妊婦や授乳婦でも飲める痛み止めは?OTC医薬品販売のポイント
1.妊婦や授乳婦が抱えるさまざまな「痛み」
妊娠中は驚くほどマイナートラブルが絶えません。中でもとくに起こりやすいトラブルの1つが「痛み」です。具体的には次のような痛みに悩まされるケースが多くあります。
歯痛
つわり中は歯磨きができなかったり、うがいだけで済ませてしまったりすることが少なくありません。さらに妊娠中は唾液の量が減ることもあり、虫歯ができやすい状態です。つわり中や妊娠後期は虫歯の治療が難しくなることもあり、痛みを我慢している方は多いでしょう。
腰痛
お腹が大きくなるにつれて、重いお腹を支えるために腰の負担が大きくなります。また胎盤から分泌されるリラキシンというホルモンの働きにより骨盤や関節が緩むことも、腰痛が起こりやすくなる原因です。
坐骨神経痛
大きくなったお腹が神経を圧迫することで、坐骨神経痛が起こりやすくなります。お尻や脚に痛みが出ることが特徴です。
頭痛
妊娠中は黄体ホルモンの分泌が増えるため、頭痛が起こりやすくなると言われています。偏頭痛に悩まされている方も多いです。
出産を終えた後も痛みのトラブルは尽きません。授乳や抱っこで首や腰を痛めたり、乳腺炎になったりなど、とにかくどこかしら痛い状態が続いている方は多いでしょう。
2.妊婦や授乳婦にも販売できるOTC医薬品
基本的に妊娠中はアセトアミノフェン、授乳中はアセトアミノフェンに加えてイブプロフェンとロキソプロフェンが選択肢となります。
タイレノールA1)
アセトアミノフェンを単剤で配合した薬のため、勧めやすい商品です。胎児の先天性異常に影響がない2)ことがわかっており、妊娠初期から後期まで使用できます。授乳中の服用もできるため、妊娠期間から授乳中まで幅広い患者さんに対応できる痛み止めです。
ロキソニンS3)
市販のロキソニンシリーズの中でも、ロキソプロフェンのみが配合されている製品です。国立成育医療研究センターが公表している「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」4)に掲載されており、母乳中への移行が少ないことから授乳中でも使用できます。
妊娠中でも使えないことはありませんが、妊娠後期(28週~)に使用すると胎児の心臓や血圧などに影響がでる可能性があるため服用しないこととなっています。そのため妊婦へ積極的にお勧めできる商品ではありません。
イブメルト5)
カフェインやアリルイソプロピルアセチル尿素などが配合されていない、イブプロフェンのみ単剤です。水なしでいつでも飲めるため、急な痛みにも対応できます。
妊娠中の使用に関してはオーストラリア医薬品評価委員会でC6)となっているため、あえてイブプロフェンを選ぶ理由はありません。
授乳中の使用については、母乳中への移行が少ないため使用しても大丈夫だとされています。ただしこちらも、妊娠後期の方への使用は退治の心臓や血液などに影響が出る可能性があるため適していません。
3.妊婦や授乳婦に痛み止めを販売するときの注意ポイント
妊婦や授乳婦が使えるとされている痛み止めでも、患者さんによっては服用が向いていないケースがあります。
妊婦に販売する際は必ず妊娠週数を確認する
イブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDsは妊娠後期の妊婦には使えません。胎児の心臓や血圧に影響が出る可能性があるためです。
妊婦ご本人が痛み止めを買いに来られた場合は週数の確認ができますが、代理の方が頼まれて来ることも少なくありません。
代理の方だと週数を把握していないこともあるため、はっきりとした週数が確認できない場合はイブプロフェンやロキソプロフェンではなく、アセトアミノフェンを勧めるのが無難です。
アセトアミノフェンには抗炎症作用がほとんど期待できない
アセトアミノフェンはほとんど抗炎症作用をもちません。そのため乳腺炎のように炎症が原因で痛みが出ているようなケースにはあまり服用が向かないお薬です。痛みの原因に応じて適切な痛み止めを提案しなければ、患者さんのQOLを改善できないので注意しましょう。
アセトアミノフェンは使いやすいが鎮痛効果は弱め
妊娠中と授乳中でも使えるアセトアミノフェンは、とても使い勝手のよいお薬です。しかしイブプロフェンやロキソプロフェンと比べると鎮痛効果はそこまで強くありません。患者さんの痛みの強さによってはアセトアミノフェンだと効果不足になることも考えられます。勧めやすいからといって安易に選択しないよう気をつけるべきです。
4.痛み止めを販売するときの伝え方のコツ
できるだけ薬を飲みたくないと考える妊婦や授乳婦は少なくありません。しかし痛みを我慢していると、次第に痛みの原因となるプロスタグランジンの量が増えてしまいます。すると、痛み止めを飲んでも思うように痛みが引かなくなることがあるため、我慢しすぎず早めに痛み止めを飲むことが大切です。
痛みがストレスとなりお腹が張ってしまうことも考えられるため、状況に応じて痛み止めを服用するよう伝えましょう。もし市販の痛み止めを服用しても痛みが引かないようであれば受診勧告をすることも大切です。
1)タイレノールA 公式サイト Amazon
2)
3)ロキソニンS 公式サイト Amazon
4)「授乳中に安全に使用できると考えられる薬 」
5)イブメルト 公式サイト Amazon
6)「妊娠・授乳と薬」