認知症の家族が薬を隠してしまう…内科医が体験した服薬の課題

高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。
第1回は家庭ごとに特殊な事情があること、それも考慮に入れて対応する必要があることを考えさせられた体験です。薬剤師にぜひお願いしたいことについてもふれています。
目の前に大量の残薬、原因は家族の認知症
先日、患者さん宅で、ぞっとする体験をしました。
その患者さんは、80代の男性で高血圧に対してOD錠の降圧薬を処方していました。しかし外来での血圧がいつも160-180mmHgでありコントロールが難しいと感じていました(なお内分泌疾患などの精査は希望されておらず実施していません)。
それから数ヶ月後、「倦怠感が強いため往診をお願いしたい」との依頼がありご自宅へ伺うことになりました。幸い、大きな問題はなく私が帰宅しようとした際、初めて見る奥様がお菓子の箱を持って現れました。
中を見て驚きました。何とその箱には私が処方した降圧薬が大量に残っていました。
つまり、血圧が下がらないのは内服を全然飲んでいないからだったのです!
後日、外来でいらした男性患者さんに話を伺うと「妻は認知症ですが身体は動き、いつも薬をどっかに持ってかれてしまっていました。飲んでないと先生に言うのは忍びなく言い出せませんでした。」とのことでした。
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