改定の影響は6月末!? PDCAではなくDCAPが大事な時期Vol.2
2016年度が始まり、新しい診療報酬・調剤報酬がスタートしました。昨年色々とあったバッシングのような現象や、規制改革会議や経済財政諮問会議での議論、さらには、「対物から対人」「立地から機能」「バラバラから1つ」をキーワードに薬局を「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へという方向性を示した厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」…。めまぐるしく情報が飛び交った刺激的な時期が嘘のように、毎日の業務は静かに進んでいるのではないでしょうか。
嵐の前の静けさ?改定の変化を実感するのは6月末とボーナスへの影響
いくら「対物から対人」といっても、「対物業務」の重要性は今までとなんら変わりありません。どんなに「対人業務」をがんばったとしても、間違った薬をお渡ししたり、説明が不適切だったりしては意味がありません。
外来で処方せんを応需させていただいた患者さんには、今まで通り、きちんと処方監査をし、疑義があれば照会・解消したうえで、正確・迅速に調剤することが必要です。また、患者さんへのわかりやすい服薬指導、一連の経過や結果を遅滞なく薬歴に記載することの重要性も変わりません。
一方、今回の改訂の目玉と言われた「かかりつけ薬剤師」の加算、お薬手帳を持参の問題、さらに今後も続いていくことが予想される後発医薬品へのコンバートなど、いくつもの変更点がありました。しかしこれらの改定は、実際の業務にそれほど大きな変化をもたらすわけではありません。意外にも日常の業務は従来通りたんたんと進んでいるケースも少なくないのではないでしょうか。
しかし、です。これは、嵐の前の静けさではないかと思うのです。というのも、報酬制度改定のメインは業務が変わることではなく、ひとつひとつの業務に対する報酬上の評価が変わるということです。ということは、薬局でも医療機関でも、目で見てわかる変化が現れるのは新しい報酬改定になったレセプトが計算される5月の初めということになります。
ですがやはり、経営者が実感するのはその2か月後、振り込みのある6月末ではないかと思います。さらに勤務する薬剤師やスタッフが変化を実感するのは、もっとずっと先の今年の年末から年度末にかけて。ボーナスや昇給の時期だと思われます。
今まで通りの経営では、月40万円の減収も
実際、1日あたりの処方せんが90枚前後、月間2000枚前後のいわゆる「門前薬局」の場合、応需状況や薬局・薬剤師の状態によって異なりますが、1枚あたり200円程度の減収になる可能性があります。現状と業務を変えず月間2000枚程度を受け入れた場合、月40万円の減収です。
さらに、同様の店舗を5店舗、10店舗と経営していたとすれば、全体の売上高はその分大きくなりますが、計算上は月額にして数百万円、年額にすると数千万円の収入減になることが予想されます。それが、今回の調剤報酬がもたらす影響ではないかと思います。
もちろん、何もしなければ、の話ですから、実際にはいろいろな方策を駆使していくことになるでしょう。
基本的には、調剤基本料がキープできるようにし、基準調剤加算を算定し、後発品比率を高めていくこと。このニーズが今年度の下半期から高まっていくのではないかと思います。そういった意味でも、今はまさに嵐の前の静けさと言えるでしょう。
次のステップに進むには「薬局の基本的なコストを適切に算定する」こと
隣接する医療機関の処方せん枚数がほとんどをしめている場合、調剤基本料をキープするためにこの比率を下げていく工夫が必要です。また、基準調剤加算を算定するため、管理薬剤師の要件やかかりつけ薬剤師への取り組み、在宅医療の実績などを示す必要があります。
これは、ハードルをクリアすべく黙々と取り組むことになるでしょう。さらに、後発品比率を従来以上に高めていくためには、「乾いたぞうきんを絞る」ようなきめ細かい、諦めない取り組みが必要だと思います。
ひとつひとつの作業は、あまり効果的ではないように見えますし、なんだか気が進まないことがあるかもしれません。しかし、これらの薬局の基本的なコストを適切に算定する状況を目指すことは、事業の採算を取るうえでとても重要です。そして実は、この地道な取組みが、次のステップへ進む条件の基盤となります。まさに薬局や薬剤師が、超高齢社会の地域医療の中でさらに活躍するための第一歩なのです。