不確実性としてのプラセボ効果‐ホメオパシーと漢方薬の違いを決定づけるもの
前回はホメオパシーを例に、僕たちが何を科学的な治療と呼び、何を非科学的な治療と呼ぶかは、社会的習慣、あるいは文化的背景に依存している側面を論じてきた。一方で、ホメオパシーによって救われたと感じている人も確かに存在する。そうでなければ200年にわたるホメオパシーの歴史が、途絶えることなく今日まで続いているとは考えにくい。今回はホメオパシーに対する一般市民の関心や、その利用動向について整理したうえで、日本における漢方薬と対比しつつ、現代医療においてプラセボ効果をどのように扱うことが適切なのかを論じたい。
ホメオパシーに対する関心と、その利用動向
日本においてホメオパシーはどう認識されているのだろうか。日本学術会議は2010年8月24日付けで、「『ホメオパシー』についての会長談話」という声明を公表し、ホメオパシーを科学とは認めないと明言している。また、日本医師会および日本医学会はこの声明に全面的に賛同した1)。つまり、日本の医学界において、ホメオパシーは科学とは認められていないことになる。
一方で、ホメオパシーやレメディーを健康食品やサプリメントなどと同等に語ることについて、否定的な見解を示しているわけではない。むろん、世界的にはホメオパシーを利用している人々は少なからず存在しており、11か国を対象とした調査2)によれば、一般…