第105回国試の傾向④ 「薬理」&「病態・薬物治療」科目の壁が消えた!
臨床では、「医薬品の作用機序を考えて患者に応じた処方提案をおこなう」、「副作用対策の提案に医薬品の作用機序の知識を役立てる」といった経験があると思います。「薬理」と「病態・薬物治療」の知識を横断して活用させてこそ、薬剤師の職能が発揮できる。まさにできる薬剤師の見せ場です。
2013年12月25日に発信され、2015年入学生より適応されている薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂(改訂コアカリ)において、それまで別々の項目で扱われていた「薬理」と「病態・薬物治療」が一つの項目になりました。実際に改訂コアカリで学修した薬学生が薬剤師国家試験(国試)を受験するのは第106回国試からですが、既に最新国試(第105回)の理論問題でも第104回国試に続いて、「薬理」と「病態・薬物治療」の連問が3連問も出題されています。その一つに是非チャレンジしてみてください!
問1−2
47歳男性。身長172cm、体重85kg。38歳時より高血圧を指摘され、下記処方にて治療を受けていた。日常、ビールを飲むことが多い。
(処方)
カンデサルタン シレキセチル錠8mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分
子供の運動会で短距離走に出場した。運動会終了後、懇親会にて飲酒した次の日、右足母趾の腫脹と痛みを認めた。その後、痛みは徐々に増悪し、患部の赤く腫大した状態が2日間持続していると訴え受診した。
問1 正答率※:90%
患者が訴えている症状を速やかに改善させるために処方される薬物として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- フェブキソスタット
- ベンズブロマロン
- メトホルミン塩酸塩
- ナプロキセン
- アトルバスタチンカルシウム水和物
問2 正答率※:68%
精査の結果、この患者では左腎結石を認め、以下の検査結果が得られた。
検査値:
血圧136/86mmHg、空腹時血糖値110mg/dL、HbA1c 6.1%(NGSP値)、LDL-C140mg/dL、TG(トリグリセリド)210mg/dL、血清クレアチニン値1.1mg/dL、eGFR
68mL/min/1.73m2、BUN 21mg/dL、尿酸値10.5mg/dL
患者が訴えている症状が寛解した後、その症状の再発を予防する目的で投与される薬物に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- キサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸生成を抑制する。
- 腎尿細管において、尿酸の再吸収を抑制する。
- 尿酸をアラントインと過酸化水素に分解する。
- シクロオキシゲナーゼを阻害する。
- チューブリンと結合して微小管重合を阻害し、好中球の遊走を抑制する。
解答・解説
問1−2
患者の嗜好(ビールを飲むことが多い)や訴え(右足母趾の腫脹と痛みを認めた。その後、痛みは徐々に増悪し、患部の赤く腫大した状態が2日間持続している)から、痛風発作を発症したことが推測される。
問1 解答 4 正答率※:90%
痛風発作の極期には、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を短期間に大量投与する。また、痛風発作の前兆期にはコルヒチンが用いられる。フェブキソスタットやベンズブロマロンは高尿酸血症の治療薬であるが、症状を速やかに改善させる医薬品ではない。むしろ、痛風発作時に尿酸値を急激に変動させる薬物を投与すると、症状が悪化するおそれがあるため、発作が治まってから投与を開始する。
問2 解答 1 正答率※:68%
本患者は、尿酸値が10.5mg/dL〔基準値:3.5~7.0mg/dL(男性)〕であり、高尿酸血症と推測される。発症した痛風発作が寛解した後に、再発を予防することを目的として尿酸降下薬が用いられる。尿酸降下薬は、尿酸生合成阻害薬、尿酸排泄促進薬、尿酸分解酵素薬に分類される。
本患者には、以下の理由からキサンチンオキシダーゼ阻害により尿酸の生成を抑制する尿酸生合成阻害薬(フェブキソスタットなど)を用いることが望ましい。
(1) |
尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)は、腎尿細管において、尿酸の再吸収を抑制し、尿中尿酸排泄量を増加させることで腎結石(尿酸結石)の症状を悪化させるおそれがあることから、腎結石を伴う患者には禁忌であり、左腎結石が認められている本患者には不適切である。 |
(2) |
尿酸をアラントインと過酸化水素に分解する尿酸分解酵素薬であるラスブリカーゼは、がん化学療法に伴う高尿酸血症に用いられるため、本患者には不適切である。 |
※薬学ゼミナール自己採点システムによるデータ(12,641名参加)より