長期収載品の選定療養、特別料金の計算方法や具体的な業務の流れ
参考記事:長期収載品の選定療養対象外、「医療上の必要性」例示疑義解釈を発出、患者負担総額は「定率負担+特別の料金」
厚生労働省は7月17日の中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)で、10月から実施される長期収載品の選定療養について、「医療上の必要性が認められる場合」として選定療養対象外となる例として、長期収載品と後発医薬品の効能・効果に差異があり、長期収載品を処方する必要性があると医師が判断した場合など4つの例を挙げた。患者負担総額は、保険給付となる費用に係る自己負担(1~3割)に、「特別の料金」を加えた額になると説明した。「特別の料金」には消費税が含まれる。いずれも7月12日付の疑義解釈で示していた(資料は、厚生労働省のホームページ )。
10月1日から、長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の選定療養が施行されます。施行直前ということで、薬局として準備するにあたって理解しておいた方がいい部分について簡単にまとめてみたいと思います。
1.長期収載品の選定療養
長期収載品の選定療養がどんな制度かをまとめます。まずは、対象となる「長期収載品」の範囲です。
長期収載品とは、特許が切れ、再審査期間が終了し、後発医薬品が発売されている先発医薬品を指します。長期収載品であればすべて選定療養の対象となるわけではなく、対象となるのは以下のいずれかに該当する場合です。
- 後発医薬品が上市されて5年以上経過した長期収載品
- 後発値薬品への置き換え率が50%を超える長期収載品
※長期収載品を調剤する医療上の必要性がある場合は保険適応となる
対象となる長期収載品を調剤する場合、長期収載品の薬価とその後発医薬品の最高価格帯の薬価の差額の4分の1が保険給付の対象外となりますが、残りの部分については、従来通り保険が適応されます。長期収載品の薬価よりその後発医薬品の最高価格帯の薬価が高い場合や、差額がない場合は選定療養の対象とはなりません。薬価差も含めた対象医薬品についてのリストは、厚生労働省のホームページに掲載されています。
対象医薬品リスト|長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について(令和6年4月19日 事務連絡)
ちなみに「選定療養」とは、保険導入を前提としていないもので、快適性や利便性を含めた上で被保険者により選んで利用されるものです。本来であれば保険外診療と保険診療の併用は混合診療と呼ばれて禁止されていますが、選定療養として認められているものは保険診療との併用が認められており、これを保険外併用療養制度と言います。
後発品が普及し、先発品の価格と差がある場合、保険診療の対象となるのは後発品のみです。先発品を希望する場合は、選定療養費(特別の料金)を払うことで使用可能になります。つまり、後発品が普及している医薬品であれば、後発品を使用するのが基本であり、すべて保険の対象となるのは後発品のみということになります。
2.特別の料金の計算方法
引用:厚生労働省作成・薬局など医療施設に掲示の、選定療養に関して患者さんに知らせるポスター
厚生労働省が作成しているポスターや掲示物、チラシでは、「特別の料金」は「先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当」と記載されていますが、正確にはそんな単純なものではなく、もっとややこしい計算になります。「先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1を元に薬剤料の計算方法で算出した金額に消費税を加えたもの」というのが正確な表現になると思います。ちなみに、「長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1」の額は前述した厚生労働省のホームページに掲載されているリストに記載されています。
対象医薬品リスト|長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について(令和6年4月19日 事務連絡)
なお、長期収載品の薬価から「長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1」を引いたものが「保険外併用療養費の算出に用いる価格」に該当します。
長期収載品の選定療養に該当する場合、リストに記載されているこれらの数値を用いて窓口支払額の計算が行われます。
- 特別の料金:「長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1」を用いて1調剤ごとに薬剤料の計算方法で点数を出し、それを円に変換した上で消費税を加えたもの
- 保険外併用療養費:薬価の代わりに「保険外併用療養費の算出に用いる価格」を用いて調剤報酬を計算し、負担割合に応じて自己負担額を計算
これらの合計が窓口支払額になります。ポイントは、
② 単純な薬価差の4分の1ではなく薬剤料と同じ計算方法で特別の料金を算出すること
② 保険部分(保険外併用療養費)は特別の料金の対象となる部分を除いて計算するため選定療養開始前の金額よりも安くなること
です。また、薬剤料の計算では点数に変換する際に五捨五超入が行われるため、単純な差額よりも金額の上下があること、15円以下の場合はすべて1点として計算するため、差額がどれだけ小さくても調剤単位あたり10円(税込11円)の特別な料金が発生するということです。点数化した後に日数倍する内服薬と送料で計算する内服薬以外では内服薬の方が特別の料金の額が大きくなりやすいことも知っておきましょう。
ちなみに、選定療養費の支払いを受ける場合はそのことを患者に説明することと合わせて、薬局内の見やすい場所に選定療養に関する掲示を行わなければなりません。前述したポスターは厚生労働省のサイトからダウンロードできるので忘れず掲示しておきましょう。