これからの薬局・薬剤師が目指すべき方向性

更新日: 2016年8月25日

かかりつけ薬剤師の「地域活動」について(疑義解釈第3弾を読み解く)vol.6(最終回)

2016年度調剤報酬改定が実施されてから、早くも半年が経過しようとしています。中でも変更の目玉であったのが「かかりつけ薬剤師」の評価。薬という「対物」の業務よりも、患者への「対人業務」を評価する、というのが基本的な考え方でした。
連載最終回となる今回は、改めて「かかりつけ薬剤師とは何なのか」「かかりつけ薬剤師として実施すべきことは何なのか」を考えていきたいと思います。


かかりつけるのは「薬局」でなく「薬剤師」

以前から、かかりつけ「薬局」という言葉はしばしば耳にしてきました。正確な定義は別として、イメージとしては、複数の医療機関からの処方せんを一カ所にまとめることで、重複投与や併用禁忌の薬剤使用を未然に防ぐ役割を果たす薬局、というものです。もちろん、これは重要で意味のあることですし、かかりつけ薬局を決めておくことで薬剤性の有害事象から救われた患者さんはたくさんいらっしゃるはずです。

その一方で、1~2年前から急速に「かかりつけ薬剤師」という言葉を耳にする機会が増えました。マスメディアで取り上げられたり、研修会で言及されたりもするようになってきました。この言葉を最初に聞いた時、私はひとつの不安を覚えました。“かかりつけ医を持ちましょう”と提唱してきた医師にとって、この言葉はちょっとひっかかるというか、反対したくなるのではないか、と思ったのです。言ってみれば、「そんなことできるのかな」「大丈夫かな」ということです。

過日、その疑問をある医師にお尋ねしたところ、意外な言葉が返ってきました。「かかりつけるのは、薬局ではなく薬剤師でしょ?だって医者も、かかりつけ医院、かかりつけ病院とは言わずにかかりつけ医と言うよね。そう言っていたのは、医師会の人だよ」と。この言葉を聞いた時に、意外ではありましたが、その真意はもちろん理解できましたし、私にとっても少しわかりづらかった「かかりつけ薬剤師」のイメージが明確になったのです。

「かかりつけ医」から考える「かかりつけ薬剤師

「かかりつけ医」の役割は、いつもの薬を処方したり、定期的に生活習慣病の治療や指導を行うだけではありません。むしろ、「何か体調で困ったことがあるときに、まず、受診して相談する医師」ということではないでしょうか。そもそも「かかりつけ」というのは「掛かり-つけ」であり、いつも気にかける、頼りにするということです。

その真価を発揮するのは、平時ではなく、むしろ一大事の時なのです。急な熱や腹痛、息切れなどで、患者さんが「どうしよう…」と思った時に、真っ先に顔と名前が思い浮かぶ医師が「かかりつけ医」であるというのが私の感覚です。

これにならえば、「かかりつけ薬剤師」も同様です。処方せん調剤を受けた患者さんが、「薬を飲んだら気持ち悪くなった…」「効果がない」「飲めない」といった困りごとを抱えたときに、真っ先に相談しようと思い浮かぶ薬剤師が「かかりつけ薬剤師なのではないでしょうか。

また、「風邪をひいた」「机のかどで腕を打った」「体がかゆい」といった症状が出たときにも真っ先に相談でき、適切なOTC薬を選んでもらったり、その後の症状の経過についてもいつでも相談に乗ってくれたりする薬剤師が「かかりつけ薬剤師」と言えるのではないでしょうか。

そのほかにも、「病院に受診した方がいいかどうか迷っている」「どこの病院がいいのか?」「病気にならないように生活習慣はどうすればよいのか?」といった医療機関への受診や疾病の予防などについても、まずは、気軽に相談できる薬剤師が「かかりつけ薬剤師」であり、これは、「薬局」という場所を指すものではありません。個人の能力や経験、パーソナリティやコミュニケーション能力が一体となった、まさに「薬剤師」の能力が大切なのです。

かかりつけ薬剤師の地域活動 ~「大阪城カフェ」の例

2016年4月の調剤報酬改定では、「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が新設されました。このかかりつけ薬剤師になるためにはいくつかの要件が必要ですが、中でも、24時間対応と勤務表の開示、そして、「医療に係る地域活動の取り組み」が悩ましい問題として捉えられています。

しかし、今回述べてきた「かかりつけ」の概念(困った時にいつも頭に思い浮かび相談できる)から言えば、担当の薬剤師に連絡がつく体制や、いつ薬局に行けば会えるのかを知らせておくことは欠かせません。

また、日頃薬局を日常的に使わない方や、薬局は処方せんを持って行けば薬を渡してくれるところだと捉えている方にとっては、困った時に薬局や薬剤師に相談しようという発想には至らないのが現状です。

この状況を打破するために、薬剤師が地域に出かけて行き、自分たちの存在や担える分野をアピールしたり、気軽な健康相談を一般の方向けに行うことの意義は大きいと思います。

ちなみに、私が主宰する一般社団法人日本在宅薬学会では「大阪城カフェ」という取り組みを昨年秋から行ってきました。地域の方々を対象に、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、理学療法士などのミニセミナーを行い、その後にスモールグループに分かれてその時のテーマを元にディスカッションをします。このイベントには、講師でない薬剤師も参加でき、地域の方々とフランクにお話ができます。

その際、私どもも反省するのですが、一般参加の方々から「あなたの薬局、そういうことで相談に行ってもいいのね」「処方せんがなくても行ってもいいのね」というお言葉を少なからず頂戴します。そして、それらのことがきっかけとなって、高齢者の方の健康サポートや在宅訪問などが始まるケースも出てきています。この取り組みは、2016年度調剤報酬改定における「医療に係る地域活動」として認めていただけているので、ぜひご参考にしていただければと思います。

最後に。「薬剤師が変われば、地域医療が変わる」

これらのことを考えてみると、やはり、薬剤師は薬を扱う「対物」から、患者さんを扱う「対人」へとシフトすべきだと感じずにいられません。これは、2015年10月に厚生労働省から発表された「患者のための薬局ビジョン」の中にある考え方です。薬局の「立地(医療機関に近接)」に依存するのではなく、かかりつけ薬剤師として、地域の方々に何ができるのかという「機能」に依存して運営されるようになることが大切なのだと実感します。

薬局運営や薬剤師のこれからについては、悩みや戸惑いもありますが、2025年のあるべき姿から俯瞰して考えてみるときっとわかりやすくなると思います。ぜひそれぞれのお立場で考えてみていただければと思います。

皆様にご愛読いただいてきた本連載も、今回で一旦終了です。薬剤師が変われば地域医療が変わります。本連載での内容をもとに、これだ!と思ったことがあれば1つでもアクションに移していっていただければうれしいです。それでは、また、どこかでお目にかかりましょう。


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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。
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