関節リウマチ:オルミエント、リンヴォックなど「JAK阻害薬」5剤の特徴とは?

- 「JAK阻害薬」が関節リウマチの炎症を抑えるメカニズム
- 関節リウマチ(RA)に用いることができる「JAK阻害薬」5剤の特徴
- 「JAK阻害薬」で気を付けるべき患者や感染予防のためにできることは?
「JAK阻害薬(Janus kinase inhibitors)」は、関節リウマチなどの炎症性疾患に対して、分子標的治療薬として登場した内服型の治療選択肢です。従来の生物学的製剤に比べ、経口投与可能・速やかな作用発現という利点を持ちますが、血栓症や感染症、悪性腫瘍などのリスクも注目されています。
本記事では、日本リウマチ学会が発行した最新の手引き(2025年版)などを踏まえ、JAK阻害薬の構造・薬物動態・製剤的特徴・副作用・注意点などを網羅的に整理します。
「JAK阻害薬」とは?
JAK(Janus kinase)は「JAK1」「JAK2」「JAK3」「TYK2」の4種類があり、それぞれ異なるサイトカイン受容体を介したシグナル伝達に関与します。JAK-STATシグナル伝達の経路は以下の図をご参照ください。
JAK阻害薬は、JAKの各タイプのATP結合部位に可逆的に結合し、シグナル伝達を阻害します。
図1 JAK阻害薬の作用機序に関するイメージ図

Higashi, Y.:Folia Pharmacol. Jpn., 144(4),160(2014)を参考に筆者が作成
関節リウマチ治療薬「JAK阻害薬」って何?
以前のコラムで記載した「生物学的製剤(bDMARD)」は、例えばエタネルセプト(エンブレル®)がTNF、トシリズマブ(アクテムラ®)がIL-6といったように、各薬剤が1種類の特定のサイトカインを細胞の外でブロックすることにより、細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにできます。
これに対して「JAK阻害薬」は、複数の種類のサイトカインに対して、サイトカイン受容体からの刺激を細胞内で遮断して炎症を抑えます。
関節リウマチ診療ガイドライン2024において「JAK阻害薬は、メトトレキサート(MTX)で効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有する関節リウマチ(RA)患者に用いる薬剤」とされています。
関節リウマチ(RA)に用いることができるJAK阻害薬は、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)、バリシチニブ(オルミエント®)、ペフィシチニブ(スマイラフ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、フィルゴチニブ(ジセレカ®)の5製品あります。
それぞれの薬理作用及び特徴を以下の表にまとめます。
表1 JAK阻害薬5製品の特徴

公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター 一般・患者様向け情報JAK阻害薬および
Higashi, Y.:Folia Pharmacol. Jpn., 144(4),160(2014)を参考に筆者が作成
患者のフォローアップに役立つ「JAK阻害薬」の薬物動態や製剤的特徴
関節リウマチ(RA)に用いることができるJAK阻害薬それぞれの用法・用量、代謝経路や特徴については、以下の表にまとめます。