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薬局業界ITツールマップ

更新日: 2021年5月27日 富澤 崇/土井 信幸

「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」システムの比較

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近年、IT化やオンライン化、デジタル化が加速している薬剤師業界。なかでも、処方せん送信、電子お薬手帳、服用期間中のフォローアップの自動化、オンライン服薬指導など、いくつかの機能が統合されたシステムやアプリケーションのラインナップが豊富になってきました。第2回では、前回のカオスマップにおける「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」カテゴリーについて、各企業の製品にどんな特徴があるのか比較していきましょう。

主な「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」製品

「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」カテゴリーの解説

このカテゴリーの製品は、患者さんはスマートフォンアプリとして無料で利用が可能です。患者さんはお薬手帳としての利用を中心に、かかりつけ薬局、もしくは選んだ薬局への処方箋の送信(スマートフォンで撮影)ができます。一方、薬局は次回来局までの期間の服薬支援について、SNSなどを利用したオンライン対応、すなわち服用期間中のフォローができます。
そのほか、オンライン服薬指導機能、患者さんの自己負担金や商品購入代金のキャッシュレス決済機能、店頭チェックイン機能(処方箋薬の準備が出来たらスマートフォンへお知らせする機能など)、健康管理機能など、様々なものがあります。このような機能が一体化したシステムがこのカテゴリーです。

社会ニーズの高まりが急速すぎて、製品の機能や特徴の整理が不十分

2020年9月の改正薬機法の施行により全国でオンラインでの服薬指導が実施可能となりましたが、それ以前に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止として、いわゆる0410通知として、特例的にオンライン服薬指導が前倒しで解禁になりました。それに合わせて、患者さんとの直接の接触機会や時間を減らし、オンラインで対応できる本カテゴリーの製品に注目が集まっています。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うオンライン服薬指導の前倒し解禁に代表されるように、社会ニーズの高まりがあまりに急速だったため、本カテゴリーの製品の機能や特徴についての整理が追い付いていないのが現状です。
そこで、服薬アドヒアランスの向上、患者さんの利便性、業務効率の向上などの様々な面で活用が期待される本カテゴリー製品の比較表を作成しました。

「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」製品比較表

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比較表の見方

各システムの比較表は2021年5月現在、Webサイトや各企業の提供している資料からの情報を集めて作成しました。比較表の様式は皆様に馴染みのある家電やパソコンなどの製品機能一覧表の様式で作成しています。
株式会社MG-DXもこのカテゴリーのシステムをリリースしていますが、詳細な情報の入手が間に合いませんでした。今後の掲載を予定しています。

比較表の項目

「処方箋せん送信・電子お薬手帳・オンラインフォロー一体型」の基本機能であるため、「処方箋送信」「電子お薬手帳」「服薬フォロー支援」については必須項目として設定しています。「販売元背景」を項目に設定しているのは不思議に思われるかもしれませんが、その理由は企業の成り立ちや背景によって提供しているシステムに特徴のあることがわかったからです。「トレーシングレポート作成支援」を項目としているのは、特定薬剤管理指導加算2の算定が可能になり、注目度が高く、各企業も追加開発しているためです。項目としていない機能もシステム毎に数多くありますが、その全てを項目として表を作成した場合にとても煩雑になってしまいます。そのため「その他」にそれぞれのシステム特有の機能についてまとめました。

システム導入の目的

「処方せん送信、電子お薬手帳、オンラインフォロー一体型」の導入目的は次の4つが考えられます。

  • 患者の医療アウトカムの増大
  • 患者の利便性向上
  • 薬局の業務効率化やエラー低減
  • 薬局の経営改善

1つ目は、治療効果の増大や副作用の早期発見といった薬物治療におけるメリットです。2つ目は、待ち時間の減少など患者が実感しやすい利便性におけるメリットです。3つ目は、業務のスピードアップやヒューマンエラーの低減など薬剤師が実感しやすいメリットです。4つ目は、増患、リピート率増加、技術料の算定増加などの経営上のメリットです。
いずれのシステムも理論上これら4つのメリットが考えられます。システムの機能面からの選定も大事ですが、導入の目的を明確にし、自社が求めるメリットが最大化されるシステムはどれか?という視点で検討することをお勧めします。その際に、上記4つのメリットの裏付けをメーカーに尋ねてみましょう。導入済みの薬局でどのような実績が上がっているか、どのようなメリットを実際に感じているのかをメーカーから教えてもらうことで、より導入のイメージが明確になると思います。

重点的に比較すべき項目

自薬局の既存システムとの連携確認は必須
いずれのシステムも機能面においては大きな差はなさそうに見えます。しかし、オンライン服薬指導や服薬フォローを自社の機能として提供しているか、LINEなどの既存のSNSと連動する形で提供しているかといった違いや電子薬歴との連携の有無などでの違いはあります。他のシステムとの連動の可否はユーザーとして重視すべき点だと思います。これらのシステムを利用するために、自薬局の既存システム(例えば電子薬歴など)を変更しなければならないとなっては大ごとです。
また、オンライン診療システムとの連動も重要なポイントです。主たる処方元が使用しているオンライン診療システムと同じメーカーのシステムを導入することで、処方せんの授受がスムーズになります。

顧客関係強化に役立つ「一斉情報配信機能」
ユーザー患者とリレーションシップを築いて、顧客関係強化を図る目的を期待するなら、一斉情報配信機能も見逃せません。このアプリを利用している患者に、健康にまつわる時事ネタや特売情報などを薬局から一斉配信することで、既存患者のロイヤリティーを高めたり、口コミによる増患を図ったりするといった攻めのマーケティングが可能になります。
他にもクレジット決済、かかりつけ薬剤師の勤務シフト表示、順番の呼び出しなど、患者の利便性を高める機能の充実度で比較するのもよいでしょう。

薬局の利用料が無料の製品も
利用料については、「ほっぺ」が特徴的です。患者だけでなく薬局からも料金が発生しません。ほっぺ株式会社はシステムの利用料を取る“フロントエンド”と呼ばれるビジネスモデルではなく、システムを無料で提供することで多くのユーザーを抱え、別の切り口でマネタイズする“バックエンド”のビジネスモデルであると考えられます。他社も含めて、今後このカテゴリーの収益性やビジネスモデルの行方が気になるところです。

頻繁にアップデートがあるため、最新情報の収集が肝要

本カテゴリーはこの1年で急速に市場に出回ってきたシステムですので、機能、操作性、導入実績、費用などは現在進行形で改善・変化しています。必ず最新の情報をご確認いただきたいのは言うまでもありませんが、それだけ今後のアップデートに期待できるということです。現に、株式会社メドレーの「ファームス」は今年4月に電子お薬手帳機能や服薬フォローアップ機能を追加しました。また、3月には「おくすりセントリー」を販売する株式会社Pahrmarketを電子薬歴「Musubi」を販売する株式会社カケハシが買収するというプレスリリースが発表されました。システムだけでなく販売元企業の動きからも目が離せません。

次回は、再びPharma Tech領域を俯瞰で眺めながら、この領域の未来像や今後の課題についてお話したいと思います。

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とみざわ たかし/どい のぶゆき

富澤 崇(とみざわ たかし)

薬剤師/博士(薬学)
株式会社ツールポックス代表取締役、城西国際大学薬学部 准教授
東京薬科大学を卒業後、クリニックや大学病院で薬剤師を経験し、その後大学教員とチェーン薬局の人材開発業務を兼務。2017年7月に株式会社ツールポックスを創業。薬局企業などを対象とした人事・教育・採用領域のコンサルティング事業、薬学生向けダイレクトリクルーティングサイト「Agonist」の運営、薬剤師のキャリア支援事業などを展開。


土井 信幸(どい のぶゆき)

薬剤師/博士(薬学)
高崎健康福祉大学薬学部地域医療薬学研究室 准教授
東京薬科大学を卒業後、ドラッグストア、保険薬局に勤務しながら博士号取得。2014年より高崎健康福祉大学薬学部講師。2018年より現職。HIV患者のスマートな応需プロジェクト(smARTプロジェクト)代表幹事、和光市コミュニティケア会議講師(薬剤師相談員)、群馬薬学ネットワーク世話人、群馬腎と薬剤研究会副会長、日本アプライドセラピューティクス学会評議員。
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