調剤管理加算

調剤管理料の加算として、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方された患者の服用中の薬剤について、必要な薬学的分析を行なった場合の評価が新設されます。

調剤管理加算(調剤管理料)
イ 初めて処方箋を持参した場合 3点
ロ 2回目以降に処方箋を持参した場合であって処方内容の
  変更により薬剤の変更又は追加があった場合
3点

算定を行うためには、過去1年間に服用薬剤調整支援料を算定している実績(施設基準)が求められます。

6種類以上を服用している患者の処方内容について重複投薬や相互作用、副作用、服用状況等を含めた薬学的分析を行うことで、重複投薬や相互作用、ポリファーマシーによる有害事象を回避することを目的とした点数になります。指導や情報提供まで至らない薬学的分析を評価する点数は初めてじゃないかと思います。

小児特定加算〜医療的ケア児に対する服薬指導の評価

医療的ケア児(18歳未満の人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児)に対する薬学的管理と服薬指導を評価する点数が新設されます。

小児特定加算
服薬管理指導料
かかりつけ薬剤師指導料
350点
在宅患者訪問薬剤管理指導料
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
在宅患者緊急時等共同指導料
450点
在宅患者オンライン薬剤管理指導料
在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料
350点

小児特定加算を算定する際には服薬状況と合わせて服薬管理を行う上での希望を患者やその家族から聞き取り、その情報と薬学的知見を元に調剤を実施、服薬指導を行った上で、確認内容と服薬指導の要点をお薬手帳に記載する必要があります。小児特定加算を算定する場合、乳幼児加算は算定できません

今回、医科の改定で「退院時薬剤情報管理指導連携加算(小児入院医療管理料)」が新設されており、小児特定加算の算定対象となる障害児である患者が退院する際に、入院先の薬剤師から文書で調剤に関する情報提供を受ける機会が増えそうです。そういった連携を深めて小児特定加算の算定を充実させていきたいところです。

服薬情報等提供料3〜入院時持参薬の一元管理

医療機関からの求めに応じて、入院予定の患者の服用薬に関する情報等を一元的に把握し、必要に応じて持参した服用薬の整理を行うとともに、医療機関に対して、当該患者の服薬状況等について文書により提供した場合の評価が新設されます。

服薬情報等提供料 2020 2022
服薬情報等提供料1 30点 30点
服薬情報等提供料2 20点 20点
服薬情報等提供料3 (新設) 50点(3月に1回に限り)

服薬情報等提供料3を算定するにあたっては入院時の服薬情報等の一元管理と合わせて、服用薬の整理を行うことが必須とされています。入院する際には薬局の薬剤師に薬の整理を行なってもらうことが当然となるよう積極的に算定を重ねていきたい点数ですね。

患者の状態に応じた在宅薬学管理

在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料)の加算として「在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算」と「在宅中心静脈栄養法加算」が新設されます。

在宅患者訪問薬剤管理指導料
(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料)
在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算 250点
在宅中心静脈栄養法加算 150点

新設される2つの加算はあくまでも、在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料)の加算であり、(予防)居宅療養管理指導費を算定する場合に加算することはできないので注意が必要です。

在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算

在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている患者に対して、その投与及び保管の状況、副作用の有無等について患者又はその家族等に確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に算定可能です。

施設基準として「麻薬小売業者」と「高度管理医療機器の販売業の許可」を受けていることが必要です。在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を算定する場合、麻薬管理指導加算は算定できません

在宅中心静脈栄養法加算

在宅中心静脈栄養法を行っている患者に対して、その投与及び保管の状況、配合変化の有無について確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に算定可能です。
施設基準として「高度管理医療機器の販売業の許可」もしくは「管理医療機器の販売業の届出」が必要です。

ICTの活用

オンライン服薬指導の見直し〜服薬管理指導料4

0410事務連絡の恒久化を念頭に薬機法の改正が予定されており、それに合わせてオンライン服薬指導に関する制限が撤廃され、対面と同等の評価に見直されます。

2020(薬剤服用歴管理指導料4) 2022(服薬管理指導料4)
イ 3ヶ月以内、お薬手帳提示 43点 45点
ロ イ以外の場合 59点

「オンライン診療により処方箋の交付を受けた患者」、「月1回に限り算定可能」、「オンライン服薬指導の算定回数の割合が一割以下」、「原則3ヶ月以内に対面による服薬指導を受けている」、「服薬指導計画の作成」等の条件や施設基準の届出は廃止。改定前は算定不可とされていた各種加算も算定可能となり、対面による服薬指導(服薬管理指導料1・2)との差はなくなりました。

在宅におけるオンライン服薬指導の見直し〜在宅患者オンライン服薬指導料・在宅患者緊急オンライン服薬指導料

在宅患者オンライン服薬指導料についても見直しが行われ、緊急時には在宅患者緊急オンライン服薬指導料を算定可能となりました。

オンライン(対面) 2020 2022
在宅患者オンライン服薬指導料
(在宅患者訪問薬剤管理指導料)
57点 59点
在宅患者緊急オンライン服薬指導料
(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料)
59点
在宅患者オンライン服薬指導料
(在宅患者緊急時等共同指導料)
59点

「在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施に伴い処方箋の交付を受けた患者」、「週10回を限度とする」、「在宅患者訪問薬剤管理指導料を月一回算定」の等の条件や施設基準の届出は廃止。改定前は算定不可とされていた各種加算については服薬管理指導料4のロと同様のものが算定可能になりました。また、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料に該当する場合は在宅患者緊急オンライン服薬指導料を、在役患者緊急時等共同指導料に該当する場合は在宅患者オンライン服薬指導料を算定することが可能となりました。

電子的保険医療情報活用加算

オンライン資格確認システムの導入に関する点数が新設されます。

電子的保険医療情報活用加算(調剤管理料)
ア 電子資格確認により患者の薬剤情報等を取得した上で調剤を行った場合 3点(月1回に限り)
イ 当該患者に係る薬剤情報等の取得が困難な場合 1点(3月に1回に限り)

施設基準:①レセプトオンラインを導入、
②オンライン資格確認を導入、
③オンライン資格確認システムを通じて薬剤情報等を取得・活用して調剤を実施できる体制について薬局内外に掲示

オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報等を取得した上で調剤を行なった場合にアを算定できますが、患者がマイナンバーカードを忘れた場合や、薬剤情報等の取得に対して同意を得られなかった場合にも1点を算定することが可能となっています。

薬局に影響する医科の診療報酬改定

湿布剤の処方枚数制限

第5部 投薬
通則5 入院中の患者以外の患者に対して、1処方につき63枚を超えて湿布薬を投薬した場合は、区分番号F000に掲げる調剤料、区分番号F100に掲げる処方料、区分番号F200に掲げる薬剤(当該超過分に係る薬剤料に限る。)、区分番号F400に掲げる処方箋料及び区分番号F500に掲げる調剤技術基本料は、算定しない。ただし、医師が疾患の特性等により必要性があると判断し、やむを得ず63枚を超えて投薬する場合には、その理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載することで算定可能とする。

湿布の枚数制限が少し厳しくなっており、70枚だったものが、63枚となっています。

リフィル処方箋

症状が安定している患者に対して、医師の処方により入り及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組みが設けられました。

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実際に4月以降にならないとどの程度普及するかはわかりませんが、いつ受け付けても対応できるように準備をしておきたいですね。簡単に業務の流れを確認してみます。

  • リフィル可能な場合は処方箋の処方欄の下に追加されたリフィル可の欄にチェックが入るのでそこを確認してから調剤を開始します。
  • 調剤後、処方箋は患者に返却し、次回来局時までなくさないよう注意してもらう。薬局は処方箋のコピーを保管。
  • 2回目以降の調剤については、前回の調剤日を起点として服用日数が経過する日(調剤予定日)を基準としてその前後7日以内であれば実施可能。
  • リフィルによる調剤を行う場合は患者の服薬状況等の確認を行い、調剤を行うべきではないと判断した場合は、受診勧告を行い、医師への情報提供を行う。
  • リフィル総使用回数の調剤を完了した場合、(リフィル)処方箋を調剤済み処方箋として薬局に保存する。

リフィル処方箋を発行するかどうか、リフィル処方箋による総投薬期間の判断は患者の病状を元に医師が判断します。薬剤師の役割はその期間のフォローアップです。これからはじまるリフィル処方箋という新しい仕組みが患者さんの服薬治療において良いものにできるように関わっていきたいですね。

参考資料
1) 厚生労働省 令和4年度診療報酬改定説明資料等について(21 令和4年度診療報酬改定の概要)


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ぺんぎん薬剤師
ぺんぎんやくざいし

4年制薬学部を卒業後、大学院では特許を取得。その経験を患者さんの身近な場所で活かしたいと考え薬局に就職。薬局では通常の薬局業務に加え、学会発表、研修講師、市民講座など、様々な形で「伝えること」を経験。自分の得た知識を文章にし、伝えていくことの難しさと楽しさを学ぶ。 薬局での仕事が忙しくなる中、後輩に教える時間がなくなり、伝える場としてブログ「薬剤師の脳みそ」の運営を開始。その後はTwitter、Facebook、Instagramなどの各種SNSも開始し、より多くの薬剤師に有意義な情報を提供できるメディアを目指して運営を続けています。
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