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これからの薬局・薬剤師が目指すべき方向性

更新日: 2016年3月28日

第1回 転換期に問う「薬剤師とは何をする人か?」

 今、薬局や薬剤師は大きな転換点を迎えている。2016年度調剤報酬の改定内容を踏まえ、今後の薬局や薬剤師がどのような方向性で変わっていくべきか、その具体的な方策について、医師、薬局経営者、両方の立場から狭間 研至氏が語る。


不満を連ねても、改定内容は、変わらない

 2016年度調剤報酬改定の内容が発表されたが、その内容について、色々と言いたくなる薬局関係者は多い。「天井を上げてはしごを外された」「今まで医薬分業という国の方針のもとでやってきただけなのに」「こんなことをすると日本の薬局はなくなる」などなど、いかに国は分かっていないか、こんなひどいことはあるのか、と議論が白熱することも少なくない。
 しかし、である。この改定は、変わらない。いくつか追加の通知や解釈の中で、いわゆる激変緩和措置として、施行までに一定の猶予期間が設けられたり、多少の救済策が講じられたりするかもしれないが、基本的な流れは変わらないのが、今までの診療報酬改定の中でも通例である。

 今回の改定は一言で言えば「門前薬局の計数調剤に従来のような評価はしない」ということなのではないか。もちろん、処方せんに基づいて、疑義があれば照会をして解消し、正確・迅速に薬を準備・調製した後、分かりやすい服薬指導とともに薬をお渡しし、一連の行為については、遅滞なく薬歴に記載するということは、今後も薬物治療の遂行においては重要である。しかし、そこに対する手技料や情報管理や提供についての評価(=調剤報酬)は、これまでのように付けない、ということではないだろうか。ただ、この方針転換は、急に起こったものではない。確かに、この数年、薬剤師や薬局に関するいくつかのネガティブな出来事や事件があり、「バッシング」とも評されたこともあった。しかし、その根底には、実は大きな共通問題が確実に存在していたのだと考えている。

 それは、「薬剤師とは何をする人か?」ということである。


薬剤師は薬を渡す人、薬局は薬を置いてあるだけの場所なのか?

 一般用医薬品に関して言えば、登録販売者制制度や一類医薬品を含めたネット通販については、薬剤師が「医薬品の販売」に、一体どこまで関与するのかということが浮き彫りになってきた。また、医薬分業が進展する中で、私が経営する薬局を含めて、薬局薬剤師が一般用医薬品を積極的に扱うことは少なくなってきた。一般用とはいえ、効能効果がはっきりし、注意すべき副作用を持つ医薬品に、薬剤師が主体的に関わることが結果的には極めてく少なくなったということは、セルフメディケーションという医療の一形態の中で、薬剤師の有り様に疑義が生じたのかも知れない。

 また、医療用医薬品について言えば、いわゆる「調剤薬局」の急速な増加によって、薬局は「処方せんを持って行けば医師が処方したお薬がもらえるところ」、薬剤師は「薬を準備して渡してくれる人」といった認識を、一般の国民や医療関係者のみならず、当の薬剤師自身にも広がることにつながったのではないだろうか。さらに、そこに、きちんとした調剤報酬制度が整備され、見方によってはインセンティブのようにも捉えられる点数が設定されたことは、「調剤薬局」業界の発展へとつながった。その隆盛はあたかも先ほどの認識が揺るぎなく間違いないものとして我が国全体に広がっていったことにも影響しているように思える。

 さらに、2015年3月の規制改革会議でも取り上げられた「医薬分業」制度の費用対効果の問題、時同じくして出てきた無資格調剤や薬歴未記載などによって、薬剤師が「医療用医薬品を扱うこと」や「薬歴を書くこと」が、患者の安全性や薬物治療の有効性にどこまで関係しているのかが揺らいできた。

 これらのことは、いずれも、「薬剤師は、薬を渡すだけの人か?」「薬局は、その薬を置いてあるだけの場所か?」という問いにほかならないのではないか。もし、そうであるならば、薬は一般用はもとより、近未来的には医療用医薬品も含めて、インターネットで販売すればよいことになるし、薬局という場所も現在ほどの数はいらないということになる。
 ただ、それでは困るのが、残薬やポリファーマシーの問題である。そもそも考えてみれば、我が国が医薬分業へと舵を切った大きな理由に、この2つの問題がある。しかし、分業開始から40年たってもほとんど変わらない状況を踏まえると、ここに貴重な社会資源を投入することを止めるという行政の判断はリーズナブルとも言えよう。


これからの薬局に示されているメッセージは「変わらなくてはいけない」

 では、どうするのか?という問いに答えるべく、厚生労働省が2015年10月に公表したのが「患者のための薬局ビジョン」である。ここでは、門前薬局をかかりつけ、そして最終的には地域へと宣言した上で、「立地から機能へ」「対物から対人へ」「バラバラから1つへ」という方向性が明記された。
 これは、同じく厚生労働省が2025年へ向けた医療全体の在り方として示した「地域包括ケア」というビジョンを実現するためには、今までの薬局の在り方から変わらなくてはならないということを示したと言えよう。さらに多少うがった見方をすれば、門前薬局の計数調剤の評価を引き下げたことで得られる金額を原資に、このようなビジョンを実現すべく、種々の調剤報酬における評価が設定されたのではないだろうか。


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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。
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