糖尿病患者の57%がシックデイの経験あり。その認識度は?
薬剤師は薬の専門家としてベッドサイドで患者さんの適正な薬物療法に貢献することが求められます。患者さんに最適な薬物療法を実践するなかで、薬剤師が患者さんの状態を把握することは、特にリスクの高い薬剤を中心に副作用の防止、あるいは早期に発見し重篤化を防止することが重要と考えられます。そのためには、症状や必要に応じて脈拍や血圧などのバイタルサインの測定や、触診、視診といったフィジカルアセスメントによって患者さんから直接的に情報を得る行為が不可欠となります。
※薬剤師によるフィジカルアセスメントはどこまで許されるのか?については、こちらを参照して下さい。
高齢者Ⅱ型糖尿病と現病歴
高血圧、脳幹出血、脂質異常症、逆流性食道炎
高齢者Ⅱ型糖尿病の症例
68歳脳幹出血により下半身不随の男性。奥様がお薬管理をしている。20年前に糖尿病を発症し、インスリンで血糖管理されている。風邪(微熱、鼻水、のどの痛み)を引いたとのことで、風邪薬が処方され訪問。訪問時の体温は37.1℃、食欲はさほどおちていない。念のため主治医から渡された、シックデイルール1)を確認した。
シックデイ時の緊急対応について
風邪を引いて体調が悪い時、食欲がなく食事ができないときなどをSick Day(シックデイ)と呼びます。
- □食欲がないとき、食事は食べられるものを1日3回摂るようにします。食欲がさほど落ちていないときは、シックデイでは逆に血糖値が高くなりやすいので、いつもどおり腹8分目を心がけます。
- □水分(お水やお茶など)を十分にとって脱水を防ぎます。
- □食欲がない、熱が高い、吐き気が強い、下痢などが3日以上続くときは、すぐに病院を受診します。
- □食事が摂れないとき、自己血糖測定器にて毎食事前に血糖測定をします。血糖値にあわせて、以下の表のように注射をします。
血糖値 | インスリン注射 | 単位 |
350mg/dL以上 | インスリン アスパルト | +6単位 |
250mg/dL~350 mg/dL | インスリン アスパルト | +4単位 |
250mg/dL以下 | インスリン アスパルト | +2単位 |
訪問時の検査所見
血圧136/86mmHg、脈拍 70回/分 、血糖値226mg/dL(平熱時の血糖値と変わらず)
高齢者Ⅱ型糖尿病と現病歴の処方薬
インスリン アスパルト(遺伝子組換え)注フレックスタッチ
1日3回毎食直前(朝12単位、昼10単位、夕12単位)
ランソプラゾール口腔内崩壊錠15mg 1錠 分1 朝食後
テルミサルタン錠40mg 1錠 分1朝食後
アムロジピンベシル酸塩錠10mg 1錠 分1 朝食後
クロピドグレル錠75mg 1錠分1朝食後
<追加処方>
セフカペンピボキシル塩酸塩錠100mg 3錠分3 毎食後 5日分
デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠15mg 3錠分3毎食後 5日分
アセトアミノフェン錠200mg 2錠 頓服 発熱・疼痛時 5回分