薬学部って編入できるの?30代から薬剤師を目指す人の成功ガイド②


30代からでも薬剤師を目指すことは十分に可能です。薬剤師国家試験を受験するには薬学部で6年間学ぶ必要がありますが、社会人経験を活かして学び直しに挑戦する方も多くいらっしゃいます。
薬剤師は専門知識やスキルが重視される職業で、高齢化や医療の多様化に伴い需要が増え続けているのが現状です。薬剤師を目指す際には、薬学部への入学手続きや学費の準備が欠かせませんが、奨学金制度を活用すれば学業と生活を両立しやすくなります。
本記事では、薬剤師を目指す理由や準備方法、転職成功のポイントを解説しますので、薬剤師へのキャリアチェンジを検討している方はぜひ参考にしてください。
前回の記事はこちら
30代で薬剤師免許を取りたい方へ、30代で薬剤師を目指す成功ガイド①
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(エムスリーキャリア)

薬剤師になるには国家試験に合格する必要がある

薬剤師になるには、薬剤師国家試験に合格して薬剤師名簿に登録しなければいけません。30代であっても国家試験を受けるには6年制薬学部を卒業するか、卒業見込みであることが条件です。
薬学部への進学には、一般入試だけでなく、社会人入試や編入学制度を利用する方法もありますが、大学によっては倍率が高く、入学が難しい場合があります。
経済学部など別の学士を持つ方が薬学部に編入できるかどうかは、大学や編入制度によって異なるため、各校の募集要項を確認しましょう。
また、厚生労働省が発表している「第108回薬剤師国家試験 大学別合格者数」によると、国家試験の合格率は約7割と比較的高めですが、そのレベルに到達するまでには多くの努力と時間を要します。
資格を取得すれば医療現場や製薬業界などでの活躍が期待される一方、その道のりには困難も伴うことを十分認識しておきましょう。
30代からでも薬剤師資格を取得するべき3つの理由

30代からでも薬剤師資格を取得して、薬剤師を目指すべき理由には、主に以下の3つがあります。
- 収入が安定している
- 住まいの近くで働ける
- 独立を目指すことができる
30代からでも、薬剤師資格の取得をおすすめする理由を、それぞれ詳しく解説します。
収入が安定している
30代からでも薬剤師資格の取得をおすすめする理由の一つは、収入が安定しているためです。
ちなみに、薬剤師の平均年収は約583万円です。
※一般労働者の平均年収は、厚生労働省「付表2 一般労働者の性、雇用形態別賃金及び雇用形態間賃金格差の推移/令和4年賃金構造基本統計調査の概況」より、男女計の正社員・正職員の賃金に12を掛けた数字を平均年収としている
薬剤師は需要が安定している点も魅力です。厚生労働省によると、令和5年度の薬剤師の有効求人倍率は3.41倍となっています。
参照:job tag /厚生労働省
調剤薬局や病院だけでなく、製薬会社やドラッグストアでも活躍の場が広がっており、キャリアアップや勤務地選択によって収入を増やせる可能性があります。
さらに、薬剤師は専門知識や資格が重視される職業で、年齢を問わず挑戦しやすいのが特徴です。30代からでも新たな活躍の場を得るチャンスは十分にあります。
住まいの近くで働ける
薬剤師資格は、30代からの取得であっても「自宅近くで働ける」「生活リズムに合わせた働き方がしやすい」というメリットが大きく、これからライフステージが変化していく方々にとって魅力的な選択肢です。調剤薬局や病院、ドラッグストア、製薬会社などさまざまな勤務地・働き方があり、地域社会に貢献しながら自分らしく働き続けることができます。
資格取得までは勉強時間の確保や学費などの課題もありますが、長期的なキャリアを考えると有意義な投資となるはずです。自分のライフスタイルや将来設計に合わせて職場を選択できる点こそ、薬剤師を目指す最大のメリットの一つといえます。
独立を目指すことができる
30代からでも薬剤師資格をおすすめする理由の一つは、独立を目指すことができるからです。
薬剤師としての知識と経験を活かし、自分の薬局を開業すれば、地域医療に貢献できます。さらに、独立することで収入を増やし、働き方の自由度を高めることも可能です。
地方で薬局を開業すれば、医療資源の乏しい地域を支えられます。30代から薬剤師資格を取得したとしても、独立開業の道が開けるでしょう。ただし、独立開業は自由な働き方を実現できる一方で、失敗するリスクもあります。
30代から薬剤師を目指すときのオススメ準備3つ

30代から薬剤師を目指すときにやるべきオススメの準備は、主に3つあります。
- 薬剤師を目指す目的を明確にする
- 自分の持っているスキルや経験をまとめる
- 現在のライフプランを修正する
30代から薬剤師を目指すときにやるべき準備を、それぞれ詳しく解説します。
薬剤師を目指す目的を明確にする
30代で薬剤師を目指すうえでは、まず「なぜ薬剤師になりたいのか」という目的を明確にすることが大切です。目的があいまいなままだと、学習の途中で挫折してしまったり、自分が理想とするキャリアを築きにくくなったりする恐れがあるからです。
たとえば、「収入を増やしたい」「安定した職業に就きたい」「医療現場で貢献したい」など、動機をはっきりさせておくと、学習計画や仕事の選択肢を考える際に指針ができるため、モチベーションが維持しやすくなります。また、30代は時間や費用に制約がある場合も多いですが、目的を明確にしておけば限られたリソースを効率的に使うことができます。
やるべき学習内容や必要なスキルがはっきりするので、無駄を省きながら目標に集中しやすくなるのです。さらに、資格取得後にどのような職場で働きたいか、どんな働き方をしたいかを具体的にイメージしやすくなるというメリットもあります。
このように、薬剤師を目指す理由をしっかり考えておくと、学習や転職活動の過程が明確になり、結果として目標を達成しやすくなります。
自分の持っているスキルや経験をまとめる
30代から薬剤師を目指すなら、これまでに培ったスキルや経験を整理することが大切です。今持っている知識や資格を明確にすれば、学習計画を立てやすくなり、転職活動の際に効果的に自己アピールできます。
たとえば、接客や営業の経験があれば、薬局勤務での患者とのコミュニケーションに活かせます。さらに、まとめたスキルや経験をアピール材料として提示できるため、面接時に強みを伝えやすくなるでしょう。薬剤師を目指すにあたっては、自身の資質を正確に把握し、最大限に活かせる準備をしておきましょう。
現在のライフプランを修正する
30代から薬剤師を目指す場合は、現在のライフプランを見直すことが大切です。薬剤師の資格取得には最低でも6年かかり、その間に学費や生活費が必要になります。そのため、奨学金や貯金などの学費の捻出方法を検討するとともに、家計を見直して支出に優先順位をつけることが重要です。
厚生労働省の調査では、2302人中805人(35%)の学生が奨学金制度を利用しており、多くの人が経済的負担を軽減する手段として活用していることがわかります。
参照:検討会のとりまとめへの対応状況等 (薬剤師確保・卒後臨床研修) 第12回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 /厚生労働省
また、学業と生活を両立するには、家族の理解を得ることも欠かせません。
30代から薬剤師への転職を成功させる5つのポイント

薬剤師免許取得後に、30代からの薬剤師転職を成功させるポイントは、5つあります。
- 経験やスキルに合った転職先を選択する
- 正社員以外のパートや派遣の選択肢も持つ
- 家族の理解を得る
- 希望条件を明確にして優先順位を付ける
- 薬剤師専門の転職エージェントを利用する
ポイントをそれぞれ詳しく解説します。
経験やスキルに合った転職先を選択する
30代から薬剤師への転職を成功させるためには、自身の経験やスキルに合った職場を選ぶことが大切です。社会人経験を強みにアピールすると、書類選考や面接を突破しやすくなり、転職活動がスムーズに進みます。
たとえば、接客や営業の経験がある場合は、患者対応やコミュニケーション能力を活かせる調剤薬局やドラッグストアが適しています。まずは、これまでの経験と現在のスキルを整理してから、最適な転職先を選びましょう。
正社員以外のパートや派遣の選択肢も持つ
30代から薬剤師への転職を成功させるには、正社員だけにこだわらず、パートや派遣という働き方も視野に入れることが大切です。業務内容が比較的限定される場合が多いため、未経験のる方でも採用されやすい傾向があります。パート勤務は家庭との両立がしやすい点が魅力であり、派遣はさまざまな職場を経験する中でスキルを磨きながら正社員へのステップアップにつなげられます。
薬キャリエージェントの調査によると、派遣薬剤師の平均時給は3,341円で、1日8時間を20日勤務すると月に50万円以上の収入が得られる計算です。正社員以外の選択肢を知っておくことで、自分に合った働き方を見つけやすくなるでしょう。
家族の理解を得る
30代から薬剤師への転職を成功させるには、家族の理解を得ることが大切です。資格取得にかかる費用や勉強に割く時間が増えれば、家庭全体に負担がかかります。
未経験からの挑戦の場合、学費と学習時間を確保する必要があるため、事前に家族と話し合って収支計画や家庭内の役割分担を明確にしておきましょう。家族の協力があれば転職への不安が軽減され、新しい学びや仕事にも集中しやすくなります。
希望条件を明確にして優先順位を付ける
30代から薬剤師への転職を成功させるには、希望条件を具体的に整理し、優先順位を付けましょう。すべての希望を満たす求人は少ないため、妥協点と優先事項をあらかじめ明確にしておく必要があります。
たとえば、「給与を重視し、勤務地は柔軟に考える」といった基準を設ければ、効率よく候補を絞り込めます。希望条件が整理されていると、求人サイトでも応募できる求人が探しやすくなるでしょう。
薬剤師専門の転職エージェントやサイトを利用する
30代から薬剤師への転職を考えるなら、薬剤師専門の転職エージェントやサイトを利用しましょう。一般の求人サイトでは見つからない非公開求人や好条件の案件が豊富にあり、希望条件に合った職場を提案してもらえます。さらに、履歴書の添削や面接対策といったサポートが受けられるため、効率的に転職活動を進められる点も大きな魅力です。
業界や地域の求人動向に詳しい担当者から具体的なアドバイスを得ることで、より最適な転職先を見つけやすくなります。専門サービスを活用すれば、求人選定から応募までスムーズに進み、理想の職場に出会える可能性が高まります。
30代から薬剤師を目指す際の注意点5つ

30代から薬剤師を目指す際の注意点をご紹介します。
- 6年制の薬学部を卒業しなければならない
- 働きながら資格を取得するのは簡単ではない
- 転職するとキャリアはリセットされる
- 進学費用が必要になる
- 最初から高収入を獲得するのは難しい
薬剤師を目指す際の注意点を、それぞれ詳しく解説します。
6年制の薬学部を卒業しなければならない
30代から薬剤師を目指す場合、6年制の薬学部を卒業する必要があることを理解しておかなければなりません。薬剤師国家試験を受けるには6年間の学びが必須であり、その間の生活や時間の使い方が重要になります。
学費だけでなく、生活費や勉強時間の確保も求められるため、大きな負担がかかります。国立大学の6年間の授業料は約350万円、私立大学では1,000万円。
(国立大学は、年間授業料約54万円、入学金は28万円です。私立大学は、年間授業料は約120万円、入学金は約40万円です。)
※国立大学の費用は東北大学薬学部、私立大学は大阪医科薬科大学を参考にしています。
薬剤師になるためには、6年制の薬学部に入学し卒業する必要があることを覚えておきましょう。
働きながら資格を取得するのは難しい
30代から薬剤師を目指す際、働きながら資格を取得するのは困難です。薬剤師は国家資格で、6年制の薬学部で膨大な内容を学ぶ必要があります。
大学入学後は、化学や生物といった基礎科目から、病態生理や薬物療法といった専門科目まで、幅広い知識を修得します。6年制薬学部では医療現場での実習を行い、実務に必要な臨床能力やコミュニケーション能力、チーム医療の重要性も学ぶのです。
授業や実習、試験対策に多くの時間を費やすため、フルタイムで働きながらでは勉強時間の確保が難しいでしょう。
そのため、フルタイムの仕事からアルバイトに変わったり、学業に集中する期間を確保したりするなど、自分の状況に応じて変えていく必要があります。
薬剤師資格の合格率は、令和5年度の試験では69%です。試験自体の合格率は低くはありませんが、資格取得までの難易度は高くなっています。
参照:第108回薬剤師国家試験の結果について /厚生労働省
転職するとキャリアはリセットされる
30代から薬剤師を目指す場合、現在のキャリアはリセットされます。今までの業務経験やスキルを活かしにくく、新しい分野でゼロからのスタートとなる場合が多いです。異業種での経験は薬剤師としての専門職に直結しにくく、収入やキャリアが一時的に低下する可能性があります。
しかし、薬剤師としてキャリアを積むと、専門知識を活かしながら働きやすい職場環境を手に入れ、将来的に収入が安定させることができます。
進学費用が必要になる
30代から薬剤師を目指す場合、進学費用が必要になります。薬剤師資格を取得するには、6年制薬学部への進学が必要で、入学金や授業料などが発生します。
たとえば、国立大学の6年間の授業料は約350万円ですが、私立大学では1,000万円を超えます。
学費に加え、教材費や実習費、生活費も必要となるため、総額はさらに高額になるでしょう。そのため、進学を決断する前に、しっかりと資金計画を立てる必要があります。奨学金の利用や貯蓄の見直しを検討し、経済状況に合った進学プランを準備すると、学業に専念しやすくなるでしょう。
奨学金(日本学生支援機構)は、第一種奨学金(無利息)と第二種奨学金(利率 上限年3%)があります。第一種奨学金(無利息)を借りられると、利息がかからないため、返済しやすいのがメリットです。
最初から高収入を獲得するのは難しい
30代から薬剤師を目指す場合、最初から高収入を期待するのは難しいことを認識しておきましょう。薬剤師の給与は、経験やスキル、勤務先の条件によって異なります。
30代の新卒で薬剤師としてスタートすると、初任給は一定水準に留まり、実務経験を積まなければ高収入にはつながりにくいです。たとえば、大手ドラッグストアでキャリアを積んだり、管理薬剤師や専門薬剤師を目指したりすることで、責任の重さなどに伴って収入がアップしていきます。
また、地方勤務や夜間対応を行う薬局では、高い給与が設定されている場合もあります。薬剤師の平均年収が最も高いのは宮崎県の717.7万円です。全国の平均年収は584.3万円となっています。
※平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額の小数点二桁以下を四捨五入した数字を平均年収として算出
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まとめ

30代からでも薬剤師を目指すことは可能です。薬剤師を目指すには、6年制薬学部で学ぶ必要があります。
薬剤師は専門性が求められ、安定した収入が得られるうえ、さまざまな職場を選択できるのが魅力です。転職にはキャリアのリセットや進学費用の負担が伴いますが、奨学金を活用し、自分のスキルに合った職場を選ぶことで、理想の人生を進められます。
「30代だから…」と諦める必要はなく、今からでも薬剤師資格の取得を目指しましょう。
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