これからの薬剤師の役割。腰痛症状に対するプラセボ効果から読み解く

腰痛は身近な健康問題の一つであり、生涯における有症割合は60〜85%、成人の約15%が腰痛を患っているともいわれている1)。慢性腰痛の世界的な有症割合は、過去10年間で100%以上も増加しており、個人レベルの健康問題だけでなく、人間の社会活動にも大きな影響を及ぼしている2)3)4)。今回は慢性腰痛に対するプラセボ効果と、薬剤師の役割について考察したい。
腰痛と慢性化の危険因子
腰痛は、病態生理学的な背景だけでなく、ストレスや不安、抑うつなどの心理社会的要因5)、物理的な作業に伴う身体への負荷6)など、極めて多因子的な背景によって引き起こされる疾病である【図1】。特に、抑うつ症状は腰痛の慢性化だけでなく、新規発症とも関連することが知られている7)。さらに、腰痛に対する悲観的な考えによる腰の過剰な保護動作(恐怖回避思考)も、腰痛の慢性化リスクを高める8)。