抗ヒスタミン薬の選び方・説明の仕方における重要な視点-花粉症治療におけるプラセボ効果

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に適応を持つ経口抗ヒスタミン薬の種類は多く、治療の選択肢は多様である。近年では、医療用医薬品の一部が市販薬に転用され、ドラックストア店頭に並ぶアレルギー薬もバリエーションに富んでいる。
一般的に、季節性アレルギー性鼻炎に対する経口抗ヒスタミン薬の理想形は①即効性があり効果が持続すること、②眠気や作業効率の低下などの副作用が少ないこと、③長期的に服用が可能な安全性が担保されていること、④服薬する負担が少なく、良好なアドヒアランスが期待できること、の4点に集約できる。これらの条件すべてを満たす薬剤として注目を集めたのが2016年に発売されたビラスチン(ビラノア🄬)である。
今回は経口抗ヒスタミン薬の理想形ともいわれたビラスチンの有効性や安全性を、他の薬剤と比較しながら考察し、経口抗ヒスタミン薬の選び方・説明の仕方におけるプラセボ効果の活用を論じたい。
季節性アレルギー性鼻炎に対するビラスチンの有効性・安全性
ビラスチンはヒスタミンH1受容体に対する強い拮抗作用を有し、その効力はフェキソフェナジンよりも優れる1)。加えて同薬は、肥満細胞からのインターロイキンや腫瘍壊死因子の放出を抑制することによる、抗炎症作用も期待できる2)。
またビラスチンは、優れた薬物動態学的特性を有し、最大血漿濃度到達までの時間は、経口投与から約1時間である3)。加えて、半減期は14時間と長く、持続的な効果も期待できる4)。そのため、1日1回の服用で済み、服薬アドヒアランスの観点からもアドバンテージの大きな薬剤である。
ビラスチンはヒスタミンH1受容体に対する選択制が極めて高く、抗ヒスタミン薬で発生しやすい傾眠や鎮静作用はほとんどないとされる5)。実際、脳内のヒスタミン受容体における同薬の影響は他の抗ヒスタミン薬と比べて低く6)、ドライビング・シミュレーターを用いた実験的な研究においても、運転パフォーマンスに影響を与えないことが報告されている7)。
一方で、ビラスチンのバイオアベイラビリティは脂肪を多く含む食品と併用すると、顕著に低下することが知られている。健常ボランティアを対象とした研究では、ビラスチンのバイオアベイラビリティは高脂肪食との併用で30%低下、標準脂肪食であっても25%低下した4)。それゆえビラスチンの用法は「空腹時に経口投与」となっている。
服薬タイミングに注意が必要なものの、ビラスチンは即効性、持続性、有効性、忍容性、いずれの観点から、「理想の経口抗ヒスタミン薬」の条件を概ね満たしているといえるだろう。したがって、ビラスチンが最も優れた治療薬の一つとして考慮される可能性は大いにある。