20代の薬剤師の平均年収は低い?この先の見通しや年収アップのポイントも


薬剤師として働き始め、少しずつ仕事に慣れてくる20代。
日々の業務に追われながらも、「自分の年収はまわりと比べてどうなんだろう?」と、ふと気になることはありませんか。
将来のキャリアプランを考えるうえでも、現在の収入の立ち位置を把握しておくことは大切です。
この記事では、20代の薬剤師の平均年収について、さまざまな角度から詳しく解説していきます。
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20代の薬剤師の平均年収はどのくらい?

薬剤師は高年収というイメージがありますが、毎月給与明細をもらって「思ったより少ないな」と感じることはないでしょうか。
20代の薬剤師の平均年収はどのくらいか、確認してみましょう。
20〜24歳の薬剤師の平均年収
まず、新卒で働き始める人が対象となる20〜24歳の薬剤師の平均年収をみていきましょう。
男女計 | 男 | 女 | |
20~24歳 | 400万円 | 414万円 | 384万円 |
※平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和6年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
厚生労働省が発表している「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、この年齢層の薬剤師の平均年収は、おおよそ400万円となっています。
大学の薬学部を卒業してすぐの年代であり、経験年数が浅いため、薬剤師全体の平均年収よりは低い水準からのスタートとなります。
しかし、日本の同年代の平均年収と比較すると、十分に高い水準にあるといえるでしょう。
25〜29歳の薬剤師の平均年収
次に、業務経験を3〜5年ほど積み、後輩の指導なども任されるようになる25〜29歳の薬剤師の平均年収です。
25〜29歳の薬剤師の平均年収
男女計 | 男 | 女 | |
25~29歳 | 501万円 | 512万円 | 495万円 |
同じ厚生労働省のデータを見ると、平均年収は約500万円まで上昇します。
20代前半と比較して100万円以上アップしており、経験やスキルの向上が着実に収入に反映されていることがわかります。
一人前の薬剤師として認められ、仕事の幅が広がることで、それに伴い給与も上がっていく時期と言えるでしょう。
男女で平均年収に違いはある?
年収を考えるうえで、男女によってどのくらい差があるのかも気になるところです。
専門職である薬剤師は、新卒の時点から、同じ仕事であれば同じ給与となります。
そのため、20代の薬剤師においては、男女間で平均年収に差はないということになります。
また、薬剤師は女性に人気の職業で、女性の割合が多くなっています。
そのため、平均年収も女性の給与の影響が大きいといえます。
しかし、上記のデータをみると、男性のほうが平均年収は高くなっています。
この理由としては、女性は通いやすさや働きやすさを考えて職場を選ぶことが多いのに対し、男性は給与の高さや昇進の可能性を重視することが考えられます。
また、20代後半は、女性にとっては出産や育児といったライフイベントによって働く環境が大きく変わる時期です。
育児のために時短勤務やパートを選択する人が増え、年収にも影響を与えています。
【年齢別】薬剤師の平均年収

20代の平均年収はだいたい45000万円台であることがわかりました。
では、この先、薬剤師として働き続けると、年収はどのように変化するのでしょうか。
薬剤師の年収はこの先どのくらいアップする?
20代で順調なスタートを切ったあと、薬剤師の年収はどのように推移していくのでしょうか。
薬剤師は専門職であり、基本的な調剤や服薬指導といった業務は全国どこでも共通しています。
そのため、経験年数やスキルの蓄積が評価されやすい職業であるといえます。
ただ、業務内容が大きく変わらないということは、同じように働いているだけでは大幅な給与アップは望めない面もあります。
年収アップのためには、管理職に昇進できるかがカギとなります。
薬剤師の年齢別平均年収
男女計 | 男 | 女 | |
20~29歳 | 450万円 | 463万円 | 439万円 |
30~39歳 | 589万円 | 639万円 | 542万円 |
40~49歳 | 657万円 | 731万円 | 589万円 |
50~59歳 | 727万円 | 784万円 | 677万円 |
60~69歳 | 622万円 | 626万円 | 598万円 |
上記の調査で年齢階級別に平均年収をみていくと、30代では500万円台に乗り、40代、50代と着実に上昇を続けていきます。
年収のピークを迎えるのは50代で、約730万円という水準となります。
30〜40代は、昇進して給与アップする人とそうでない人との差がついていく年代です。
40代になると、年収の男女差は1400万円を超えます。
これは、男性が管理職に就くのに対し、女性は家庭との両立の難しさから管理職となる人が少ないことが影響していると考えられます。
もうひとつ目を引くのが、定年退職後の60代も650万円台という高年収をキープしていることです。
医療系の資格職である薬剤師は、初任給も高いですが、定年を過ぎたからといって給与が極端に下がることはありません。
これは薬剤師の大きな強みであり、働き続けるメリットたといえるでしょう。
もちろん、ここでみてきた数値はあくまで平均値であり、働く職場や役職、個人のスキルによって金額は大きく変わってきます。
ひとつの目安として、将来のキャリアを考える際の参考にしてください。
薬剤師の生涯年収はどのくらい?
薬剤師の生涯年収について調べた厚生労働省の資料によると、薬剤師の生涯年収は次のようになっています。
薬剤師の生涯年収 | 平均 |
病院薬剤師(常勤) | 2億3280万円 |
薬局薬剤師(常勤) | 2億2768万円 |
薬剤師 | 2億3024万円 |
薬剤師が新卒から定年まで働き続けた場合の生涯年収は、一般的に2億円から2億5千万円程度と推計されています。
これは、他の職種を含めた全体の平均生涯年収と比較しても高い水準です。
安定した収入を得られることは、薬剤師という職業の大きな魅力のひとつと言えるでしょう。
年収アップのポイントは役職
薬剤師の年収を大きく左右する要素として、役職に就くかどうかがあげられます。
たとえば、薬局の管理薬剤師や複数の店舗を統括するエリアマネージャー、病院の薬剤部長といった管理職に就くことで、役職手当が支給され、年収は大幅にアップします。
一般の薬剤師から管理職になることで、年収が100万円以上増えることも珍しくありません。
ただ、薬剤師の主な職場である薬局や病院は、サラリーマンが働く企業のようにポストは多くありません。調剤薬局や病院では、管理職が薬局長1人ということもあります。
上司がずっと勤め続けている限り、自分は一般薬剤師でいなければならないという人も多いでしょう。
また、調剤薬局や病院の収入は調剤報酬が基本となるので、人件費の総額も限られています。
個人の努力で売上を上げてインセンティブを得る、といったしくみもありません。
このような状況から、職場に昇進できるルートがあるかどうかが、年収に大きな影響を与えることになります。
【職場別】薬剤師の平均年収

働く職場によっても、薬剤師の平均年収には違いが見られます。それぞれの職場の特徴とあわせて見ていきましょう。
調剤薬局
調剤薬局は、薬剤師の最も一般的な勤務先です。
薬剤師コラムの調査によると、調剤薬局勤務の薬剤師の平均年収は517万円となっています。
初任給は比較的高めに設定されていることが多いですが、その後の昇給カーブは比較的おだやかな傾向があります。
ただし、大手チェーンか地域密着型の中小薬局かといった企業の規模や、かかりつけ薬剤師としての専門性、在宅医療への関与度などによって収入は変動します。
病院
薬剤師コラムの調査によると、病院勤務の薬剤師の平均年収は474万円となっています。
病院薬剤師の年収は、調剤薬局やドラッグストアと比較すると低い傾向にあります。
特に若手のうちはその差を感じやすいかもしれません。
しかし、チーム医療の一員として、がんや感染症、緩和ケアといった専門性の高い知識やスキルを身につけられるという大きなメリットがあります。
また、上記の生涯年収のデータにあるように、定年まで働き続ければ、他の職場と比べて生涯年収が少ないということはありません。
ドラッグストア
ドラッグストアで働く薬剤師は、調剤業務に加えて、OTC医薬品の販売や健康相談、店舗運営に関わる業務など、幅広い役割を担います。
薬剤師コラムの調査によると、ドラッグストア勤務の薬剤師の平均年収は、調剤・OTC併設のドラッグストアが528万円、OTCのみのドラッグストアが500万円となっています。
ドラッグストアは、調剤以外の販売や店舗管理の業務をしなければならないことや、土日祝日の勤務があることなどから、年収は他の職場に比べて高い水準に設定されていることが一般的です。
店長やエリアマネージャーといった管理職へのキャリアパスも明確で、昇進による年収アップも期待できます。
一般企業
製薬会社のMR(医薬情報担当者)や研究開発職、学術担当など、一般企業で働く薬剤師もいます。
こうした企業、特に大手製薬会社の場合、年収は非常に高い水準にあり、30代で1000万円を超えることも珍しくありません。
ただし、MRでは営業成績が厳しく問われたり、全国転勤があったりと、薬局や病院とは異なる厳しさや働き方が求められます。
20代薬剤師 今後の年収アップにつながる働き方のポイント

将来の年収をより高めていくためには、20代のうちからキャリアを意識して行動することが重要です。
ここでは、年収アップにつながる働き方のポイントをいくつかご紹介します。
20代のうちに幅広いスキルを身につける
まずは、日々の調剤業務を正確に行うことは大前提として、それ以外のスキルを積極的に身につけることをお勧めします。
たとえば、今後ますます需要が高まる在宅医療の知識や、がん、糖尿病などの特定の領域に関する深い専門性、あるいは漢方や栄養学といったプラスアルファの知識も強みになります。
かかりつけ薬剤師として患者さんから信頼される存在になることが、薬局の売り上げにも貢献し、結果的に自身の価値を高めることにつながります。
管理職になるためにはどうすればいいかを考える
先ほども述べたように、管理職になることは年収アップの大きな鍵です。
将来、管理薬剤師やマネージャーを目指すのであれば、20代のうちから「管理職には何が求められるのか」を意識していきましょう。
調剤スキルだけでなく、スタッフのマネジメント能力、売上や在庫の管理能力、他職種との連携を図るコミュニケーション能力などが必要です。
上司の仕事ぶりを観察し、少しずつでも店舗運営の視点を養うことが大切です。
昇進の可能性のある職場で働く
自身の努力はもちろんですが、所属する組織の人員体制や制度もキャリアに大きく影響します。
勤務先の調剤薬局が小規模だったり、家族経営だったりする場合、そもそも昇進できるポストがありません。
そのような職場で働いていると、どんなにスキルがあっても昇進することはできません。
キャリアパスが明確に示されており、実力や成果が正当に評価される昇進・昇給制度が整っている職場で働くことは、モチベーションを維持し、着実に年収を上げていく上で非常に重要です。
就職や転職の際には、給与額だけでなく、そうした企業の体制や文化にも目を向けてみましょう。
将来につながる資格を習得する
薬剤師としての専門性を客観的に示すために、認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得することも有効な手段です。
研修認定薬剤師の資格は、更新のために継続的な学習が求められるので、知識の維持向上に役立ちます。
さらに、外来がん治療認定薬剤師や感染制御認定薬剤師など、より専門性の高い資格は、病院でのキャリアアップや、専門性を重視する薬局への転職に有利に働く可能性があります。
資格手当が支給される職場であれば、昇給にもつながります。
副業して経験値を上げる
時代の流れのなかで、副業を認める職場も増えています。
将来のキャリアを見据えたとき、副業は収入を増やすだけでなく、本業ではできない経験値を積むための手段となります。
たとえば、週末に単発の派遣薬剤師として普段と違う環境で働けば、本業の職場ではあまり扱わない診療科の処方箋に触れる機会や、異なる業務フローを体験することができます。
これは薬剤師としての対応力を高めることにプラスとなるでしょう。
また、専門知識を活かしてメディカル系のネット記事を執筆するなど、調剤以外の分野に挑戦することも視野を広げてくれます。
もちろん、本業に支障が出ないよう時間管理をすることは大前提ですが、多様な経験は自身の市場価値を高め、将来のキャリアの選択肢の広がりにつながるかもしれません。
キャリアアップのために転職する
現在の職場で昇進や昇給が見込めないと感じる場合は、新たな環境を求めて行動することも一つの選択肢です。
高い専門性や良い条件、希望するキャリアパスが実現できる職場が見つかれば、キャリアアップのための転職も積極的に検討しましょう。
特に20代はポテンシャルを評価されやすく、転職市場において価値が高い時期といえます。
実際に転職する際には、薬剤師専門の転職エージェントに相談しながら行動すると、効率よく行動することができます。
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まとめ

20代の薬剤師の年収は、キャリアのスタート地点として恵まれた水準にあります。
そして、その後の働き方次第で、年収をさらに大きく伸ばしていくことが十分に可能です。
20代は、薬剤師としての基礎を固めると同時に、将来を見据えてスキルを磨き、キャリアの方向性を考えるための非常に重要な時期です。
今回紹介した情報を参考に、ご自身のキャリアプランを描き、充実した薬剤師ライフを送るための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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