第5回 薬剤師としてやりたかった仕事は何ですか?
処方せんに従って正確・迅速に調剤し、わかりやすい服薬指導とともにお薬をお渡しする。このような「対物業務」に専念していればすべてが上手くいっていた時代は確実に過去のモノになりつつあります。変化する薬剤師を取り巻く環境の中で、新たな一歩を踏み出すにはどうしたらいいか。今回は、誰にでもできる「魔法の質問」を紹介します。
仕事のおもしろさを表現するものは何か?
調剤業務において、正確性やスピードは極めて重要です。しかし、あらゆる業界で機械化やICT化が進む中、薬局での「医薬品の調剤業務や情報提供業務の価値」は、相対的に低下してきたと言わざるを得ません。また、薬学教育が6年制になったこともあり、少なくない薬剤師にとって、「お薬をお渡しするまでの仕事」を早く・正確に行うことのみにやりがいを感じることが困難になってきています。正確性やスピードだけでは、仕事のおもしろさを表現することはできなくなってきているのではないでしょうか。
また2013年、厚生労働省から示された「地域包括ケア」という概念の実現には、「門前調剤薬局」という在り方は十分なものではないことが明示されています。2015年には医薬分業に関する規制改革会議が開かれ、経済財政諮問会議で厚生労働大臣が「病院前の景色を変える」と発言。結果として、調剤報酬制度が変わり、従来の薬局薬剤師業務では、十分な採算性が担保できなくなりました。
今の薬剤師は「茹でガエル」寸前!?
状況が変わってきているとはいえ、思い切って決断し、アクションを起こすというのは容易なことではありません。患者さんには、早く薬を渡して欲しいと言われるし、仕事には、つらくて苦しい場面はつきものです。やりがいや社会貢献性ばかりを求めてはいられない、という考えも一理あります。その一方で、従来の業務効率や経費削減を行っていれば、今日、明日は過ごせるという状況が災いし、何となく新しい決断に至らないというケースも多いのではないでしょうか。
この状況を目の当たりにする度、私は「茹でガエル」の話を思い出します。住みやす…