通信制大学で薬剤師資格は取れる?30代から薬剤師を目指す人の成功ガイド③


社会に出て働き始めて初めてわかることはたくさんあります。ニーズの高い職種であるかどうかや、給料もそのひとつといえるでしょう。
高齢化が進む日本の社会において、薬剤師はこれからも社会的ニーズの高い職業の一つです。給料も高い部類に入るでしょう。
客観的に薬剤師という職を見たときに、一度社会に出て働いている30代の中には「薬剤師を目指せば良かった」と思う方も多いのではないでしょうか。
そのように感じている30代の中には、働きながら学べる手段として、通信制大学で薬剤師免許の取得を検討している方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、通信制大学で薬剤師免許を取得することはできるのかと、現実的にとるべきルートについて解説します。
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そもそも、30代からでも薬剤師を目指せる?

30代から薬剤師をめざすことはできるのでしょうか?
結論から言えば、30代から薬剤師になることは可能です。
ただし、薬剤師になるためには、大学での6年間の専門教育と国家試験合格が必要であり、それなりの時間と費用、努力が求められます。
30代からの学びなおしという挑戦には覚悟が必要ですが、実際に、社会人経験を経てから薬学部に入学し、薬剤師として活躍している人も多く存在します。
大切なのは、年齢を理由に諦めるのではなく、「絶対に薬剤師になる」という強い意志と、目標達成のために努力し続ける覚悟を持つことが重要です。
通信制大学で薬剤師免許をとることは可能か?

近年、社会人の学び直し(リスキリング、とも言います)ニーズの高まりを受け、大学が社会人の学び直しを積極的にサポートする動きが広がっています。
キャリアアップやスキルアップを目指す社会人向けに、時間や場所に縛られない柔軟な学習機会が提供されています。
そのひとつに通信制大学があります。
では、通信制大学で薬剤師免許をとることはできるのでしょうか?
通信制大学とは
通信制大学は、自宅での学習を基本とし、スクーリング(面接授業)や試験などを経て卒業資格を取得できる教育機関です。
仕事や家庭と両立しながら学べる通信制課程は、多様な学部・学科で開講され、社会人の新たな学びの選択肢となっています。
時間や場所に制約を受けにくいというメリットがあり、働きながら学習したい社会人にとって有効な選択肢となっています。
薬学部のある通信制大学はない
ただ、残念ながら、現在のところ、日本には通信制で薬剤師資格を取得できる薬学部は存在しません。
薬剤師になるためには、通学制の6年制薬学部を修了し、国家試験に合格する必要があります。
日本の薬学部は、実習を重視したカリキュラムが組まれており、対面での指導が不可欠であるため、通信制での教育は難しいのです。
大学の薬学部に通わなければならない
つまり、薬剤師をめざすには、他の学生と同様に大学に通学して講義や実習を受けなければなりません。しかも全日制です。
全日制の学部で学ぶことになるので、時間的・体力的な制約は大きくなりますが、目標を達成するためには避けて通れない道といえるでしょう。
30代で薬学部に入るために知っておきたいこと

30代で薬学部に入学するのは、決して簡単な道のりではありません。
ここでは、薬剤師になるために事前に知っておくべきことについて解説します。
薬剤師資格のとれる薬学部は6年制
薬学部には4年制と6年制がありますが、薬剤師国家試験の受験資格が得られるのは6年制課程のみです。
2006年度から、薬剤師養成課程は4年制から6年制に移行しました。これは、医療の高度化やチーム医療の推進に対応するため、より専門性の高い知識と技能を薬剤師が習得する必要性が高まったためです。
したがって、30代から薬学部に入学した場合でも、卒業までに6年間を要することになります。
自分が卒業するときには何歳になっているか、きちんと把握しておくことが必要です。
薬学部の学費
学費が高いというイメージのある薬学部ですが、実際の学費は国公立か私立かによって大きな違いがあります。
文部科学省の調査によると、令和5年度の私立大学の初年度学生納付金の平均金額は以下のようになっています。
単位:円
授業料 | 入学金 | 施設設備費 | 合計 | |
薬学部 | 1,433,292 | 332,681 | 310,097 | 2,076,070 |
参照:令和5年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり) /文部科学省
薬学部の入学金は約33万円、学費は約143万円、施設設備費は約31万円です。
初年度納付金は約208万円で、6年間の総額は約1077万円となります。
ただし、大学によって学費は異なり、より高額な大学も存在します。
やはり薬学部はかなりの高負担といえるでしょう。
一方で、国公立大学の学費は、私立大学と比べると安くなっています。
令和6年度の学費は以下の通りです。
入学料 28万2000円
年間授業料 53万5800円
参照:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令 /文部科学省
国立大学の薬学部の学費は、6年間で約350万円です。学費面からも国公立大学は人気です。また、入試の難易度も非常に高くなっています。
現実的に、30代から薬学部を目指す場合、私立大学を選択することが多いでしょう。
薬学部に入るためには、1000万円を超えるお金を準備する必要があります。
30代ともなれば貯金もあるかもしれませんが、すでに結婚をされている方は家庭のことや、老いていく親のことなどもあり、自分のことだけにお金を使える方は多くないかもしれません。奨学金や教育ローンなどの利用も考えながら、しっかり事前に資金計画を立てておきましょう。
薬学部を受験する際の難易度
薬学部の受験難易度は、大学や入試方式によって異なります。一般的には、理系の学部のなかでも難易度が高いと言われています。
国公立大学は偏差値60以上と難関である一方、私立大学は、偏差値40〜70と幅があります。
しかし、薬学部は入学して終わりではありません。大学に入りやすかったとしても、国家試験に合格できななければ受験した意味がなくなってしまいます。
志望校を考える際には、国家試験の合格率も併せて確認しておきましょう。
私立大学薬学部のなかには、社会人入試を設けているところもあります。
ただ、どの大学であっても化学や生物、数学などの理系科目の基礎知識が求められるため、相応の準備が必要になります。
30代で大学受験する場合、現役の高校生と比較して、学力面で不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、社会人経験で培った知識や思考力、目標に対する強い意欲は、受験においてアドバンテージになる可能性もあります。
大学によっては、個別に入試相談を受け付けている場合もあるので、積極的に活用してみるとよいでしょう。
受験する際には、予備校や通信教育などを利用しながら、しっかりと受験対策を行いましょう。
薬学部の6年間は勉強漬け
大学は、合格することがゴールではありません。薬学部では講義だけでなく、実習や研究活動も多く、ハードなカリキュラムが組まれています。
薬学部に入学後の6年間は、専門知識の習得に多くの時間を費やすことになります。基礎的な理科系の科目はもちろん、薬理学、薬剤学、病態生理学、薬物治療学、実務実習など、幅広い分野を深く学ぶ必要があります。
特に、臨床現場での実務実習は、薬剤師としての実践的な能力を養う上で非常に重要です。大学によっては、研究室での研究活動も必須となる場合があります。
30代で入学した場合、体力的な負担も考慮する必要があります。計画的に学習を進め、体調管理にも気を配ることが大切です。
薬剤師の資格をとるためには国家試験が必須
6年間の学びの集大成として、薬剤師国家試験があります。これに合格しなければ薬剤師になることはできません。国家試験対策は大学でも行われますが、個人での試験勉強も不可欠です。
薬剤師国家試験は、薬学全般にわたる幅広い知識と応用力が問われる難関試験です。
大学での学習はもちろんのこと、国家試験対策のための勉強も計画的に行う必要があります。
薬剤師国家試験の難易度
薬剤師国家試験の合格率は例年70〜80%前後です。
国家試験が行われるのは1年に1度だけなので、もし不合格となった場合は、もう1年待って再受験しなければなりません。
薬剤師国家試験の出題範囲は非常に広く、基礎薬学から臨床薬学、衛生薬学、薬事関連法規まで、多岐にわたります。
合格基準は、総得点の一定割合以上であることに加え、各科目群においても一定の基準点を満たす必要があります。そのため、苦手科目を作らず、バランスの取れた学習が求められます。
大学で国家試験対策の準備をしながら、過去問を活用したり、模擬試験を受けたりして、自分の弱点を把握し、克服していくことが必要となるでしょう。
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30代から薬剤師になるために注意しておきたいこと

ここまでみてきたように、30代から薬剤師をめざすことは簡単なことではありません。
途中で挫折しないためにも、事前に注意しておきたい点を把握しておきましょう。
薬剤師になりたい理由を明確にする
6年間という長い学びの期間を乗り越えるには、「なぜ薬剤師になりたいのか」という明確な動機が不可欠です。
単に「年収が高い」「安定している」といった理由だけでなく、「人の役に立ちたい」「医療に貢献したい」といった、より具体的な目標を持つことが大切です。
なぜ自分が30代になって薬剤師を目指したいのか、その理由を深く掘り下げて明確にしておきましょう。
目標が明確であればあるほど、困難に直面したときに乗り越えるための原動力となります。
お金をきちんと準備しておく
前述の通り、薬学部の学費は決して安くありません。学費以外にも生活費や通学費、教材費などがかかります。
6年間の学費だけでなく、生活費なども考慮すると、相当な費用が必要になります。
入学前に、学費や生活費をどのように準備するのか、具体的な計画を立てておく必要があります。
奨学金や教育ローンだけでなく、アルバイトや貯蓄なども含めて、無理のない資金計画を立てましょう。
薬剤師になるには時間が必要
薬学部で必要な6年という時間は、決して短い時間ではありません。
6年間の薬学部での学習と、国家試験の準備期間を考えると、薬剤師の資格を取得するまでには相当な時間が必要となります。30代からスタートする場合、40歳近くになる可能性もあります。
自分の人生において、本当に30代でこれだけの時間をかけていいのか、現実的に判断することも必要です。
まわりの理解を得ておく
30代で大学に通うということは、時間的にも精神的にも、周囲の協力が不可欠となります。
特に家庭があったり子育て中だったりする人は、事前に周囲としっかり話し合い、支援体制を整えることが成功のカギとなります。
家族やパートナーには、なぜ薬剤師を目指したいのかをしっかりと伝え、理解と協力を得るように努めましょう。
【Q&A】30代の薬学部希望者の疑問

ここでは、30代で薬学部を目指す方が抱きやすい疑問について解説します。
Q.薬学部に夜間部はある?
A.残念ながら、薬学部に夜間部のある大学はありません。
薬学教育には講義も実習も多く、昼間の通学が原則です。全面的に大学生活にコミットすることが求められます。
Q.働きながら薬学部に通うことはできる?
A.社会人として働きながら薬学部に通うことは、現実的には不可能です。
昼間の通学と膨大な予習・復習、学年が上がれば実習が必要となるため、フルタイムの勤務との両立は現実的ではありません。
一般の学生のように、アルバイトをすることはできますが、それ以上は難しいでしょう。
薬剤師を目指すのであれば、原則として仕事を辞めて学業に専念する必要があります。
Q.薬学部に編入することはできる?
A.一部の私立大学では編入制度が設けられています。
すでに大学を卒業した人や、医療系の専門学校を卒業した人の場合、試験に合格すれば大学2〜4年生に編入することが可能です。
編入の条件や試験内容は大学によって異なりますが、一般的には、他の大学の特定の学部に一定期間以上在籍し、所定の単位を修得していることなどが求められます。
大学の編入試験では、理系の筆記試験や面接などが実施されます。
編入を検討する場合は、希望する大学の募集要項を確認してみましょう。
ただ、薬学部への編入は狭き門であることが多いのが現状です。
まとめ

ここまで解説したように、30代から薬剤師をめざすのは簡単な道ではありません。
自分の薬剤師になりたいという気持ちは本当か、勉強やお金は大丈夫かなどを考えてみてください。30代であれば、現実的な判断もできるでしょう。
もし、それでも「薬剤師になりたい」という思いがあるならば、強い意志と覚悟を持ち、しっかりと準備していくことで、新たなキャリアを切り開くことができるでしょう。
この記事が、これからの進路を考える参考になれば幸いです。
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