妊婦・授乳婦へのセルフメディケーションのすすめかた

更新日: 2021年3月4日 木村 妃香里

【OTC医薬品の選び方】妊婦や授乳婦に販売できる湿布薬は?

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1.妊娠中や授乳中は「痛み」のトラブルが多い

妊娠中や授乳中はさまざまな痛みのトラブルが付きまといます。生活に支障が出るほどの痛みを抱えて過ごしている方もいるでしょう。具体的に「湿布薬を使って痛みを抑えたい」と思うシーンには、次のようなものがあります。

腰痛

多くの妊婦が経験するツライ腰の痛み。妊娠中は胎盤から分泌されるリラキシンというホルモンの影響により、骨盤や関節の靱帯が柔らかくなります。ここへ大きくなったお腹の重みが加わることで、腰に負担がかかりやすくなるのです。

お腹が大きくなることで体の重心が前に集中し、反り腰になることも関係しています。また授乳中は、ついつい猫背になりやすく、腰に負担がかかる姿勢を長時間続けなければいけないこともあり、腰痛になりやすいものです。

坐骨神経痛

腰痛と同様に、リラキシンや大きくなったお腹の影響で坐骨神経痛になることがあります。椎間板や脊柱管が圧迫され、お尻や脚に痛みが生じてしまうのです。妊娠中だけではなく、産後も筋肉の衰えや関節のゆるみによって坐骨神経痛に悩まされている方は少なくありません。

腱鞘炎

腱鞘炎は授乳中に起こりやすい症状の1つです。沐浴や授乳、抱っこなどで手首に負担がかかりやすいため、腱鞘炎になりやすくなります。サポーターをつけて過ごす手もありますが、なかなか育児を休むことはできないため慢性的に痛みに悩まされやすいのが特徴です。

このように妊娠中や授乳中はさまざまな痛みのトラブルに見舞われます。とくに妊娠中に腰痛に悩まされている方は多い印象です。私がドラッグストアでこれまでに妊婦や授乳婦から実際に受けた相談も、腰痛に関する内容がほとんどでした。ある調査によると、妊娠中に腰痛を経験する方は約80%にも及ぶ1)そうです。

2.妊婦や授乳婦にも販売できるOTCの湿布薬

痛みに悩む妊婦や授乳婦へ販売できる湿布薬にはどのような製品があるのでしょうか。一例をご紹介します。

ボルタレン®EXテープ2)【第2類医薬品】

ボルタレンEXテープはジクロフェナクナトリウムが主成分として配合された湿布薬です。授乳中の使用に関しては国立成育医療研究センターが公表している「授乳中に安全に使用できると考えられる薬3)」に掲載されているため、問題ないとされています。

妊娠中は妊娠初期から中期(~27週)の使用であれば先天異常や流産などのリスク上昇に関与しないとされていますが、妊娠後期(28週~)に使用すると胎児動脈管収縮を起こす可能性があるため注意が必要です。

ただし近頃では、妊娠20週以降の方がNSAIDsを使用すると羊水過少や胎児の腎障害を起こす可能性があることがFDAから発表4)されています。添付文書を改訂する動きも見られているため、妊娠20週以降の方への販売は避けるのが無難です。

ロキソニンSテープ5)【第2類医薬品】

主成分としてロキソプロフェンナトリウム水和物が配合された湿布薬です。母乳中へは移行しないことがわかっており「授乳中に安全に使用できると考えられる薬3)」にも掲載されているため、授乳中の使用は問題ありません。ただし妊娠中に使用する場合は、妊娠後期の使用で胎児動脈管収縮を起こす可能性があるため使用は避けます。

またボルタレンEXテープと同様に、妊娠20週以降の方が使用すると羊水過少や胎児の腎障害などを起こす可能性があるとFDAから発表されているため、販売する際は週数を必ず確認しましょう。

サロンパス30®6)【第3類医薬品】

サロンパス30は、主成分としてサリチル酸グリコールを配合した湿布薬です。サリチル酸グリコールは妊婦や授乳婦への使用がとくに制限されていません。7)妊娠中はサロンパスAeのようにサリチル酸メチルが配合された湿布薬の処方がメジャーではありますが、サリチル酸メチルはどうしても湿布独特のにおいが強くあります。妊娠中はにおいに敏感になっていることもあるため、微香性のサロンパス30のほうが使い勝手はよいでしょう。

3.妊婦や授乳婦に湿布薬を販売するときの注意ポイント

胎児に近いところに貼っても成分が直接届くわけではない

「腰はお腹に近いから、湿布薬を貼ると胎児に影響が出そうで不安」という声をまれに聞くことがあります。もちろん腰に湿布薬を貼っても、胎児に成分が直接届くことはありません。もしこのような不安を相談されたら、薬の成分はいったん血液に溶け込んでから効果を発揮するので、貼る場所が胎児に近くても問題はないと伝えてあげましょう。

妊婦へ販売するならサリチル酸グリコールやサリチル酸メチル配合の製品が無難

ジクロフェナクやロキソプロフェンなどのNSAIDsでも、妊娠週数によっては使用できます。ただし妊娠20週以降の使用にはリスクがあることを考えると、痛みの程度がそこまで強くなければサリチル酸グリコールやサリチル酸メチル配合のものを販売したほうが「うっかり使ってしまった」という事態を未然に防げるため安全です。

4.妊婦や授乳婦に湿布薬を販売するときにプラスして伝えたいこと

妊娠期間を通して使いやすいサリチル酸グリコールやサリチル酸メチルは、ジクロフェナクやロキソプロフェンと比べると鎮痛効果は低めです。そのため湿布薬を貼っても痛みが完全に取り除かれない可能性もあります。

めぐりズム 蒸気の温熱シートの画像

めぐりズム 蒸気の温熱シート

そのような方には「あずきのチカラ どこでもベルト」や「めぐりズム 蒸気の温熱シート」など痛みが気になるところを温められるアイテムを勧めてみるのもよいでしょう。薬効成分が入っていないので妊婦や授乳婦の方でも気兼ねなく使用できます。ただし湿布薬を貼った上から使用するとかぶれやかゆみなどが起こりやすくなるので、湿布は剥がしてから使うよう伝えましょう。

1)妊婦および褥婦における腰痛の実態調査
2)ボルタレン®EXテープ 公式サイト Amazon
3)授乳中に安全に使用できると考えられる薬
4)FDA Warns that Using a Type of Pain and Fever Medication in Second Half of Pregnancy Could Lead to Complications
5)ロキソニンSテープ 公式サイト
6)サロンパス30®公式サイト Amazon
7)エアーサロンパス IF

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木村 妃香里
きむら ひかり

薬学部を卒業後、大手ドラッグストアにて勤務。OTC医薬品の販売を通して「正しい薬の選び方・使い方を広めたい」と思い、現在は医薬品や健康食品、サプリメント関係の執筆をメインに活動中。化粧品検定1級や薬事法管理者などの資格も取得。

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